職場の人間関係に悩む薬剤師が圧倒的!
1位 職場の人間関係がうまくいかない
2位 休暇や勤務時間に対する不満
3位 給与に対する不満
4位 忙しくて気を抜けない
5位 家庭や子育ての両立が難しい
6位 患者さんの接遇
7位 薬歴など業務の時間が取れない
8位 薬名や薬価など知識面で不安
9位 立ち仕事など体力の不安
10位 医師への疑義照会
※「マイナビ薬剤師」調べ。「薬剤師700人アンケート」より「薬剤師を『辞めたい』『辛い』『転職したい』と思う理由の回答から抜粋。実査委託先:楽天インサイト(2018年10月)。
薬剤師の平均勤続年数は7.2年
厚生労働省の調査によると、薬剤師(女性)の平均勤続年数は7.2年となっており、一般企業と比べると、比較的短い傾向にあります(平成29年厚生労働省「賃金構造基本統計調査」より)。
「一般企業の場合は、勤続年数が短くて転職を繰り返すのは、マイナスイメージになりますが、薬剤師の場合は、そうともいえません。どこも人手不足のため、新卒はとくに引く手あまたとなっており、就職説明会で約8割が内定するほどです」
医療モールを立ち上げ、経営者として薬局に携わってきた斉木和成さんは、薬剤師を採用する側として、長く勤められる人材の確保に苦労してきたといいます。
「薬局を経営してしばらくは、1年で辞めてしまう薬剤師さんも多かったですね。少しでも自分に合わない職場だと感じると辞めてしまうんです。
苦労して国家資格を勝ち取ったのですから、薬剤師として腰をすえて、仕事に取り組んでほしいといつも感じていました」
職場の雰囲気をよくする3つの秘策
薬局という限られた人間関係の中で躓くと、なかなか修復できないことも。職場で人間関係の悩みにぶつかったとき、改めて考えてみてください。
身近に相談できる同僚はいますか?
頼れるリーダーはいますか?
薬局長は話を聞いてくれる人ですか?
「私は埼玉で初の医療モールの運営をしていましたが、徐々に薬剤師さんが定着してくれるようになりました。薬剤師さんは10年を超える人も多く、他の薬局に比べると勤続年数は長かったですね。
次々と辞めてしまう現状を踏まえ、薬局長である私自身、現場の声に耳を傾ける必要を感じました」
斉木さんいわく、薬局の職場の人間関係が良くなって勤続年数が伸びた理由には、3つのポイントがありました。
1 経営責任者が毎週スタッフと薬と業務の対話時間を設けた
2 薬局内のコミュニケーションのリーダーを配置
3 新人に話しかける役割をベテランに任命
まずは、週に1度スタッフと1対1で約2時間、しっかりと薬と現場業務の話をする時間を設けました。
リーダーを任命して、責任ある仕事を任せるとともに、コミュニケーションが円滑になるよう、親睦会を企画してもらうなど職場のテンションを盛り上げる工夫をしました。
そして、ベテランのパートさんには、新人さんの話し相手もお願いしました。
新人さんが入社して1カ月間は、とくに仕事とは関係ない話をすることでお互いに“胸襟を開く”ことを課題としました。家族の話でも、テレビドラマの話でも、趣味の話題でも、何でもよいので、仕事とは関係ない話をすることで、その人の人柄がわかり、コミュニケーションをとりやすくなっていきます。
これらの取り組みによって、次第に職場の雰囲気が改善されていきました。
ある日、歩きにくそうなおばあちゃんが薬局に入ってきたとき、近くにいた薬剤師さんがスッと立ち上がって手を貸し、案内をしてあげるようになっていました。
その姿は、職場の人間の誰かが見ています。職場の雰囲気がよくなると、進んで動ける薬剤師が増えていくものです。
薬剤師が飛躍するための職場選び
自分が目指すものと異なる職場であったり、ただ単調にこなしているだけでの業務であったり、「つまらない」と感じているなら、転職するのもひとつの方法だと斉木さんは言います。目指すべき職場はどう選べばよいのでしょうか?
「総合病院の院内薬局であれば、注射薬や消毒薬の製剤のほか、幅広い診療科の薬に触れる機会が増えます。また、カルテを見る機会もあるので、治療の経緯も併せて投薬の状況を知ることができます。薬に対する知識を増やしたり、在庫管理能力を高めたりと、実力をブラッシュアップできます。
門前薬局であれば、患者さんと直接やり取りする機会も多いので、より患者さんの立場に立って薬の説明や、患者さんの薬に対する疑問などを解消することができます。
「かかりつけ薬局」や「健康サポート薬局」が推進されていますので、薬の処方だけにととどまらず、介護や健康維持など、より生活に密着した役割を担っていかなければなりません。ドラッグストアに勤める薬剤師さんは、より生活に密着した医薬の提案を探ってみるのもよいでしょう」。
薬局の数が増え続けてきましたが、将来的には淘汰されていくことが予測されます。薬局が生き残りを考えねばならない時代、薬剤師はどのように職場を探していけばよいのでしょうか。
「人間関係で躓いて自分がやりたい仕事ができないのであれば、新たな職場を探したほうがいいかもしれません。
職場が変われば、処方せんもガラッと変わるので、新たな薬の知識が蓄積され、実力もついていきます。経験と実績を積んでいくことで、理想とする薬剤師に近づいていけると思います」
監修/斉木和成 取材・文/西谷友里加
顧問薬剤師 斉木和成さん
1978年東邦大学薬学部を卒業。西新井病院(梅田分院)に5年勤務し、薬局長に就任。
天龍堂漢方薬局勤務後、日本初の大型ドラッグストア1号店『マツモトキヨシ上野店』の企画、創業の責任者を担う。その後、川崎幸病院、慶應義塾大学病院付属「慶友病院」の薬局長、東京大学病院の薬剤師主任を務めるなど、分業薬局を創設して日本の医薬分業と薬剤師の働き方の幅を率先して広げてきた。1994年には埼玉県浦和市に、自営の県内初の医療モールを創業し、経営に携わる。現在は若手育成などに従事している。
現在は顧問薬剤師として若手育成や薬局運営相談、執筆などを手掛ける。著書に『薬剤師の新・幸福論 薬剤師に捧げる成功する処世術!』(幻冬舎ルネッサンス新書、アマゾン電子書籍で販売)がある。
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