【女性リーダー座談会】東邦グループにおける女性の活躍とは‐果敢に邁進する信念を継ぐ
東邦薬品創立70周年‐常に先駆者として歩み続ける
出席者
東邦ホールディングス取締役薬事担当 内藤 温子氏
東邦薬品取締役コールセンター担当 兼東京コールセンター長 吉川 晶子氏
東邦薬品取締役薬事部長 増田 眞由美氏
東邦ホールディングス管理本部総務部副部長 森田 里恵子氏
東邦ホールディングス広報・IR室副室長 兼広報・IR課長 能代 愛子氏
東邦薬品営業統轄本部医薬人材開発部長 兼管理栄養士チームリーダー 安齋 あずさ氏
東邦薬品営業統轄本部医薬営業本部企画推進部副部長 小林 雪江氏
ファーマクラスター出向薬剤師チーム部長 駒井 理氏
東邦薬品は70年の歴史の中で、連綿として女性陣が活躍してきたことも大きな特徴である。東邦グループにはコールセンター、薬剤師、栄養士など女性が主力となって業務を担っている部署も多い。時代と環境は変化してきたが、70周年を記念して各部署の女傑たちに集まってもらい、出産・育児、介護など女性ならではの課題と対処、仕事とプライベートの両立、働きやすい職場とやりがいの持てる仕事の実現へ向けた働き方改革への取り組み、リーダーとして描く将来像などを語ってもらった。
育児・介護の課題へ対応‐体制整備と家族の協力で
内藤 本日はお集まりいただき、ありがとうございます。東邦薬品は70周年を迎えましたが、これを機に女性の活躍に焦点を当てた座談会を開きたいと思います。
働く女性が多い職場では、育児中の急な欠勤にも配慮した体制など、いろいろな課題があると思います。特に女性が多いコールセンターの職場環境はいかがでしょうか。
吉川 東京コールセンターでは、50%近くが子育て中のお母さんたちです。午前8時半から午後7時までのシフト制勤務体系ですが、小さな子どもがいるお母さんはシフトには組み入れずに単独勤務にさせるなど、急に欠勤となっても業務には何ら支障が生じないように工夫しています。
内藤 東京コールセンターには男性はいらっしゃいますか。
吉川 東京は1人だけですが、札幌と西日本のコールセンターには2、3人ずついます。
内藤 まさに女の城ですね。女性が多い職種として薬剤師がありますが、管理薬剤師を抱える増田さんの部署はいかがでしょうか。
増田 薬事部は9人で1人は育休中、男性は2人です。また、東邦薬品には136営業所ありますが、薬剤師は151人、そのうち女性は93人と約6割を占めています。薬事部内は、主婦や子育て中の人が多いので、残業しないことを徹底しています。
内藤 小林さんのいる企画推進部は男性の方が多い部署ですが、その中にあってパワーと指導力を発揮していると聞いています。
小林 企画推進部は男性が多い部署ですが、3チームある中で女性が多いチームもあり、部全体では4割が女性です。現在は産休が1人、時短が2人います。各チームに特化した業務が多く、〆日に追われ非常に忙しい仕事ですが、誰かが急に抜けても困らないようにペアを組んで仕事をするなど配慮しています。
能代 広報・IR室は女性2人が子育て中です。もともと人数が少ない部署なので、子供の病気などで急に帰宅した時にメールでやり取りをしなければならないこともあり、看病に専念できる環境を作ってあげることが課題です。外での取材や出社が必須の日もあるので、そのような日には事前に家族と相談して、前もってご主人にお休みを取ってもらうなど、それぞれ工夫してくれています。
内藤 ご家族の協力は必要ですね。
駒井 出向薬剤師チームでは薬剤師の派遣を行っています。薬剤師19人のうち16人が女性ですが、4人が産休中です。薬局勤務ですので、産休明けに時短で働こうと思っても難しいこともありますが、理解を示してくださる薬局にお世話になっています。
また、男性3人のうち2人には子どもがいますが、奥さんが休めないときは自分が休んで看病や家事を行うなど育児にとても協力的で、時代は変わっているのだと感じています。
内藤 安齋さんのチームはいかがでしょうか。
安齋 管理栄養士チームは育児休暇明けの社員は2人で、うち1人は営業所の内勤業務、もう1人は時短勤務で、事務処理や資料作成のほか、勤務可能な時間帯で薬局の健康フェアでの栄養相談を担当しています。子どもの急な体調不良で薬局へ行けなくなることもありますので、その際には必ず、補助を1人付けて対応できるようにしています。
内藤 森田さんのところは大所帯ですね。
森田 そうですね。40~50人のうち女性が半分くらいで、育休中が1人、時短が3人います。男性の課長職で子育て世代が多くなってきていて、今は逆に男性の方が早退や休暇を取得して育児に対応していることも多く見かけます。会社だけでなく家庭でも分担して育児をするような環境に変化してきたのかなと思っています。
内藤 私や吉川さんが入ったときは、女性が結婚・出産する場合には皆さん会社を辞めていた時代で、社内で子育てしている女性は本当にまれでしたね。
吉川 そうですねぇ、本当に(笑)
内藤 時代も変わりましたし、会社の体制も女性を重視して働きやすい環境に変わってきました。何より、女性の皆さんが頑張っていることが会社に認められてきたことがよく分かります。これからは、育児だけでなく介護の問題も出てきます。介護と仕事の両立に関してはいかがでしょうか。
吉川 特に派遣社員は介護でどうしようもなくなり、辞めざるを得ないケースが多いです。そこで将来を見据えて、在宅業務のテストケースを始めています。しっかり検証しながら、今後フレキシブルに対応できるようにしたいと思っています。
小林 私は義理の母の介護をしながら働いていますが、ずっと介護をしていると煮詰まってしまいます。仕事と介護が重なって大変なときもありますが、不思議なことに、家庭と会社のそれぞれから離れると、気分転換にもなるのか、自分の気持ちや行動を冷静に考えられます。仕事をしていく上で、母にはずいぶんと助けてもらいましたので、今度は自分ができることでお返ししていきたいと思ってやっています。
駒井 私も昨年、両親が入院して大変でした。同居していないので本格的な介護ではありませんが、昨年の今ごろは週に2、3回は会社帰りに寄って家事などを行っていました。その時には、休みをとったり在宅で仕事ができたらどんなにいいのだろうと思いました。幸いにも私の両親は元気になりましたが、介護が必要な方たちは皆、同じような気持ちだろうと想像します。
内藤 時間と共に手がかからなくなる子育てと違って介護は先が見えません。会社としても、各部署でも介護への対応をしっかりしていかなければならないと思います。
経験をバトンタッチして‐厳しくなる薬機法を遵守
内藤 これまでの仕事の中で自分が大事にしてきたことや、部をまとめていく上で心がけていることは何でしょうか。
吉川 コールセンターの立ち上げは2000年でしたが、何もかもが初めてで全て手探りの状態から始めました。
当時、東邦薬品がENIFを積極的に推進し始めた頃で、自動受注に切り替えようとしていた時期に、コールセンターではアナログの電話で注文を受けようとしていたのです。
この正反対の方向性に対して、営業現場からは一部の方からクレームもありましたが、得意先の先生から、「機械に頼ることも大事だが、人と人との対話が取引の上では一番重要だからコールセンターの設立は評価するよ」と励ましの言葉をいただいて、それを支えにずっとやってきました。今でも、お客様からの電話1本1本が、非常にありがたいと感謝の気持ちを持ちながら、皆が業務に励んでいます。
内藤 出向薬剤師というセクションの立ち上げはどうだったのでしょうか。
駒井 このチームは薬局での薬剤師不足という需要に対して、98年に3人でスタートしました。最初、なかなか薬剤師が定着しなかったのですが、最近では勤続10年の社員もおり、ようやく試行錯誤してきたことが実ってきたのだと思っています。いつまでも出向薬剤師でいるということではなく、その先のキャリアプランに役立てられるような研修などを用意していきたいと思っています。
能代 入社した頃、当時わが社にはなかったホームページの立ち上げを任されました。まだ社会にあまり普及していなかった時期だったので独学でプログラムを組むなど苦労しました。
この会社で在宅勤務を最初にさせていただいたのは私ではないかと思うのですが、ホームページ制作という特殊性もあって週2回出社するほかは自宅で仕事をしていた時期があります。この経験が他の人たちの働き方にもつながっていければと思っています。
内藤 私が入社したのは、昭和54(79)年の薬事法改正の後で、卸業者も情報提供が努力義務となった中で医薬ニュースをつくり始めました。1人でやるのには限界があって、部にしてもらい、それから27年間ずっとやってきて3年前からは増田さんに全てを任せています。
時代も変わり、会社が大きくなるにつれて業務も広がり、知識のレベルを平準化して薬機法を守るようにすることが難しくなってきました。薬剤師の常勤が必須となっていますので、私が苦労してきた「人」の問題を今、増田さんが苦労していると思います。
増田 おっしゃっるように、いつも人の問題で苦労しています。管理薬剤師は絶対にいないと困りますので、欠員が出れば必ず補充しなければいけません。一番欲しいのは、どこにでも行ってくれる薬剤師ですが、女性が多いこともあって異動がなかなか難しいですし、いきなり知らない営業所に行くわけですから、それなりにスキルも必要です。これに対応できる薬剤師を育てていければと思っています。
薬機法もどんどん厳しくなっていきますが、当社のマニュアルは非常に厳しい内容です。企業統合すると他社の人はビックリするほどですが、薬機法遵守のためこれからも継続していきたいと思っています。
仕事とプライベート両立‐多様な活動を役立てる
吉川 コールセンターには小さいお子さんがいるスタッフが多いので、一部の人に聞いてみました。苦労していることでは、学校・幼稚園の行事で休みが取りにくいこと。電話が多い月曜日や金曜日に行事が重なると、皆に迷惑をかけてしまうという精神的なプレッシャーがあるということでした。助かることとしては、上司が女性なので、体調不良や家族のことについて話しやすいこと。子どもが小さいためシフト勤務や時短勤務で考慮してくれること。働くことで気分転換となり、子育てに煮詰まることがないこと。これらのコメントは、その通りだと思います。
安齋 私が東邦薬品に入社した時には、既に下の息子が小学生になっていましたので、ある程度時間に余裕がありました。以前は、クリニックに1人だけの管理栄養士として勤務していたので大変でしたが、今の仕事は得意先のスケジュールに合わせて勤務できるので、子育て中でも働きやすい環境だと思っています。土曜日勤務や日曜日のイベントなどもあり、家族と過ごす時間は限られていますが。
森田 この言い方がいいのか分かりませんが、私は仕事があまり好きではありません(一同爆笑)
どこかで刺激を受けていないと、仕事をしていても楽しくないし、遊ぶことで仕事と外の世界が、いろいろとシンクロして結び付いて面白いです。最近は文化・芸術活動を支援するメセナ関係の窓口もやらせてもらっていますが、地元の社会活動の協賛などでは、いろいろな方の話を聞くことができます。こうした活動への取り組み方が分からない社員も多いと思うので、会社がその足がかり的な役割を担えば活動も広がると思いますし、会社全体がまとまっていくのではないかと思います。
小林 私は仕事とプライベートの両立はできていると思っていますが、皆がそうだとは限りません。自分の経験を生かして、苦労していると思われる人に声をかけるなど意識して皆に働きかけています。
増田 仕事とプライベートの関係では、ある程度、自分の中で妥協するところを決めておかないと、逆に全てが中途半端になってしまいます。頑張れるところは頑張り、できないところは目をつぶっていく方がいいかもしれません。
毅然と発言できる力量を‐より活躍できる環境へ
内藤 皆さんの今後の目標、挑戦したいことなどをうかがいたいと思います。
吉川 後継者を育てること。あとは、働き方改革が言われていますので、単純なところですが、基本部分の見直しを徹底して、全センターでやっています。
小林 やはり働き方改革ですね。部や自分たちで一所懸命に業務改善しても、会社として協力いただかないと成り行かないことがあります。企画推進部は守備範囲が広いので、業務を見直して、省けるところと絶対に省いてはいけないところを整理できればいいと思っています。
能代 突発的な仕事も多いので、室長とは、いつでもそれに対応できるような準備だけはしておこうと常に話しています。記者や投資家と話をする機会も多いので自分も含めて、一人ひとりのスキルアップが課題ですが、そのことに時間を割けないという現実も一方の課題としてありますから、できるだけ効率化を図って、勉強会などの時間を捻出していきたいですね。
森田 時間内に仕事を終えられない人は、なぜ終えられないかが分からないままになってしまっているので、みんなでカバーするやり方とか、コミュニケーションをもっとアップさせたいです。お叱りを受けることも多い部署なので、皆が閉塞的にならないよう気持ち的なところも変えていけたらと思います。
駒井 薬剤師のやりがいとして、患者さんにありがとうと言ってもらえるとうれしいという声をよく聞きます。薬剤師として成長できるように、今後もサポートを頑張ろうと思っています。事務作業としては、できるだけデータ化するようにしています。古い書類もデータベースに入力し、ペーパーレス化を進めています。
安齋 やはり一人ひとりのライフスタイルに合わせた勤務体系を考えることです。できる限り長く勤められる環境を提供することで、東邦薬品の管理栄養士としてのキャリアを積み、得意先のファンを増やしてもらいたいと思っています。土日に開院している医療機関も増えていますので、その対応も考慮していきたいと思います。
増田 薬事部員にはいつ何時、営業所に行ってもらうことになるかもしれませんので、担当は決めずに皆で全ての仕事をやっています。また、営業所から気軽に連絡が来るような風通しの良い体制を整えていきたいと思っています。
内藤 私は長いこと勤務していますが、声を出さないと賛成だと捉えられてしまいますし、これはダメだと言える力量を備えないと流されてしまうと感じています。また、社内にリスペクトできる相手を見つけて、その人を目標や指標として邁進することの大切さを伝えたいと思います。これから若い人たちに頑張ってもらわなければなりませんから、ぜひ、これからも女性が声を上げていく会社であってほしいと願っています。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
東邦薬品の女性座談会で、子育をしながら働く薬剤師の本音が語られています。また、製薬企業における管理薬剤師の必要性についても明かされています。必読!