医療

「零売規制通知は違憲」薬局3社が国相手に提訴 厚生労働省

薬+読 編集部からのコメント

処方箋なしで販売できる医療用医薬品(非処方箋医薬品)の販売を行う零売薬局3社は、厚生労働省の通知が法的根拠なく零売を規制していることが違憲・違法として、国を被告とする民事訴訟を東京地方裁判所に提起しました。

処方箋なしで販売できる医療用医薬品(非処方箋医薬品)の販売を行う零売薬局3社は17日、厚生労働省の通知が法的根拠なく零売を規制していることが違憲・違法として、国を被告とする民事訴訟を東京地方裁判所に提起した。通常国会に提出予定の医薬品医療機器等法の改正案では、処方箋に基づく販売を原則化する方向にあり、法制化前のタイミングで訴訟に踏み切った。通知の存在により、医薬品卸大手4社との取引制限につながり仕入値が増加し、広告規制によって利益確保機会の逸失に陥ったとして国家賠償法に基づく損害賠償請求も行う。厚労省は「同日時点で訴状は受け取っていない」とコメントした。

  利益逸失で損害賠償も

今回の裁判では、零売薬局を経営するまゆみ薬局(福岡県)とグランドヘルス(東京都)、2017年まで零売薬局を経営していた長澤薬品(東京都)の計3社が原告となった。

 

現行の薬機法では、処方箋の交付を受けた人以外に医療用医薬品を販売することを薬局に禁じる一方、鎮痛剤やビタミン剤など非処方箋医薬品は一部薬局で零売として販売されている。

 

厚労省は14年発出の通知で、処方箋に基づく薬剤交付を原則とし、「必要な受診勧奨」の努力義務化、一般人への広告禁止等を規定。22年の通知では必要な受診勧奨を義務化し、「処方箋なしでも購入できる」「病院や診療所に行かなくても購入可能」といった表現を制限した。

 

今月に公表された厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会の取りまとめでは、非処方箋医薬品が販売可能な要件を定め、かかりつけ薬局等による対応を原則とし、必要最小限度の数量とするなど、零売に対して法改正により厳しい対応を取るよう求めている。

 

こうした零売をめぐる現状を踏まえ、原告は国を被告として地位確認等請求と国家賠償請求を提起した。訴状では、薬機法は非処方箋医薬品の販売・広告を制限していないとし、通知による販売制限に対して「行政規則が関係法とその趣旨に違反するものであってはならず、違反か否かは薬機法の趣旨・目的、制限される権利の性質・重要性等に照らして判断されるべき」と主張。広告制限についても「法規制は存在せず、通知による制限は薬機法の趣旨を逸脱したもので無効」と批判した。

 

また、通知は憲法上の権利として、零売薬局という職業を選択する自由、広告方法の制限は営利広告の自由と表現の自由を制限していると指摘した。

 

原告訴訟代理人の西浦善彦弁護士は、訴状提出後の記者会見で「今通常国会で薬機法改正案が提出される可能性があり、この機会を逃してはならないと考えた。国民に身近な医薬品が処方箋なしでも購入できること、違法でない購入手段が法律で制限されようとしている現状を国民に知ってほしい」と裁判を提起した理由を説明した。

 

長澤薬品の長澤育弘代表取締役(写真左)は「特に22年発出の通知が厳しく、これを境に零売薬局が減少した。卸から取引が停止されて医薬品が入荷できないのは完全に通知のためであり、法改正も乱暴だと思う」と厳しく指摘。「全国の零売薬局を強制的に制限する法改正は多くの人が失業する。その際は、追加訴訟で対応したい」との考えを示した。

 

一方、通知は零売を行う薬局の利益と処方箋の交付を受けられない人が非処方箋医薬品を購入しやすくする利益を軽視しているとして、国家賠償請求も行う。

 

原告は医薬品卸大手4社との取引を断られたことにより仕入値が増加したほか、広告の制限により零売薬局の存在を周知できず利益確保の機会を逸したとして、長澤薬品が64万9399円、まゆみ薬局が34万3761円を損害賠償請求した(グランドヘルスは請求額非公開)

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出典:薬事日報

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