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薬価引き下げ大統領令署名~米トランプ大統領、高価格構造への切込み促す

薬+読 編集部からのコメント

トランプ大統領が米国内の処方医薬品価格を他国と同水準まで引き下げ、患者に提供する大統領令に署名したことを、ホワイトハウスが発表しました。大統領令からは、米国内の価格形成への切り込みと、対外通商問題として取り組む姿勢がうかがえます。

米ホワイトハウスは12日(現地時間)、トランプ大統領が米国内の処方医薬品価格を、他国と同水準まで引き下げ、患者に提供する大統領令に署名したと発表した。30日以内に関係機関と調整して、「米国の患者の価格を同等の先進国と一致させるため、最恵国待遇の価格目標を製薬製造業者に伝達する」方針。米国民は海外より約3倍高い価格を支払わされているとしているが、下げ幅は明示していない。

 

対象範囲、実施手法は不明で、日本の業界関係者は「注視」の構えだが、大幅強制引き下げは「現実的ではない」との声もある。大統領令からは、そもそもの価格の高さに加え、PBM(薬剤給付管理会社)など中間業者を介したリベートを伴う取引、他国の低価格に問題意識を示している。米国内の価格形成への切り込み、対外通商問題として取り組む姿勢がうかがえる。

 

米国研究製薬工業協会(PhRMA)は同日、スティーブン・J・ユーブル理事長兼CEOの声明を発表し、「米国の価格が高い本当の理由に対処する必要がある。それは、外国が公平な負担をしていないことと、仲介業者が米国の患者の価格を押し上げていること」などと表明した。

 

今回の大統領令は、第1次トランプ政権で提案されながらも実現しなかった、処方薬について先進国の公的保険で支払われる最も低い価格水準に抑える参照価格・最恵国待遇方式を意図していると見られる。

 

大統領令では、保健福祉長官が米国の患者に対して最恵国価格で製品を販売する「直接購入プログラムを促進する」としている。「直接購入」とわざわざ言及したことに、中間業者を介する取引への問題意識が垣間見える。

 

米国内では以前から、使用薬剤や価格の権限などを持つPBMに対し、薬剤費を不必要に上げることになっていないかとの指摘はあった。米国では価格設定は自由だが、PBMを介して民間保険上の提供価格は引き下げられる一方、製薬企業からは薬剤取り扱いに対するリベートも提供され、PBMの収益になっている。

 

そのため、メーカー側の定価と提供価格の大きな乖離は以前から指摘されている。メーカーには価格を守る引き上げ誘因とPBMのリベート獲得誘因が一致し、高価格になるとの見方がある。

 

その点、PhRMAの声明で「仲介業者が米国の患者の価格を押し上げている」と指摘しているのは、価格形成の構造への問題意識がうかがえる。

 

声明では「米国はPBM、保険会社、病院が医薬品に費やされる全ての支出の50%を受け取ることを許可している世界で唯一の国。これら仲買人に送られる金額は、ヨーロッパの価格を超えることがよくある。このコストを患者に直接渡すことで、医療費が削減され、ヨーロッパの価格との差が大幅に縮小される」と、価格構造への切り込みを促している。

 

一方、大統領令では、対外通商問題として取り組む姿勢も見せる。商務長官、通商代表部は外国が不合理・差別的となり得る行為、政策・慣行に関与しないことを確保するため、米国の国家安全保障を損なう可能性のある行為を防ぐため「必要かつ適切な全ての措置を取る」としている。

 

大統領令では、製薬企業が米国以外の海外市場にアクセスするために自社製品を「大幅に値引き」し、その分を米国での高価格の提供で「助成」するという「意図的なスキーム」があると指摘。医薬品の最大の購入者である米国民は高い価格での購入を強いられるとの認識を示している。

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出典:株式会社薬事日報社 

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