医療

薬局への治験薬交付検討~GCP省令改正で方向性 厚生労働省

薬+読 編集部からのコメント

厚生労働省は、2025年度中に予定しているGCP省令改正において、医療機関の来院に依存しない分散型治験(DCT)の導入を踏まえ、治験依頼者から適切な契約を結んだ「パートナー薬局(仮称)」への治験薬交付を認める方向で検討を進めています。

 被験者の健康管理も

厚生労働省は、2025年度中に予定しているGCP省令改正において、医療機関の来院に依存しない分散型治験(DCT)の導入を踏まえ、治験依頼者から適切な契約を結んだ「パートナー薬局(仮称)」への治験薬交付を認める方向で検討を進めている。現行のGCP省令では実施医療機関への治験薬交付しか認められていないが、省令改正により薬局で被験者への治験薬交付や健康状態管理を行えるようにする。また、安定供給が困難で国内での治験実施が困難な場合など、やむを得ない場合には実施医療機関との協議の上、パートナー薬局の在庫として保管する医薬品の使用を認め、治験に薬局薬剤師が関与できる仕組みに改める。

 

GCP省令改正では、▽シングルIRB(治験審査委員会)の原則化▽実施医療機関の長の見直し▽DCTの導入・運用の整理▽治験副作用報告制度の運用改善▽治験実施施設支援機関(SMO)への監督権限強化▽ICH-E6(R3)に伴う必要な改正――などが盛り込まれる見通し。

 

患者が治験に参加しやすくなるよう医療機関の来院に依存しないDCTが国内にも導入されるようになっており、実施医療機関と提携した被験者宅の近隣にあるパートナー医療機関の活用が進んでいる。ただ、治験薬交付についてはGCP省令で「治験薬を治験依頼者の責任のもと実施医療機関に交付しなければならない」と規定されていた。

 

今回の改正では、製薬業界から要望が強かった治験依頼者から被験者への治験薬直接交付は、国際的にも行われていないことから不可とする一方、実施医療機関以外の施設は適切な契約を結んだパートナー医療機関・薬局への治験薬交付を認める方向で検討する。契約を結ぶ主体は治験依頼者、実施医療機関のどちらかになるかなど、適切な契約のあり方については今後検討を進める。

 

具体的に、パートナー薬局は治験薬管理者として実施医療機関からの指示・伝達を受け、来局した被験者に対し治験薬の交付と健康状態管理を行う。その実施については実施医療機関に報告を行うとしている。

 

また、実施医療機関の在庫として保管する医薬品の使用は拡大治験以外では認められていないが、安定供給が困難で国内における治験実施が困難な場合など、やむを得ない場合には実施医療機関との協議の上で実施医療機関、パートナー医療機関・薬局の在庫として保管する医薬品の使用を認める案も検討する。

 

医薬局医薬品審査管理課審査調整官の福田祐介氏は本紙に対し、治験薬交付先に薬局を規定した背景について「オンライン診療の普及などで医薬品配送が進んでいるが、治験薬については日頃から服薬指導などを行う専門家の関与が必要と考えた」と話す。

 

薬局が被験者の健康管理を担うことについても「調剤後の患者フォローアップが医薬品医療機器等法で義務化されており、治験でもその能力を発揮してもらえるのではないか」と期待感を示した。パートナー薬局の要件などは「今後検討していく」としている。

 

一方、多施設共同治験については、各医療機関が独自に設置しているIRBを一つのIRBに集約する「シングルIRB」を原則化する方向であるほか、治験依頼者によるIRB審議を直接依頼できるようにする。

 

シングルIRBの利用促進が進まない要因として、複数の実施医療機関との間で調査、審議を行うIRBを調整する主体が存在しなかった背景があったという。ICH-E6(R3)でも治験依頼者によるIRB審議依頼が規定されていたことなどを踏まえ、見直す方針。

 

GCP省令に規定する実施医療機関とSMOの契約事項について、SMOの業務が適切かつ円滑に行われているかどうか治験依頼者が確認できる旨を追加し、SMOに対する監督権限も強化する。

 

改正内容は、24日の医薬品医療機器総合機構(PMDA)治験エコシステム導入推進事業成果報告会で公表された。

  • 薬剤師のための休日転職相談会
  • 薬剤師の転職・求人・募集はマイナビ薬剤師/5年連続満足度NO.1

出典:株式会社薬事日報社 

ページトップへ