薬剤師のスキルアップ 公開日:2024.12.12 薬剤師のスキルアップ

在宅療養支援認定薬剤師とは?資格の取得方法や更新条件について解説

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

在宅療養支援認定薬剤師は、在宅医療に関する薬剤師の知識や経験を証明する認定資格です。本記事では、在宅療養支援認定薬剤師の概要や仕事内容をお伝えするとともに、認定条件や試験内容、難易度について解説します。加えて、新規申請や更新時に必要な費用、更新方法などについてもお伝えします。

1.在宅療養支援認定薬剤師とは?

在宅療養支援認定薬剤師とは、一般社団法人日本在宅薬学会が認定する資格です。2024年2月に10期生として6名が試験に合格しており、記事執筆時点における認定者数は合計162名となっています。
 
認定者一覧は、一般社団法人日本在宅薬学会のウェブサイトに掲載されています。
 
参照:在宅療養支援認定薬剤師|一般社団法人日本在宅薬学会

2.在宅療養支援認定薬剤師の仕事内容

在宅療養支援認定薬剤師は、在宅医療に薬の専門職として携わるのが主な仕事です。患者さんや家族、医療機関の医師、薬剤師、看護師、ケアマネジャー、介護職員など、さまざまな人とコミュニケーションを取りながら、在宅医療をスムーズに実施できるようサポートします。
 
患者さんや家族と信頼関係を構築し「どんなことでも話せる存在」となることで、医師や看護師などに伝えていない情報や要望も把握できる可能性があります。
 
薬剤情報に加えて、患者さんに関するさまざまな情報を医療スタッフと共有し、患者さんのニーズに沿った質の高い医療を提供することが、在宅療養支援認定薬剤師の重要な仕事といえます。

3.在宅療養支援認定薬剤師になるには

在宅療養支援認定薬剤師になるためには、各種要件を満たした上で、期限内に申請を行う必要があります。
 
ここでは、新規で申請する場合の条件や研修単位、試験・面接内容、申請書類、費用などについてお伝えします。

 

3-1.新規認定の条件

新規で認定を受けるためには、以下の実務経験と認定資格が必要です。

 

■必要な実務経験と認定資格
1.認定薬剤師を申請しようとする者は、日本国の薬剤師資格を有し3年以上の薬剤師実務経験があること
2.下記いずれかの資格を取得していること
 ● 薬剤師認定制度認証機構により認証された生涯研修認定制度による認定薬剤師
 ● 日本病院薬剤師会生涯研修認定薬剤師
 ● 日本医療薬学会認定薬剤師

参照:在宅療養支援認定薬剤師要綱|一般社団法人日本在宅薬学会

 

さらに、一般社団法人日本在宅薬学会が指定する研修講座に参加し、研修単位を取得しなければなりません。

 

■参加が求められる研修講座と講習会
● 所定の研修講座受講により40単位以上の研修単位を取得していること(※)
● バイタルサイン講習会受講の修了証の写しの提示
 
※e-ラーニングや研修会、学術大会などの研修講座受講による35単位以上+事例報告書の提出(在宅業務の実践報告)による5単位を含める

参照:在宅療養支援認定薬剤師要綱|一般社団法人日本在宅薬学会

 

また、学術大会への参加と事例報告書を提出することも求められます。

 

■参加が必要な学術大会と事例報告書
● 日本在宅薬学会主催の学術大会参加証の写しの提示
● 5事例の事例報告書の提出

参照:在宅療養支援認定薬剤師要綱|一般社団法人日本在宅薬学会

 

上記の要件を満たした上で、試験に合格し、申請手続きを行うことで、在宅療養支援認定薬剤師を取得できます。

 

3-2.研修内容

在宅療養支援認定薬剤師の研修講座では、以下の内容を習得できることを目標としています。

 

■研修講座の内容
(ア)日本在宅薬学会に関する知識と在宅療養支援認定薬剤師の役割
(イ)医療保険・介護保険制度に関する知識
(ウ)他職種・他業種などに関する知識
(エ)各種の社会保障制度に関する理解
(オ)地域医療・チーム医療などに関する理解
(カ)研究マインドに関する理解
(キ)薬学的基本スキルに関する理解
(ク)薬学的専門スキルに関する理解
(ケ)疾患・病理・病態などに関する理解
(コ)その他

参照:日本在宅薬学会認定薬剤師要綱 細則|一般社団法人日本在宅薬学会

 

(コ)その他について、新規認定にあたってはバイタルサイン講習会と日本在宅薬学会が主催する学術大会への参加が必須となっています。

 

3-3.研修単位

研修等で取得すべき単位については、以下のように定められています。

 

■研修等で取得すべき単位(35単位以上)
認定薬剤師研修講座
 ● シンポジウム
 ● ワークショップ
 ● e‐ラーニング など
原則90分1単位
バイタルサイン講習会 3単位
日本在宅薬学会の学術大会 3年間の認定期間内で7単位以内
1日目4単位、2日目3単位

参照:新規申請手続き方法|一般社団法人 日本在宅薬学会

 

バイタルサイン講習会と学術大会については、受講証明書の提示が必要です。認定薬剤師研修講座の取得単位は、ほかの研修プロバイダーが発行する研修単位についても15単位以下であれば合算が認められています。
 
研修プロバイダーについては、「認証機構により認証された認定制度リスト」で定められています。
 
そのほか、研修単位として認められているものは以下のとおりです。

 

■単位として認められている研修等
単位として認められている研修等 単位
日本在宅薬学会の漢方セミナー 上限9単位/3年以内
日本在宅薬学会の学術大会で「一般演題での発表」 主演者 2単位
共同演者 1単位
日本在宅薬学会の学会誌への「論文投稿」
※日本在宅薬学会からの依頼原稿は対象外
筆頭著者 5単位
共同著者 2単位

参照:日本在宅薬学会認定薬剤師要綱 細則|一般社団法人日本在宅薬学会

 

上記についても研修単位として認められているため、参加する機会がある場合はチャレンジしてみましょう。

 

3-4.試験・面接内容

2024年度の第11回認定試験は、以下の日程で行われます。

 

■試験日程
筆記試験 2025年1月12日
面接試験 2025年1月13日

参照:第十一回認定試験|一般社団法人 日本在宅薬学会

 

筆記試験はCBT会場で行われるため、各自で会場を予約する必要があります。面接試験は、Zoomで実施されるため自宅などで受験することが可能です。
 
第10回在宅療養支援認定薬剤師認定試験の総評によると、筆記試験と面接試験では以下のようなポイントが評価されています。

 

■試験での評価ポイント
筆記試験 在宅医療で必要となる多職種との連携や薬学的介入に必要な幅広い知識を評価
面接試験 申請書類の5症例や面接での質疑応答を通して、対人業務の実践状況を評価

 

面接試験については、「患者さんの状態管理」や「薬学的評価・介入後の確認・情報共有」、「認定薬剤師の取得後に行いたい活動」などが確認されるようです。
 
参照:総評~第10回在宅療養支援認定薬剤師認定試験を終えて~|日本在宅薬学会

 

3-5.新規申請に必要な書類

新規申請に必要な書類は、以下のとおりです。

 

■新規申請に必要な書類
1. 在宅療養支援認定薬剤師認定申請書
2. 認定薬剤師研修手帳(受講証明書添付のもの:合計35単位以上)
3. 薬剤師免許証の写し
4. 認定薬剤師証の写し(下記1、2、3のいずれかひとつ)
 (1) 薬剤師認定制度認証機構により認証された生涯研修認定制度による認定薬剤師
 (2) 日本病院薬剤師会生涯研修認定薬剤師
 (3) 日本医療薬学会認定薬剤師
5. 日本在宅薬学会主催の学術大会参加証の写し
6. バイタルサイン講習会修了証の写し
7. 抱負
8. 事例報告書5事例
9. 認定審査料(振込証明書の写し)

参照:新規申請手続き方法|一般社団法人 日本在宅薬学会
 
「抱負」「事例報告書」については、指定の書式があるため、日本在宅薬学会のウェブサイトからダウンロードしましょう。

 

3-6.新規申請・登録に必要な費用

新規申請と登録に必要な費用については、以下のとおりです。

 

■新規申請に必要な費用
認定審査料 10,000円
登録料 10,000円

 

上記の費用を支払うと、理由があったとしても返金できないこととされています。
 
また、申請期間は年度ごとに定められているため、新規申請をする場合は、日本在宅薬学会のウェブサイトで確認しましょう。
 
参照:新規申請手続き方法|一般社団法人 日本在宅薬学会

4.在宅療養支援認定薬剤師の難易度

日本在宅薬学会のウェブサイトでは、2023年度の合格者数は6名で、2014年の発足からあわせて162名が在宅療養支援認定薬剤師を取得していることが記載されていますが、受験者数や合格点、合格率などは公表されていません。
 
難易度を測る目安となる筆記試験の内容なども公表されていませんが、「総評~第10回在宅療養支援認定薬剤師認定試験を終えて~」から、在宅療養支援認定薬剤師には、在宅医療に参画する薬剤師としての高い志を求められていることがうかがえます。
 
在宅療養支援認定薬剤師を取得するためには、在宅医療についてしっかりと学び、医療に貢献しようとする意識が求められるでしょう。

5.在宅療養支援認定薬剤師の更新方法

在宅療養支援認定薬剤師の資格は、3年ごとに更新しなければなりません。資格更新をするためには、以下の資格を取得している必要があります。

 

■在宅療養支援認定薬剤師の更新で必要な資格
● 以下のいずれかの資格を取得していること
 ○ 薬剤師認定制度認証機構により認証された生涯研修認定制度による認定薬剤師
 ○ 日本病院薬剤師会生涯研修認定薬剤師
 ○ 日本医療薬学会認定薬剤師

参照:在宅療養支援認定薬剤師要綱|一般社団法人日本在宅薬学会

 

さらに、新規申請と同様に、研修の受講し所定の単位を取得したり、学術大会へ参加したりすることも必要です。

 

■在宅療養支援認定薬剤師の更新に必要な研修受講と学術大会への参加
1. 所定の研修講座受講により各年5単位以上、合計30単位以上の単位を取得していること
2. 日本在宅薬学会主催の学術大会参加証の写しの提示

参照:在宅療養支援認定薬剤師要綱|一般社団法人日本在宅薬学会

 

上記の要件を満たした上で、以下の報告書を提出しなければなりません。

 

■在宅療養支援認定薬剤師の更新に必要な報告書
1. 5事例の事例報告書の提出
2. 年1回以上を目安に計3回のプレアボイド登録、報告書3事例の提出
 
※いずれも所定の様式で提出

参照:在宅療養支援認定薬剤師要綱|一般社団法人日本在宅薬学会

 
更新時は新規申請と比較して、必要な研修単位数が少なくなりますが、プレアボイド報告書の提出が求められています。
 
参照:更新申請 手続き方法|一般社団法人日本在宅薬学会

 

5-1.更新申請に必要な書類

在宅療養支援認定薬剤師は、認定審査料の振込と申請書類の送付をすることで更新できます。申請に必要な書類は、以下のとおりです。

 

■在宅療養支援認定薬剤師の更新に必要な書類
1. 在宅療養支援認定薬剤師更新申請書
2. 認定薬剤師研修手帳(受講証明書添付のもの:合計30単位以上かつ各年5単位以上)
3. 薬剤師免許証の写し
4. 認定薬剤師証の写し(下記1、2、3のいずれかひとつ)
 (1) 薬剤師認定制度認証機構により認証された生涯研修認定制度による認定薬剤師
 (2) 日本病院薬剤師会生涯研修認定薬剤師
 (3) 日本医療薬学会認定薬剤師
5. 日本在宅薬学会主催の学術大会参加証の写し
6. 事例報告書(5事例)
7. プレアボイド報告書(3例)
8. 認定審査料(振込証明書の写し)

 

2024年度の提出期限は、以下のとおりです。

 

■2024年度の書類提出期限
事例報告書(5事例) 2024年8月1日~2024年9月30日
事例報告書以外の書類 2024年8月1日~2024年11月30日

 

事例報告書とそれ以外の書類で、提出期限が異なる点は注意しましょう。
 
参照:更新申請 手続き方法|一般社団法人 日本在宅薬学会

 

5-2.更新申請・登録に必要な費用

更新に必要な費用は、認定審査料と登録料です。

 

■更新に必要な費用
認定審査料 10,000円
登録料 10,000円

 

なお、納入後はいかなる理由があっても返還はできないとされています。
 
参照:更新申請 手続き方法|一般社団法人 日本在宅薬学会

6.在宅療養支援認定薬剤師を取得しよう

在宅療養支援認定薬剤師は、その資格取得の過程で、在宅医療についての知識をより深められます。事例報告書を作成することも認定条件となるため、得られた知識を日常業務に生かしながら事例検討を行えるでしょう。
 
在宅医療のニーズが高まる中、“薬の専門職”として、そこに携わる薬剤師の重要性も増してゆくでしょう。在宅医療に携わる薬剤師は、取得を目指してみてはいかがでしょうか。

 
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執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。