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薬学部廃止の方向性示す~公立化は「スリム化」前提 千葉科学大学公立大学法人化検討委員会

薬+読 編集部からのコメント

千葉科学大学の6年制薬学部薬学科について、公立化した場合の財務シミュレーションで定員充足率100%でも10年間赤字が続くとの見通しが出され、同大学の公立大学法人化検討委員会は存続が困難であると判断し、廃止する答申素案をまとめ公表しました。

 姫路獨協に続き2校目か

千葉科学大学公立大学法人化検討委員会は28日、同大の6年制薬学部薬学科について、公立化した場合の財務シミュレーションで定員充足率100%でも10年間赤字が続くと見通し、存続は難しいと判断。廃止する答申素案をまとめ公表した。公立化は看護学部看護学科と危機管理学部危機管理学科の2学部2学科のみを残す「スリム化」を条件に認める方針だ。薬学部が廃止となれば、2025年度から募集停止となる姫路獨協大学薬学部に続く2校目の廃部となる。スリム化した場合の公立化実現時期について、銚子市は「薬学部の募集停止から6年間はかかる。それなりに遅くなるのではないか」と見通す。

現状維持での公立化を求める大学側に対し、委員からは公立化した場合にも収益が見込めない学部の撤廃など学部再編の必要性が指摘されていた。市はこの日、26年度に公立化した場合の10年間にわたる学部学科別の財務シミュレーションを公表。薬学部については、入学定員充足率100%の場合でも10年間赤字が続き、「6年制の学部であることなどから薬学部の負担割合が高くなっており、収支バランスが保ちづらい」と説明した。

 

一方、危機管理学部と看護学部では赤字は26年度のみで、27年度以降は黒字と試算した。学生1人当たりの地方交付税にも触れ、薬学部と看護学部は約167万円、危機管理学部危機管理学科では約21万円で、「定員が充足した場合、危機管理学部が最も収支が取りやすい」とした。

 

また、市内の高校に通う生徒1695人を対象とした進路希望アンケートの調査結果では、同大薬学部への進学希望を聞いたところ、「希望する進路ではないが授業料が安ければ希望する進路となる」との回答が4.4%にとどまった。

 

「将来仕事をしたい分野」では、医療・看護・薬剤関係が277人(10.8%)で最多となったものの、進学先の希望分野は「教育学・保育学関係」が167人、「文学・史学・哲学関係」が156人、「工学・理学関係」が148人、「看護学関係」が127人の順で、「薬学関係」は70人にとどまった。薬学部に対する高いニーズを確認したとは言えない結果となり、学部撤廃の対象となった。

 

これらのデータを踏まえ、太田康広委員(慶應義塾大学大学院教授)は「加計学園による経営継続が第一希望、他の学校法人に引き継ぐのが第二希望で、現在の規模のまま公立化して市が引き受けるのは難しい」と指摘。

 

公立化する場合、「2学部であればそれほど大きな財政負担とならず、固定経費が小さい文科系の危機管理学部を残し、ビジネス的な学部にする必要がある」との考えを示した。

 

田村秀委員(長野県立大学教授)は、「仮に公立化するのであれば、ある程度規模を縮めつつ、地域で看護のニーズが高い場合は残すべき」と主張。野本春道委員(銚子市町内会連合協議会会計)も「市立病院と連携が取りやすく、地域で継続的に実習ができて健康に対する意識も芽生えるので、看護学部は残してほしい」と要望した。

 

委員の意見を踏まえ、矢尾板俊平委員長(淑徳大学地域創生学部長)は「私立大として現状維持するのが望ましいが、難しい。公立化するためにはスリム化し、看護学部と危機管理学部を残し、現在の大学建物は譲渡もしくは利活用してほしい」とまとめた。

 

会合後の記者会見で、越川信一市長は「次回に提出予定の答申を踏まえ、議会や市民に説明しながら市の方針を固めていく」と述べた。

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出典:薬事日報

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