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鹿児島で独自IPE実施~実習中の複数大薬学生参加

薬+読 編集部からのコメント

薬学部がない鹿児島県において長年行われている独自の多職種連携教育(IPE)について、今年度は8大学35人の薬学生が参加しました。
鹿児島県で実務実習中の薬学生と鹿児島大学の医学生、看護学生らが小グループに分かれて具体的な症例の課題や解決策を討議し、チーム医療の重要性を学ぶもので、実務実習中の薬学生が加わるIPEは全国的にも珍しく、運営に関わる鹿児島大学病院薬剤部長の武田泰生氏は「薬学部がない他の地域にも広まってほしい」と話しています。

薬学部がない鹿児島県で独自の多職種連携教育(IPE)が長年行われている。鹿児島県で実務実習中の薬学生と鹿児島大学の医学生、看護学生らが小グループに分かれて具体的な症例の課題や解決策を討議し、チーム医療の重要性を学ぶもの。実務実習中の複数大学の薬学生が加わるIPEは全国的にも異例で、今年は8大学35人の薬学生が参加した。運営に関わってきた鹿児島大学病院薬剤部長の武田泰生氏は「薬学部がない他の地域にも広まってほしい」と話している。

 

今年のIPEは10月中旬に5日間の日程で実施。約270人の大学生が32グループに分かれ、新型コロナウイルスの感染拡大を受けてオンラインで討議や発表を行った。

 

薬学生は、期間中に鹿児島県内の病院や薬局で実務実習を受けている5年生35人が参加。全体の半数に当たる16グループに加わり、鹿大医学部で医学、看護学、理学療法学、作業療法学を学ぶ4年生約230人に混じって意見を交わした。

 

薬学生のうち、病院実習中の学生は13施設32人、薬局実習中の学生は3施設3人。ふるさと実習で鹿児島に戻ってきた薬学生が多い。所属先は、神戸学院、同志社女子、九州保健福祉、山口東京理科、崇城、第一薬科、長崎国際、福岡の計8大学で、九州圏内だけでなく関西方面にも及んだ。

 

IPEの指導に当たったのは、鹿大医学部医学科、同保健学科、同病院薬剤部の教員やスタッフ約20人。事前準備や当日の進行、症例の課題発見や解決のコンサルテーションなどを手がけ、学生を支えた。

 

薬学生は初日、多領域の学生による小グループの一員となり、大腸癌患者の初期診療と支援のあり方、化学療法のレジメン選択や副作用対策などを討議。その後、薬学生のみが集まって議論を深めた。2日目は追加情報を得た上で同様に討議し、3日目には各グループから選抜された学生による模擬カンファレンスやグループでの発表を行った。4日目以降は同様に、治療開始1年後の在宅医療移行の課題をグループで話し合った。

 

独自のIPEは2013年度から始まった。当時、鹿大医歯学教育開発センター長を務めていた田川まさみ氏から依頼を受けた武田氏が中心になって各方面へ働きかけ、鹿大病院で実務実習中の薬学生がIPEに参加する体制を実現した。

 

当初は医学生と薬学生の2領域で始まったが、その後、看護学、理学療法学、作業療法学の学生も加わるようになり規模が拡大した。薬学生も14年度以降は鹿児島県下全域の病院実務実習生を対象とし、15年度以降は薬局での実務実習生にも声をかけるようになった。

 

実務実習の一環として、実習施設の指導薬剤師や所属大学の理解のもと自由意思で参加する形だが、参加者数は段階的に増加。実務実習期間の年間区分けが3期の頃には、毎年70~80人の薬学生が参加するほど盛況になった。今年のIPEにも鹿児島県内で病院実習中の薬学生の9割以上が参加するなど、地域に定着している。

 

今年度から鹿大医歯学教育開発センター長として赴任した横尾英孝氏は「今回のIPEで医学生から『薬の知識がいかに不足しているかを痛感した』との声を多く聞いた。薬学生に良い刺激を受けた」と話す。

 

同病院副薬剤部長の寺薗英之氏は「薬学生からは『同世代で一つの症例について討議できたことが印象深かった』との声があった」と言及。同副薬剤部長の屋地慶子氏も「薬学生は毎年、職種間でこんなに視点が違うのかと驚く。その結果、他者を尊重する姿勢が生まれ、自身にも薬剤師としてのプライドが生まれる」と効果を語る。

 

武田氏は「薬学部や医学部が学内に揃う大学ではIPEは可能だが、そうでない大学は多い。その場合でも、ふるさと実習で戻ってきた時にIPEを受けられるのは薬学生にとって良い経験になる。他の地域でもぜひ広まってほしい」と話している。

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出典:薬事日報

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