【厚労省偏在調査】病院薬剤師が全国で不足~薬局と乖離、将来も厳しく
薬剤師の偏在状況を調べた厚生労働省の調査で、全ての都道府県で医療需要に対する病院薬剤師数が充足していない状況が明らかになった。目標偏在指標1.0に対し、薬局薬剤師の全国ベースの偏在指標は1.08と目標を上回った一方、病院薬剤師は0.80と下回り、2036年の将来指標でも病院薬剤師は徳島県を除く都道府県で目標偏在指標を下回ると予測した。第8次医療計画作成指針で薬剤師確保が盛り込まれることを受け、都道府県に病院薬剤師確保に向けた施策が求められそうだ(表参照)
29日の「薬剤師の養成および資質向上等に関する検討会」で病院・薬局薬剤師に関する薬剤師偏在指標が公表されたもの。調査は厚労省事業で実施した。
これまで地域ごとの薬剤師数の比較には人口10万人対薬剤師数が一般的に用いられてきたが、全国ベースで薬剤師の多寡を統一的、客観的に比較して評価するため、薬剤師の労働時間を推計業務量で割って算出した。
その結果、病院薬剤師の全都道府県ベースの偏在指標は0.80で、目標とする1.0を超える都道府県はなかった。都道府県別では、青森県0.55、秋田県0.56、山形県0.60と東北3県で目標を大きく下回った。偏在指標が高かったのは、京都府0.95、東京都・徳島県0.94、福岡県0.93の順だった。
薬局薬剤師は、全都道府県ベースで1.08と病院薬剤師と比べて充足していた。東京都1.42、神奈川県1.25、兵庫県・広島県1.19の順に目標より高かった一方、福井県0.73、富山県0.82、鹿児島県0.86の順に低かった。
病院薬剤師と薬局薬剤師の労働時間、推計業務量の合計で算出した地域別薬剤師偏在指標では、福井県が0.74で最も低く、青森県0.78、富山県0.80が続いた。
一方、各都道府県の薬剤師数が現在の薬剤師数と同じ割合で増加すると仮定して算出した36年時点の薬剤師偏在指標も公表した。
病院薬剤師では、徳島県が1.07で唯一1.0を超えた一方、他の都道府県は青森県0.62などで目標を下回った。薬局薬剤師では福井県と沖縄県を除く全都道府県が目標を上回り、乖離が広がると見られる。
武田泰生構成員(日本病院薬剤師会会長)は、「病院薬剤師に就職する人が減少している中で、危機的状況になる」と懸念を表明。「薬務主管課、医療主管課など地方行政がどこまで薬剤師確保を真剣に考えるかが大きなポイントだ。行政も一緒になって取り組める体制、雰囲気作りをお願いしたい」とした。
病院薬剤師確保に向けた財源にも言及し、「地域医療介護総合確保基金の活用について、利用する自治体もあれば、財政的に難しい自治体もあるので、サポートしてほしい」と訴えた。
薬剤師確保計画に指針‐36年までに偏在是正
また、厚生労働省は検討会で、各都道府県が地域の実情に応じて薬剤師確保に関する計画を策定できるようにするための「薬剤師確保計画ガイドライン案」を示し、了承された。各都道府県は、薬剤師偏在指標に基づく薬剤師確保の方針、確保すべき薬剤師数、目標の達成に向けた施策という一連の方策について、3年おきの短期的な計画と2036年までの長期的な計画を策定し、薬剤師偏在是正の達成を目指す。
国が二次医療圏単位で薬剤師少数区域・薬剤師多数区域を設定し、都道府県が二次医療圏ごとに病院・薬局における薬剤師確保の方針について定め、具体的な目標薬剤師数を設定する。
例えば、現時点、将来時点で、「薬剤師少数都道府県」になることが想定される都道府県については、短期的な施策に加えて長期的な施策の実施を検討する。
地域医療介護総合確保基金は、薬剤師少数区域・都道府県で重点的に用いるべきとした。また、薬局薬剤師よりも病院薬剤師の確保策を充実させるべきとした。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
薬剤師の偏在状況について、厚労省事業において調査を実施したところ、全ての都道府県で医療需要に対する病院薬剤師数が充足していない状況が明らかとなりました。目標偏在指標1.0に対して、薬局薬剤師の全国ベースの偏在指標は1.08と目標を上回っている一方、病院薬剤師は0.80と下回り、2036年の将来指標でも病院薬剤師は徳島県を除く都道府県で目標偏在指標を下回ると予測されています。