創薬・臨床試験

カルテ無断閲覧「個人情報に抵触」‐外部専門家が調査結果報告

薬+読 編集部からのコメント

バイエル薬品の社員が患者に無断でのカルテ閲覧をした問題で、外部の専門家が個人情報保護法に抵触した可能性があると結論を出しました。
調査や論文作成は「疫学研究に関する倫理指針に沿って進められるべきだった」としています。
バイエル薬品は再びそのような問題が発生しないように 1.個人情報の取り扱いに関する教育の徹底 2.アンケート調査運用における社内規定の策定 3.グループ全体のガバナンス管理体制の強化、に取り組む計画です。
バイエル薬品ハイケ・プリンツ社長・バイエルホールディングのハンスディーター・ハウスナー社長は、役員報酬の一部を返納する予定です。

バイエル薬品は14日、同社の社員が患者に無断でカルテを閲覧しデータを収集していた一連の問題について、外部専門家が調査した結果を報告した。同社はこれまで詳細を明示してこなかったが、不適切な情報収集の実態や、それに至る経過が明らかになった。外部専門家は、これらの情報収集は「個人情報保護法に抵触した可能性がある」と指摘。また、調査や論文作成は「疫学研究に関する倫理指針に沿って進められるべきだった」としている。


同社は2012年から13年にかけて、宮崎県内の循環器科・内科診療所で治療を受けている患者を対象に「血栓症領域製剤の服薬における患者様の嗜好に関するアンケート調査」を実施した。その際、同社宮崎営業所の社員3人が、患者の同意取得の有無を明確に確認することなく、氏名、年齢、性別、生年月日、主病名など、最大で298人分の患者情報を不適切に取得していたことが、今回の報告で明らかにされた。

 

その経過についてはまず、同社宮崎営業所の前所長が、医師による講演の資料として用いることを想定してアンケート調査と使用経験調査を企画。アンケート調査の実施過程で同社の前プロダクトマネジャーが、論文化して販促資材に用いることを構想、企画した。その上で同診療所の院長に、アンケート調査や使用経験調査、同社主催の講演会や座談会、アンケート調査結果の論文化を提案し、実現に至ったという。

 

本来は医師が中心となって行うべき活動であるため、適切なプロトコールや手順を定めた上で同社の関与の程度を制限すべきだったが、実際には同社の社員がアンケート調査の企画、調査票作成、調査結果の集計作業を行っていた。アンケート調査や論文作成は、疫学研究に関する倫理指針に沿って進められるべきだったとしている。

 

当事者である社員1人の通報によって同社は15年にこの問題を把握。社内コンプライアンス部門による調査を実施したが、15年10月に社員3人に対して口頭で厳重注意、指導を行うだけにとどまった。16年1月には論文2報の取り下げを行ったにもかかわらず、一連の不適切な個人情報取得問題を開示することなく、当局にも報告しなかった。社員3人の問題に加え、問題把握後の同社の対応も不適切だったとしている。

 

このような問題が再び発生しないように同社は、[1]個人情報の取り扱いに関する教育の徹底[2]アンケート調査運用における社内規定の策定[3]グループ全体のガバナンス管理体制の強化――に取り組む計画だ。

 

同社のハイケ・プリンツ社長は14日、都内で会見し、一連の問題について、「全責任はバイエル薬品の社長である私にある」と謝罪した上で、「今後、再発防止に努めることが私の責任であると考えている」と社長を辞任しない考えを示した。

 

また、バイエルホールディングのハンスディーター・ハウスナー社長は、一連の問題への対応について「私とプリンツ氏については、役員報酬を10%、3カ月間にわたって自主的に返納させていただく」とした。

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出典:薬事日報

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