相談してくれたことに感謝し、理由を尋ねてみましょう
患者さんの気持ちを損ねることなく伝えるには、4つのポイントがあります。
2. なぜ薬が必要なのか丁寧にヒアリングする
3. クッション言葉を添えて断りの説明をする
4. 代替案を伝える
なぜこれらのポイントが大切なのか、理由と注意点を詳しく解説していきます。
患者さんが疑問に思うことを素直に薬剤師に相談してくれるのはとてもありがたいことです。そこでまず、「ご相談くださりありがとうございます」などと感謝の気持ちを伝えましょう。これが、患者さんの機嫌を損ねずにお断りを伝えるための最初のポイントです。
次に、患者さんが薬を買いたいと思った経緯や理由について尋ねてみます。「お差し支えなければ、少しお話を伺ってもよろしいですか」「もしよろしければ教えていただきたいのですが、お薬が足りなくなったのですか?」のように切り出し、丁寧にヒアリングすることが2つ目のポイントです。
処方薬を失くしてしまった、飲み過ぎて足りなくなった、あるいは、予備の薬を欲しい、という理由かもしれません。処方せん医薬品は医師から交付された処方せんがないと販売することはできません。これは法律で定められたことなので、その通りに説明するしかないのですが、患者さんが薬を買いたいと思う理由がわかれば、患者さんの気持ちに配慮した説明が可能になります。
クッション言葉を使って、断りの表現をやわらげる工夫を
薬を販売できないことを伝えた後は、「お役に立てず申し訳ありません」のように謝罪の言葉を伝えましょう。「私は悪くないのに、なんで謝るの?」と思うかもしれませんが、相談してくれた患者さんの要望に応えられないことに対しての謝罪です。言葉だけでなく表情や態度でも申し訳ない気持ちをあらわすと、「本当に申し訳ない」と心から思っていることが伝わりやすくなります。
最後のポイントは、代替案を伝えること。薬を紛失したり飲み違いで足りなくなったりした患者さんには、再診を提案しましょう。その際も「それはお困りですね」「薬がないと不安ですよね」などと共感を伝えた上で、「お薬は販売できませんが、足りなくなったお薬を処方してもらうことは可能です」などと分かりやすく伝えます。紛失や飲み違いが続いている患者さんには、薬の保管方法や服用方法をアドバイスして、一緒に改善方法を考えることも大切です。
次にまた困ったことがあったとき、「あの薬剤師さんに相談しよう」と思ってもらえるように、時間も手間もかかりますが、患者さんが納得するまで根気強く説明してほしいと思います。
なお、2022年度の調剤報酬改定でリフィル処方せんの導入が決まりました。「薬だけ売ってほしい」と言われた際の対応にも影響するかもしれません。制度の最新情報を確認して、患者さんに気持ちよく利用してもらえるような案内を心がけましょう。
株式会社スマイル・ガーデン代表取締役。
薬剤師として総合病院薬剤部、漢方調剤薬局、調剤薬局で20年以上にわたり調剤、患者応対を経験。管理薬剤師として社員の人材育成に注力する。
現在は医療現場経験を活かし、医療接遇コミュニケーションコンサルタントとして活躍中。
マイナビ薬剤師・連載コラムが書籍化された、
「患者さん対応のプロをめざす! 『選ばれる薬剤師』の接遇・マナー」が
2017年7月19日 同文舘出版より発売。
株式会社スマイル・ガーデン : https://smile-garden.jp/
ブログ「いつもワクワク Always Smiling!」: https://smilegrdn.exblog.jp/
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