薬剤師のスキルアップ 公開日:2025.03.27 薬剤師のスキルアップ

漢方薬・生薬認定薬剤師になるには?受験資格や試問の内容・更新方法について解説

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

漢方薬・生薬認定薬剤師になるには、受験資格を満たした上で試問に合格しなければなりません。また、新規申請と更新申請で要件が異なるのが特徴です。本記事では、漢方薬・生薬認定薬剤師になるために必要な研修や受験資格、試問の内容について解説するとともに、認定者数や合格率・難易度などを紹介します。加えて、新規・更新申請の方法についてもお伝えします。

1.漢方薬・生薬認定薬剤師とは?

漢方薬・生薬認定薬剤師とは、漢方薬や生薬についての専門的な知識を修得し、能力と適性を備えた薬剤師のことです。日本薬剤師研修センターのウェブサイトによると、2024年3月末時点で漢方薬・生薬認定薬剤師の有効認定者数は3,299名、延べ認定者数は8,537名です。
 
参照:漢方薬・生薬認定薬剤師制度と薬剤師の職能向上|日本薬剤師研修センター
 
また、2024年度の合格者数は434名で、掲載を希望しない認定薬剤師を除いて都道府県別に認定者が公表されています。認定者一覧は、日本薬剤師研修センターのウェブサイトから確認できます。
 
参照:過去の試問と解答|日本薬剤師研修センター
参照:漢方薬・生薬認定薬剤師の認定者名簿|日本薬剤師研修センター

2.漢方薬・生薬認定薬剤師になるには

漢方薬・生薬認定薬剤師になるには、日本国の薬剤師資格を持つ人が、日本生薬学会と日本薬剤師研修センターが実施する研修を受け、試問に合格する必要があります。ここでは、研修内容や、試問の受験資格と内容、申請方法、合格率と難易度について解説します。

 

2-1.研修の内容

漢方薬・生薬認定薬剤師になるには、漢方薬・生薬研修会の受講が必要です。漢方薬・生薬研修会には、講義研修(座学研修・インターネット研修)と薬用植物園実習があります。
 
座学研修は全9回あり、インターネット研修では座学研修を収録した映像を使用します。薬用植物園実習は、必ず1回受講しなければなりません。春期・秋期に、全国各地約50カ所の薬用植物園で実施されます。
 
研修の受講にかかる費用は、6万500円(税込)です。この費用には、テキスト代や試問料、薬用植物園実習の費用が含まれています。なお、漢方薬・生薬認定薬剤師の新規申請は、研修単位ではなく、研修会への出席率が受験資格となる点に留意しましょう。
 
参照:2025年度漢方薬・生薬研修会|日本薬剤師研修センター
参照:漢方薬・生薬認定薬剤師制度 実施要領|日本薬剤師研修センター

 

2-2.試問の受験資格

試問の受験資格は、以下の要件を満たす薬剤師とされています。

 

● 漢方薬・生薬研修会における出席率が80%以上
● 薬用植物園実習のレポートを提出して合格した薬剤師

 

研修会の出席率とは、座学研修またはインターネット研修への出席率のことです。上記2つの要件を満たす必要があるため、研修会への出席率が要件を満たしても、薬用植物園実習のレポートが不合格の場合、受験資格を得ることはできません。
 
受験資格の有効期限は、漢方薬・生薬研修会の受講修了日から起算して2年間とされています。そのため、1回目の試問に不合格だった場合や、受験できなかった場合は、翌年に受験することが可能です。
 
参照:漢方薬・生薬認定薬剤師制度 実施要領|日本薬剤師研修センター
参照:漢方薬・生薬認定薬剤師制度に関するQ&A|日本薬剤師研修センター

 

2-3.試問の内容

漢方薬・生薬認定薬剤師の試問については、日本薬剤師研修センターのウェブサイトで過去の試験問題と解答が公表されています。設問数は年度によってさまざまで、65問程度の年度もあれば、100問を超える年度もあります。
 
出題形式は、直近の試問では選択式となっていますが、2001年度(平成13年度)や2002年度(平成14年度)では記述問題も出題されています。2001年度以降の試験問題と解答が公表されているため、新しい年度から順に出題傾向を把握しましょう。
 
参照:過去の試問と解答|日本薬剤師研修センター

 

2-4.申請方法

試問の合否通知は、PECS(薬剤師研修・認定電子システム)に登録しているメールアドレス宛に送信されます。このメールが合格通知書となるため、誤って削除したり紛失したりしないよう保存・保管しておきましょう。試問合格の有効期限は、合格通知書の送信日から1年となっています。
 
漢方薬・生薬認定薬剤師の試問に合格したら、日本薬剤師研修センターのPECS(薬剤師研修・認定電子システム)から認定申請を行います。研修の申し込みやインターネット研修の受講で使用したIDとパスワードを使ってログインし、新規申請を行いましょう。この時、認定申請審査料として2万2,000円(税込)を支払う手続きも行います。
 
申請後に、日本薬剤師研修センターで審査を行い、認定された薬剤師に認定証が交付されます。認定開始日は、申請した日ではなく、日本薬剤師研修センターが認定を許可した日からとなります。そのため、更新する予定の場合は、認定開始日についても把握しておきましょう。
 
IDカードの発行を希望する場合は、認定証が手元に届いてからPECS(薬剤師研修・認定電子システム)を通して発行申請を行います。
 
参照:漢方薬・生薬研修会 試問(2024年7月7日実施) 合格者番号|日本薬剤師研修センター

 

2-5.合格率と難易度

日本生薬学会のウェブサイトでは、2020年度までの研修会受講者数や試問受験者数、合格者数を公表しています(2025年3月時点)。掲載されているデータをもとに算出した試問受験者の合格率は、以下のとおりです。

 

■漢方薬・生薬認定薬剤師の合格率
年度 合格率 受験者数 合格者数
2016年度 95.5% 493人 471人
2017年度 91.9% 579人 532人
2018年度 94.2% 533人 502人
2019年度 76.6% 569人 436人
2020年度 69.5% 347人 241人

参照:漢方薬・生薬認定薬剤師制度|一般社団法人日本生薬学会

 

2018年度以前の合格率は90%以上で推移していましたが、2019年度は約77%、2020年度は約70%となっており、合格率の観点では難易度が高くなっているといえます。

3.漢方薬・生薬認定薬剤師の更新方法

漢方薬・生薬認定薬剤師は3年ごとに更新しなければなりません。ここでは、更新に必要な単位や必須研修、申請タイミングなどについてお伝えします。

 

3-1.更新に必要な単位

更新するためには、必須研修とその他の研修を受講し、30単位以上を取得する必要があります
 
更新に必要な単位として認められる研修には、以下のものがあります。

 

● 研修認定薬剤師制度における研修実施機関が行う研修(ただし、漢方薬または生薬に関するものに限る)であって日本薬剤師研修センターの開催許可を受けたもの
● 自己研修・学術集会等発表・学術雑誌論文掲載(ただし、いずれも漢方薬または生薬に関するものに限る)
● 薬用植物園実習研修

参照:漢方薬・生薬認定薬剤師制度実施要領|日本薬剤師研修センター

 

認定期間内に毎年5単位以上取得し、全30単位のうち10単位は必須研修によるものでなければなりません。続いて、必須研修とその他の研修についてお伝えします。

 

3-1-1.必須研修

必須研修は、以下のものとされています。

 

1. 生薬学会および生薬学会支部(北海道・関東・関西)の主催研修
2. 和漢医薬学会の主催研修
3. 日本薬学会の年会、天然薬物の開発と応用シンポジウムまたは食品薬学シンポジウム
4. 日本東洋医学会の学術総会または支部学術総会(支部会)
5. 1から4まで以外で、生薬学会が認めた研修

参照:漢方薬・生薬認定薬剤師制度実施要領|日本薬剤師研修センター

 

5については、日本薬剤師研修センターのホームページに詳細が掲載されます。更新する場合は、上記の研修に参加し、10単位以上を取得しましょう。
 
参照:必須研修会|日本薬剤師研修センター

 

3-1-2.その他の研修

その他の研修には、以下の2種類の研修があります。

 

● 研修センター研修実施機関が開催申請手続きを経て行う漢方薬・生薬に関する研修
● 開催申請手続きを経ずに行われる漢方薬・生薬に関する研修(自己研修、学術集会等発表、学術雑誌論文掲載)

参照:認定更新のための研修の詳細|日本薬剤師研修センター

 

自己研修とは、書籍やテレビ、ビデオ、インターネットなどで漢方薬や生薬に関して自主的に行った研修のことです。研修後に、研修センターへ受講単位を請求し、審査に合格することで単位に含めることができます。
 
学術集会の発表や集合研修での講師を行った場合、学術雑誌論文に筆頭執筆者として掲載された場合にも、証明書類を添付して受講単位を申請し、審査に合格すれば単位とすることが可能です。
 
受講単位の請求申請は、日本薬剤師研修センターのPECS(薬剤師研修・認定電子システム)から行います。審査料は、1申請(1報告書)あたり1,100円(税込)です。手順や必要な書類などをしっかり確認してから申請しましょう。
 
参照:受講単位の請求|日本薬剤師研修センター

 

3-2.更新申請のタイミング

漢方薬・生薬認定薬剤師の更新申請は、必要単位を満たした上で、認定終了日の2カ月前から終了日の3カ月後までの間に行わなければなりません。
 
更新申請の場合の認定日は、認定終了日の翌日となり、新規申請と認定日の決め方が異なる点に留意しましょう。
 
参照:漢方薬・生薬認定薬剤師制度実施要領|日本薬剤師研修センター

 

3-3.更新申請の方法

漢方薬・生薬認定薬剤師の更新申請の方法は、漢方薬・生薬研修手帳の使用の有無によって異なります。漢方薬・生薬研修手帳で単位数をカウントしていない場合、取得単位は日本薬剤師研修センターのPECS(薬剤師研修・認定電子システム)での確認が可能です。申請に使用する研修を選択し、必要な単位数を計算することで手続きができます。
 
参照:PECSに記録された単位のみで更新をする場合|日本薬剤師研修センター
 
漢方薬・生薬研修手帳を使用している場合は、日本薬剤師研修センターのPECS(薬剤師研修・認定電子システム)の申請ページで、手帳に貼付している単位数を入力しなければなりません。申請終了後に送信されるメールをプリントアウトして、受講シールと研修内容を記載した研修手帳と一緒に日本薬剤師研修センターに送付します。
 
参照:⼿帳に貼付された単位とPECSに記録された単位で更新をする場合|日本薬剤師研修センター

4.漢方薬・生薬認定薬剤師を目指そう

漢方薬・生薬認定薬剤師は、資格取得のための要件に、学会発表や論文掲載、資格取得のために必要な認定薬剤師、症例報告などがありません。新規申請では、研修会の出席率と実習レポートが受験資格の要件となるため、比較的チャレンジしやすい認定資格といえるでしょう。
 
また、更新申請では、研修会への参加で単位を取得したり、学会発表や論文発表、自己研修などを単位として申請したりできます。自己研鑽の方法を自由に選択しやすいため、自分の勉強スタイルに合わせた単位の取得が可能です。
 
日常業務で漢方薬や生薬を扱う薬剤師は、資格取得を目指してみてはいかがでしょうか。

 
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執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。