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2019年薬機法改正のポイントは?/薬剤耐性菌が増加傾向に
Topics 1 薬機法が改正される見通し――薬剤師業務への影響は?
2019年3月、医薬品医療機器等法(薬機法)の改正案が国会に提出されました。政府は会期内での成立をめざし、議論を進めているところです。改正される見通しの薬機法により、薬剤師業務にはどのような影響が生じるのでしょうか。
第1のポイントは、薬剤師の患者支援のあり方が明確になることです。地域包括ケアシステムの構築が進む中、薬剤師には医師をはじめとする医療従事者や医療機関と密に連携し、一元的・継続的な薬物療法を患者に提供することが求められています。そのため、薬剤師には調剤時だけでなく、薬物療法継続中の服薬状況や治療効果、副作用の出現などを把握し、必要に応じて患者指導や医療機関への情報提供を行う義務が課されることが必要と考えられているのです。この改正により、薬剤師はいっそう研鑽を積んで専門知識を深めること、薬局管理者はそのための環境を整えていくことが求められます。
第2のポイントは、「機能別薬局」の導入です。患者自身が自由にかかりつけ薬局を選択することができるように、「地域連携薬局」(在宅医療などを主体に地域の医療機関と連携しながら患者を一元的・継続的に支援する)と「専門医療機関連携薬局」(専門性が高い抗がん剤や分子標的治療薬などの管理を行う)に薬局を分類するものです。薬局薬剤師にとっては、どちらの分類に属する職場に勤務するかで業務内容や必要とされるスキル、知識も異なってくるため、働き方や勤務先を見直すきっかけにもなりうるのではないでしょうか。
このほか、医薬品等販売業者や薬局開設者が法を遵守する義務を明確に示し、違反行為に対する課徴金制度を導入するなど、ガバナンスの強化を図る改正点も注目されます。また、医薬品等の承認制度や安全対策の新たな構築など様々な内容が盛り込まれており、すべての薬剤師業務に影響が及ぶと考えられます。
Topics 2 増加しつつある薬剤耐性菌、どう対策する?
近年、抗菌薬が効かない「薬剤耐性菌」が増加傾向にあり、院内感染の原因となるなど深刻な状況が続いています。2018年8月には、鹿児島大学病院で多剤耐性アシネトバクター(MDRA)や類似の細菌による8人の死亡が報告され、2019年2月には八戸市立市民病院でバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)に感染した入院患者が75人にも上ったことが明らかになりました。
薬剤耐性菌が不適切な抗菌薬の投与により発生することは皆さんご存じでしょう。細菌には様々な変異を引き起こして環境の変化を生き延びる能力が備わっています。抗菌薬には様々なタイプがあり、それぞれ特定の細菌を死滅させる効果があります。そのため、感染を引き起こした細菌に合った抗菌薬が投与されると多くの細菌は死滅しますが、一定数は抗菌薬の影響を受けないような変異を引き起こして生き延びるのです。こうして変異して生まれた細菌が「薬剤耐性菌」です。とはいえ、抗菌薬を適正に使用していれば、薬剤耐性菌が発生する確率は低いです。しかし、抗菌薬の長期使用や不適切量投与、感受性の低い抗菌薬投与などを続けると発生しやすくなります。
日本では、何らかの感染症が疑われた場合、細菌培養検査や薬剤感受性検査を行わないまま抗菌薬が投与されることも多く、諸外国と比べて抗菌薬の使用頻度や薬剤耐性菌の発生頻度が高いといわれてきました。2016年の伊勢志摩サミットでも薬剤耐性菌の話題が持ち出されたほど、世界的にも問題視されているのです。そこで、薬剤耐性菌の発生を阻止すべく「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」が練られ、対策が進められています。
AMR対策アクションプランには「普及啓発・教育」「動向調査・監視」「感染予防・管理」「抗菌薬の適正使用」「研究開発・創薬」「国際協力」という6つの原則が定められていますが、薬剤師は「動向調査・監視」、「抗菌薬の適正使用」に携わる機会が多いでしょう。抗菌薬に関する知識が少ない医師は思いのほか多いため、抗菌薬の調剤をする際は、薬剤感受性試験が行われているか、その検査結果に適した抗菌薬が使用されているか、TDMに従った適正な量を使用しているか、意味のない長期投与がなされていないか……こうしたことを漏れなくチェックし、不適正な使用が疑われる場合は医師に指摘することが大切です。
成田亜希子(なりた あきこ)