薬学教育に生成AI活用~討論力、発表力など強化 日本薬学教育学会大会
大学薬学部で生成AIを取り入れた教育が始まっている。18日に八王子市内で開催された日本薬学教育学会大会では、北海道医療大学から生成AIを活用した薬学教育の先進事例が報告された。学生、教員、画匠役などの役割を演じる生成AIと学生が共生する学びの場を提供し、学生はAIを活用して討論力、論述力、発表力を高める取り組みを始めた。一方、生成AIへの利活用に向けては、AIが事実と異なる不正確な情報を出した場合に対処するため、各大学薬学部が生成AIの利活用に関する通知を定めるなど学生のリテラシー育成を促すべきとの意見も上がった。
文部科学省の数理データサイエンスAI教育プログラム(MDASH)のリテラシーレベルプラスに選定されている同大は、生成AIの利活用を早くから進め、最近では生成AIを学内でオンプレミスに運用している。
同大が生成AIを活用する目的は、学生のコミュニケーションスキル(討論する力・論述する力・発表する力)の向上だ。文章指導や情報科学などの初年次科目で実践し、生成AIが学生、教員、画匠役となり、AIモデルに対する指示や入力文(プロンプト)によるロールプレイをさせているのが特徴となっている。
学生を演じる生成AIは「同大にはない学部の学生」を演じさせ、討論テーマに基づき新たな観点からの意見を発想させている。薬学部の学生には生成AIの発想を検証させ、それに対応できる討論力を身につけさせるようにしている。
画匠役の生成AIは、学生がプレゼンテーションで聴衆に伝達したい情報についての指示を受け、絵を描く。学生には生成画像によりプレゼンテーションを効果的にできたかという観点で、生成AIの創造力や表現力の検証もさせる。
画像生成AIで作成した画像について約7割の学生が「今後もプレゼンテーションで使いたい」と回答。薬学部の二瓶裕之教授は「AIに画像説明を繰り返すことで自分の目的に沿った画像を作れるようになっている」と述べた。
学生のリテラシー育成を促す教育も必要だ。AIの利用に関する統一ルールは定められておらず、各教育機関で独自に指針を設けている。
全国の79大学薬学部を対象に生成AIの利活用に関する指針の有無などを調査したところ、AIの利活用に関する通知をウェブ公表しているのは51大学(64.6%)だった。
藤田医科大学保健衛生学部の村岡千種講師は、MDASH未取得で、生成AIに関する通知がないのが16学部存在している実態から「AI利活用に関するリテラシーを学ぶ機会逸失の可能性がある」とし、各大学薬学部が指針を示す必要性に言及した。
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出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
日本薬学教育学会大会で、生成AIを活用した薬学教育の先進事例が北海道医療大学から報告されました。同大では、学生のコミュニケーションスキル(討論力、論述力、発表力)の向上を目的に、文章指導や情報科学などの初年次科目で生成AIを活用しています。