【注目イベントCloseUp!】今後、必要とされる薬剤師とは?
2021年薬剤師クライシス!?
数字で読み解く薬剤師・薬局の真実
マイナビ薬剤師主催の「転職スキルアップセミナー」が去る12月2日(東京)、12月9日(大阪)で開催され、多くの参加者が集まりました。
同セミナーのゲストスピーカーである総合メディカル株式会社・小野瀬慎典さんのスピーチが始まると、参加していた薬剤師の皆さんは、真剣に耳を傾けていました。
テーマは、「今後、必要とされる薬剤師とは」。
小野瀬さんが語った内容を“数字クイズ”と共にレポートします。
■ゲストスピーカーは…
総合メディカル株式会社
人事本部 採用部
シニアマネージャー
小野瀬慎典さん
福岡県出身。薬剤師として愛媛県の薬局に勤務後、現職。全国の薬局を回ることから、地域医療や介護の現状にも詳しい。
■薬剤師の過剰時代がくる?
――薬剤師クイズです、何の数字でしょうか?
【クイズ1】 30万⼈・17万人
【クイズ2】 72.8%
【クイズ3】 720店舗
「【クイズ1】の答え、30万人は、もちろん薬剤師さんの数。そのうち17万人が薬局に勤める薬剤師さんの人数です。さらに毎年7000~9000人もの新卒薬剤師が輩出されており、その3~4割は薬局希望者となります。
【クイズ2】の答え、「72.8%」は平成29年度の処方せん受取の伸び率が鈍化し、新規店舗ができにくい状況です。
【クイズ3】の答えは、2016年にM&Aで閉鎖した薬局数、720店舗に上ります」
つまり、3つの数字があらわしているのは、
「薬剤師の人数は増え続けますが、今後薬局の数は減っていくことが予測されます」と、小野瀬さんは続けます。
「今年ある首都圏の大手薬局は、募集人数を制限しました。少なくとも5年以内、早ければ3年以内には、少なくとも都市圏は薬剤師過剰時代がやってくるでしょう。転職を考えるなら、早いほうがよいといえます」
薬剤師過剰時代――転職するなら、「今後、生き残れる薬局」を選ぶ必要があります。
さらにスピーチは白熱していきます。
■今後「生き残る薬局」とは?
――薬剤師クイズです、何の数字でしょうか?
【クイズ4】 +0.19%
【クイズ5】 19%〜93%
「【クイズ4】の答え「+0.19%」は、平成30年の診療報酬改定による調剤の割合です。
【クイズ5】の答え「19%〜93%」は、大手調剤薬局13社(2018年4⽉〜6⽉)の減益率です。
「『+0.19%』という数字が表すように、調剤報酬だけでは薬局は経営が成り立たないのです。また、大手調剤薬局13社すべてが減益という厳しい結果となり、赤字企業が3社ありました。
つまり、転職を考えるなら、会社の経営状態を把握し、今後生き残っていく薬局を選ばなければなりません」
さらに、小野瀬さんは、今後薬局が生き残るためには、3つのポイントが重要だといいます。
【薬局生き残りポイント1】
機能重視の薬局~かかりつけ、在宅~
「今回の診療報酬改定から考えると、調剤報酬以外にも目を向けなければならないわけです。ポイントとなるのが、『かかりつけ薬剤師指導料』『在宅患者訪問薬剤管理指導料』。
地域の人たちの“かかりつけ薬局”として、個人のニーズに答えていかなければなりません。24時間対応や在宅患者への対応は避けては通れません」
【薬局生き残りポイント2】
人と人を繋ぐ薬局 ~医師との連携~
「新たに追加された「服用薬剤調整支援料」も見逃せません。薬剤師は、患者さんへの服薬指導だけではなく、処方内容をチェックしてどんどん医師へフィードバックしていかなければなりません。
既に運用されている薬局も多いと思いますが、薬剤師と医師の間で『トレースレポート』を取り交わし、ポリファーマシーの改善になれば、点数加算だけでなく、『薬が減った』と、患者さんにも喜んでもらえる。それは薬剤師のやりがいにもなるわけです」
【薬局生き残りポイント3】
健康サポート薬局 ~患者の健康を全面支援~
「現在、「健康サポート薬局」は、全国の約57,000店舗の薬局中ですでに1000店舗を超えています。
薬局は、薬の情報だけでなく、食事や介護などあらゆる相談に応じる“健康サポート”の役割が重要視されます。処方せんがなくても気軽に来てもらえる薬局が必要とされていくでしょう」
【まとめ】今後、必要とされる薬剤師とは
「オリンピック後の2021年には薬剤師過剰時代となることが予測されます。その厳しい時代を生き残るには、『夜間対応は辛い』とか『在宅患者はやりたくない』とは言えない状況になっていると私は考えています。
転職や面接でも、給与や待遇など条件面だけ主張するのではなく、「地域と患者さんに寄り添う気持ち」が大事。
今後、求められるのは“地域の患者さんのために貢献する志と行動力”。
薬剤師として生き残るために、薬剤師にしかできない地域貢献を目指してほしいですね」
>>「在宅」「服用薬剤調整支援料」の点数は? 2018年診療報酬改定の記事でおさらい
取材・文/中条礼子
薬+読 編集部からのコメント
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