医療

「在宅専門薬局」公認に是非~機能分化が必要との声も

薬+読 編集部からのコメント

在宅医療における薬剤提供体制が課題となる中、2025年1月31日に開催された「薬局・薬剤師の機能強化等に関する検討会」をきっかけに、地域で必要な薬局機能として「在宅専門薬局」を配置することの是非をめぐり議論が起こっています。

 日薬は細分化を懸念

在宅医療における薬剤提供体制が課題となる中、地域で必要な薬局機能として「在宅専門薬局」を配置することの是非をめぐり議論が起こっている。1月31日に開催された「薬局・薬剤師の機能強化等に関する検討会」で、日本保険薬局協会(NPhA)の構成員などが「薬局は外来が基本。在宅専門薬局をある程度認めないと在宅需要をカバーできないのではないか」と投げかけたのに対し、日本薬剤師会の岩月進会長は今月の記者会見で「薬局の細分化につながる」と反論。外来患者がピークアウトし、在宅患者の増加が見込まれる中、地域で台頭しつつある在宅専門薬局をめぐり、関係者の意見も真っ二つに分かれているようだ。

 

発端となったのは厚労省検討会の一幕だ。藤井江美構成員(NPhA副会長)が「訪問看護ステーションのように、訪問薬局が地域連携の中でどういう機能を持つのか。在宅を専門でやる薬局を認めることで、外来をしないと在宅に行けない薬局の問題をクリアにできるのではないか」と提起した。

 

他の構成員からも、「訪問クリニック、訪問看護ステーションがあって訪問薬局はなぜないのか。薬局として新しいプレイヤーを増やせるようにした方がいい」と在宅専門薬局の公認に賛同する声が上がった。

 

厚労省が示す在宅医療における医薬品提供体制は、地域薬剤師会や地域の薬局の連携による体制構築が前提だ。その上で、個別の在宅患者で薬剤提供の課題が生じた場合に臨時対応できる薬局の確保ができないなど、対応が困難な特例的なケースでは訪看STによる薬剤提供を許容するとしているが、在宅専門薬局については議論の俎上に上がっていなかった。

 

主に在宅対応を行う薬局を地域連携薬局とする方向性についても、外来患者への調剤・服薬指導などの機能を満たしていなければならないため、在宅専門薬局は宙に浮く。今後、厚労省は検討会での意見を踏まえ、在宅専門薬局に関する議論も検討する考え。

 

日薬の岩月氏は、在宅専門薬局が地域医療の課題を解決する主要プレイヤーとすることに否定的な見解を示した。「課題を解決する時に長いスパンの議論をしてほしい。在宅専門薬局で課題が解決するかもしれないが、長期的に見れば薬局の細分化にもつながり、地域住民に不便をかけるかもしれない。かかりつけ薬局にもならない」と訴えた。

 

これに対し、NPhAの三木田慎也会長は今月の定例会見で「藤井氏の発言はNPhAを代表した意見ではない。本人からもお詫びの発言があった」としつつ「6万2000軒の薬局が在宅をする必要があるのか。機能がそれぞれの薬局で違うのが現実。薬局の効率化で言うと“専門特化”という言葉もこの先あった方がいいのではないか」と指摘した。

 

在宅専門薬局の関係者は議論をどのように見ているか。神奈川県横浜市にある「ハスク薬局」の開局に携わった赤瀬朋秀氏(日本経済大学大学院経営学研究科教授)は、「本来の在宅薬剤業務を行うためには薬局の機能分化が必要」と話す。

 

「本当の在宅薬剤業務は、医薬品情報を駆使した医師への処方設計支援から始まり、服薬の過程への介入に至る一連の業務を包括的に指したもの」とし、「薬局の機能が外来から在宅まで行うべきとする主張だと在宅に時間を割くことができず、本当の在宅薬剤業務が行えずに中途半端に終わってしまう」と話す。

 

その上で「1薬局で在宅薬剤業務を担うのは薬剤師の疲弊につながる。在宅薬剤業務を行いたい薬剤師が活躍できる場を創造し、相互のアライアンスによって地域医療の持続可能性を追求することが必要」と強調する。

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出典:株式会社薬事日報社 

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