暑熱避難所へ薬局を活用~環境省モデル事業で展開
東京都の墨田区薬剤師会は6月から、墨田区の協力により、地域住民が薬局を暑熱避難所として利用できる「ひと涼みスポット薬局」の展開を開始した。環境省の「熱中症予防対策推進にかかる地域モデル事業」で全国6地方自治体の一つに選定され、88の会員薬局のうち31薬局が参加する。ひと涼みスポット薬局のほか、区内で熱中症予防を啓発するイベントなども開催し、薬剤師が熱中症対策に取り組んでいることをアピールする。浅尾一夫会長は、「ひと涼みスポット薬局を通じて、地域住民が薬局に気軽に立ち寄れる仕組みを作りたい」と話している。
ひと涼みスポット薬局に参加している薬局の店頭にはのぼりが立てられ(写真)、地域住民は誰でも立ち寄って休憩することができる。店頭には「暑さ指数」を伝える看板も設置され、薬局の前を通りかかる人たちに注意喚起を行っている。
ひと涼みスポット薬局は15分程度の休憩での利用を想定している。薬局に入ると塩飴や水が提供され、経口補水液の試飲も可能となっている。
連日にわたって猛暑が続く中、環境省は熱中症対策の促進に向け、熱中症特別警戒アラートの創設、避暑施設(クーリングシェルター)の指定・開放や、熱中症対策を普及、推進していく地域団体の活用などについて法制化の検討を進めている。区と薬剤師会が連携して、具体的な熱中症対策の取り組みを始めた。
ひと涼みスポット薬局の構想は、東京五輪の開催前にあった。ボクシングの開催会場である墨田区から薬剤師会にひと涼みスポットとして薬局を開放するとの打診を受け、区薬が快諾。新型コロナウイルス感染症の拡大により五輪開催時には実現できなかったが、環境省の熱中症対策予防のモデル事業に対し区薬が企画、区が応募したところ採択された。
ひと涼みスポット薬局は9月末まで実施する予定だ。モデル事業の検証として、都立墨東病院と墨東病院・明治薬科大学連携研究センターがひと涼みスポット薬局に来局した人に対する熱中症予防を評価する調査を行う。アンケートで熱中症のリスクとなる「かくれ脱水症」がないか確認して適切な助言を行うことで、薬局がクーリングシェルター・熱中症対策を普及する機能を果たす可能性の検証を行うとしている。
好事例も出ている。浅尾氏が管理薬剤師を務めるオリーブ薬局では、アンケートに協力した来局者でかくれ脱水症が判明し、経口補水液の購入につながった。浅尾氏(写真)は「利尿剤などを服用する患者さんには時間を取ってもらい、アンケートへの協力をお願いしている」と話す。リスクがありそうな患者にはかくれ脱水症のチェックを行っているようだ。
薬局が持つ熱中症対策機能を見える化できれば、処方箋なしでも立ち寄れる健康相談拠点としてのイメージを定着できる可能性もある。ひと涼みスポット薬局の認知拡大に向け、参加薬局はSNSを通じて積極的に発信している。
また、区薬は新型コロナウイルスの5類引き下げ後も薬局で抗原検査キットの無料配布事業を続ける。その狙いについて浅尾氏は、「抗原検査キットの利用は若い世代が多く、日頃薬局に来ることのない人が薬局を利用するきっかけになるのではないか」と述べ、区薬として“気軽に立ち寄れる薬局”をPRしていく考えだ。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
東京・墨田区薬剤師会は6月より、墨田区の協力により、地域住民が薬局を暑熱避難所として利用できる「ひと涼みスポット薬局」を展開しています。環境省の「熱中症予防対策推進にかかる地域モデル事業」で全国6地方自治体の一つに選定され、88の会員薬局のうち31薬局が参加しています。参加薬局の店頭にはのぼりが立てられ、地域住民は誰でも立ち寄って休憩することができます。