BE試験免除、海外で拡大‐国内導入時には細部設定必要
国立医薬品食品衛生研究所薬品部の伊豆津健一氏は20日、岐阜市で開かれた日本薬剤学会年会で講演し、経口固形製剤のジェネリック医薬品(GE薬)開発時に、健康成人を対象にしたと語った。日本で導入する場合には、試験法の細かな基準設定や、医療従事者や国民の理解が必要になると指摘。また、導入後は、開発コストの低減に伴って海外GEメーカーの日本市場参入がさらに進む可能性があるとの見通しを示した。
BCSバイオウェーバーとは、経口固形製剤の主薬の溶解度、膜透過性、製剤の溶出性、添加剤などが基準を満たす場合に先発品とGE薬の類似性は高いとして、健康成人を対象にしたBE試験を免除する考え方。健康成人に対する科学的な必要性のない薬物曝露は避けるべきという概念や、開発費の抑制が背景にある。
米国食品医薬品局(FDA)が2000年にBCSバイオウェーバーのガイダンスを発表して以降、「欧米を中心に採用する国と地域が急速に増加し、BE試験を軽減する動きが広まっている」と伊豆津氏は語った。膜透過性が高く、溶解度が大きいクラス1の医薬品だけではなく、クラス3の医薬品にまでその対象は広がりつつあるという。
一方、国内での開発時には、健康成人を対象に先発品とGE薬を交互に投与し、薬物動態の類似性を評価するBE試験が必要とされている。将来のBCSバイオウェーバーの国内導入については14年度に、同研究所薬品部の四方田千佳子氏を代表とする厚生労働科学研究班が「即放性経口固形製剤についてはBCSクラス1および3の医薬品ではBE試験免除が可能と考えるが、クラス3の医薬品については、添加物が膜透過性に与える影響について検討が必要である」と報告している。
伊豆津氏は「厚労科学研究班でも、科学的な面からBCSバイオウェーバー全体に問題があるという意見はあまりなかった。ただし国内導入の際には、主薬や製剤の特性による適用の可否、試験条件、注意点などを明確にする必要がある。膜透過性評価方法の明確化、整理の仕組みづくりも求められる」と語った。
また、GE薬への不信感を持つ医療関係者や国民がまだ存在する中、伊豆津氏は「BE試験免除に対する理解が必要」と強調。「欧米でもそうだが、BE試験免除の仕組みができても、免除を受けるかどうかは製薬会社にとって分かれる可能性がある」と語った。
さらに、GE薬の開発コストが下がるため、海外のGE薬が日本市場で使われる可能性が高まるとし、「その増加を想定した、継続的な品質確保の体制整備が必要になる」と指摘。このほか、貿易上の障壁撤廃を旗印に今後、BCSバイオウェーバーの導入が急激に進む可能性もあるとした。
クラス3まで対象にするなどその適応範囲については「厚労科学研究班では主に、この考え方が科学的に見て受け入れられるかどうかが検討された。個別のことに関しては国際的な動きに応じて変わる可能性がある」と話した。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
経口固形製剤のジェネリック医薬品開発時に生物学的同等性(BE)試験を免除する「BCSバイオウェーバー」を導入する国や地域が広がっているというニュース。開発コストが下がることから、今後は海外GEメーカーの日本市場参入がさらに進む可能性があると、国立医薬品食品衛生研究所薬品部の伊豆津健一氏が講演で語りました。