病院求人の発信「遅い」~薬系大学5年生対象に調査 倉敷中央病院薬剤部
就職活動中の薬学生の多くが「病院の求人情報発信時期は遅い」と感じていることが、倉敷中央病院薬剤部が薬系大学5年生を対象にした調査で明らかになった。各病院の求人の情報量についても「少ない」と受け止める薬学生が多かった。多くの病院は6年生に向けて求人情報を発信しているが、5年の段階で既に就職する業界や就職先を決めている薬学生は多く、5年生への情報発信が求められるという。給与増以外にも採用活動を工夫することで、病院薬剤師の不足や偏在の課題解決に役立つ可能性がある。
調査は全国の薬系大学5年生(今年3月時点)を対象に、3月11日から4月8日に実施。全国の薬系大学の就職支援課等を通じて調査への協力を依頼し、ウェブシステムで複数の質問項目に回答してもらい、383人の薬学生から回答を得た。
薬学生に「病院からの求人時期が適切であると感じたか」と聞いたところ、病院から求人情報を得た薬学生の67%が、開示時期が遅いと回答。「適切」(24%)や「早い」(9%)を大きく上回っていた。
「病院から発信される情報量は適切であると感じたか」との質問には、同様に情報を得た薬学生のうち71%が求職情報の量も不足していると回答した。「適切」(29%)との回答は少数だった。
就職活動の開始時期を聞いたところ、4年生3月までに開始した割合は全体の27%で、5年生8月までに75%の薬学生が活動を始めていた。
インターンシップや見学会に参加する薬学生の割合が高いのは5年生8月まで。その数は「5社」と回答した割合が最も高く、「10社以上」も20%を占めた。5年生8月を過ぎると希望業種や業界を決める薬学生の割合が高まった。
3月時点で82%の薬学生が採用選考を受けたことがあると回答。その時期は5年生2月が最多で48%、5年生3月が18%、5年生12月が14%、5年生1月が13%と続いた。4月8日時点で半数以上の薬学生が就職活動を終えていた。
採用選考を受ける企業を決定する要因を聞いた結果、回答が多い順に▽キャリア形成▽仕事内容▽教育制度▽給与▽雰囲気▽福利厚生――となっていた。
今回の調査は、病院に就職する薬学生が減少するのは、給与以外にも要因があるのではないかと考えて実施したもの。
調査を担当した同院薬剤部の鶏内遥氏は「多くの病院は就職活動の時期を把握しておらず、6年生を対象に求人情報を発出しているが、6年生の時点で就職先が決まっている薬学生も多く、この時期の求人票発出は遅い。5年生のうちに発信することが必要」と語る。
インターンシップへの参加が就職先の決定に影響するため、鶏内氏は病院に対して、就職活動が本格化する5年生夏頃を中心にインターンシップを積極的に開催するよう呼びかける。
調査で、薬学生は給与や福利厚生と同様にキャリア形成や教育体制を重視することも分かった。病院でのこうした体制整備や、薬学生への周知に取り組むことが必要としている。
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出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
就活中の薬学生の多くが「病院の求人情報発信時期は遅い」と感じていることが、全国の薬系大学5年生を対象にした倉敷中央病院薬剤部の調査で明らかになりました。各病院の求人の情報量についても「少ない」と受け止める薬学生が多数を占めています。