西洋医学とは異なる理論で処方される漢方薬。患者さんから漢方薬について聞かれて、困った経験のある薬剤師さんもいるのでは? このコラムでは、薬剤師・国際中医師である中垣亜希子先生に中医学を基本から解説していただきます。基礎を学んで、漢方に強くなりましょう!
第6回 中医学の診察法「四診(ししん)」
前回の「中医学の3つの特徴(後編)」の中で、弁証論治についてお話しました。今回は弁証論治をするための診察法にあたる「四診(ししん)」について詳しくお話します。
中医学では以下の4つの診察法を用い、これらを合わせて「四診」といいます。
- 望診(ぼうしん):
- 顔色・体格・姿勢・全身の状態を観察する。
舌を診察する舌診(ぜっしん)も含む。 - 聞診(ぶんしん):
- 声の強弱・呼吸の音・咳の音を聞く、口臭・分泌物・排泄物を嗅ぐ。
- 問診(もんしん):
- 既病歴・自覚症状・痛む部位・食生活・居住環境などを質問する。
- 切診(せつしん):
- 体をさわる「按診(あんしん)」と脈を診る「脈診(みゃくしん)」。
- 望診(ぼうしん):
- 顔色・体格・姿勢・全身の状態を観察する。
舌を診察する舌診(ぜっしん)も含む。 - 聞診(ぶんしん):
- 声の強弱・呼吸の音・咳の音を聞く、口臭・分泌物・排泄物を嗅ぐ。
- 問診(もんしん):
- 既病歴・自覚症状・痛む部位・食生活・居住環境などを質問する。
- 切診(せつしん):
- 体をさわる「按診(あんしん)」と脈を診る「脈診(みゃくしん)」。
望診
望診は視覚を用い、精神状態(目の勢い※1から判断)・顔色・体格・姿勢・舌・全身の状態を観察します。特に“舌の診察”を「舌診」といい、舌の色・形・動き、舌苔の色・質などを観察します。
中医学では、「舌は内臓の鏡」といって、内臓や血液の状態は舌にそのまま表れると考えます。舌の各部位に五臓六腑の状態が表れ、舌の色に気血津液(きけつしんえき)の過不足、舌苔に寒熱(冷えがあるか、熱があるか)や水分代謝の状態などが表れます。
今後、舌診についてもイラストで詳しくお伝えしますので、楽しみにしていてくださいね。
聞診
聞診の「聞」は「聞く」だけでなく、分泌物などの臭いを嗅いで異常に気づくことも含みます。聞診では、聴覚・嗅覚を用い、声の強弱・呼吸の音・咳の音を聞き、口臭・体臭・分泌物・排泄物の臭いをチェックします。
問診
問診は、患者さんに主訴・発病の時期や経過・既病歴・自覚症状・痛む部位・生活習慣・寒熱・汗・全身状態・口渇と飲食量・睡眠・大便の硬さ・小便の色・大小便の回数などを質問します。
たとえば、痛み方であれば、痛み方はどうか(チクチク刺すように痛い、重だるく痛むなど)、痛む場所はどうか(一定の場所が痛む固定痛、その時々よって場所が移動する遊走痛(ゆうそうつう)など)、細かく聞きます。痛みについては痛み方で原因が異なるため、なるべく患者さん自身の表現で話してもらいます。
また、患者さんが女性であれば、頭痛の相談であっても、月経や帯下(おりもの)の状態についても丁寧に聞きます。一見無関係に思えますが、月経の状態も体質を知るために重要なヒントとなります。たとえば、経血にレバー状のかたまりが混じれば、「瘀血(血行の悪さ)」がありますし、月経前症候群が多ければ、「気滞(気の巡りが悪く、ストレスやホルモンバランスの乱れ)」があると判断できます。
また、中医学にはない画像診断・血液検査・生検・女性の場合は基礎体温表など現代医学にしかできない検査結果も、非常に大切な情報です。西洋医学的な検査結果や病名も、わかれば、患者さんの治療をする手助けとなります。
切診
切診は、患者さんの身体や病変部に触れることで病状を知る「按診」と脈を診る「脈診」があります。ただし、薬剤師は患者さんの身体に触れられないため、これらの切診は行えません。
中医学では、これら4つの診察法を用いて、体力・精神の状態や病気の経過、体質など全身の情報収集をしていきます。そして、四診で得た全身情報を元に、前回お話した「弁証論治(=患者さんの体質を見極めて治療法を決定する)」をします。
次回は「現代医学(西洋医学)と中医学の違い」についてお話します。
- ※1
- 目の勢い:「目は口ほどにものをいう」。精神的なトラブルを抱えている人は、「目の動きがぎこちない」「目がどんよりとして焦点が合わない」などの状態になりやすく、目の状態に心身の健康が表れます。
- ※1
- 目の勢い:「目は口ほどにものをいう」。精神的なトラブルを抱えている人は、「目の動きがぎこちない」「目がどんよりとして焦点が合わない」などの状態になりやすく、目の状態に心身の健康が表れます。