薬剤師の接遇マナー・テクニック 更新日:2023.04.13公開日:2022.02.10 薬剤師の接遇マナー・テクニック
困ったときに薬(やく)立つ、薬剤師の接遇・マナー
困ったときに薬(やく)立つ、薬剤師の接遇・マナー

Q145 病院に行かず「薬だけほしい」という患者さんにどう説明する?
Q145 病院に行かず「薬だけほしい」という患者さんにどう説明する?

「前回と同じ薬を売ってほしい」という患者さんがいらっしゃいました。その都度お医者さんの診察と処方箋が必要なことをお伝えしたのですが、「いつも来てるんだから、いいでしょ」と腑に落ちない様子でした。患者さんの気持ちを損ねることなく伝える方法はありますか?

Answer
Answer

相談してくれたことに感謝し、理由を尋ねてみましょう

「薬を売ってほしい」と言ってこられる患者さんは、どの薬局にもいると思います。定期薬を服用中の患者さんの場合、「いつも飲んでいる薬なんだから、ちょっとくらい分けてくれてもいいでしょ?」という気軽な気持ちで相談されるのかもしれません。
 
患者さんの気持ちを損ねることなく伝えるには、4つのポイントがあります。
 

1. 相談してくれたことに感謝する
2. なぜ薬が必要なのか丁寧にヒアリングする
3. クッション言葉を添えて断りの説明をする
4. 代替案を伝える

 
なぜこれらのポイントが大切なのか、理由と注意点を詳しく解説していきます。
 
患者さんが疑問に思うことを素直に薬剤師に相談してくれるのはとてもありがたいことです。そこでまず、「ご相談くださりありがとうございます」などと感謝の気持ちを伝えましょう。これが、患者さんの機嫌を損ねずにお断りを伝えるための最初のポイントです。

 

 
次に、患者さんが薬を買いたいと思った経緯や理由について尋ねてみます。「お差し支えなければ、少しお話を伺ってもよろしいですか」「もしよろしければ教えていただきたいのですが、お薬が足りなくなったのですか?」のように切り出し、丁寧にヒアリングすることが2つ目のポイントです。
 
処方薬を失くしてしまった、飲み過ぎて足りなくなった、あるいは、予備の薬を欲しい、という理由かもしれません。処方せん医薬品は医師から交付された処方せんがないと販売することはできません。これは法律で定められたことなので、その通りに説明するしかないのですが、患者さんが薬を買いたいと思う理由がわかれば、患者さんの気持ちに配慮した説明が可能になります。
 

【関連記事】「お釣りが足りない」とクレームを受けたら

クッション言葉を使って、断りの表現をやわらげる工夫を

3つ目のポイントは説明時の言い回し。「処方せんがないと調剤できません」といきなり否定するのではなく、クッション言葉をうまく使って、表現をやわらげる工夫をしましょう。頭ごなしにNOと言い切るとお互いに嫌な思いをしますが、「大変申し訳ないのですが」「せっかくご相談いただいたのですが」などと前置きすることで、患者さんの気持ちを思いやる姿勢を伝えるだけでなく、断りの言葉を切り出しやすくする効果もあります。
 
薬を販売できないことを伝えた後は、「お役に立てず申し訳ありません」のように謝罪の言葉を伝えましょう。「私は悪くないのに、なんで謝るの?」と思うかもしれませんが、相談してくれた患者さんの要望に応えられないことに対しての謝罪です。言葉だけでなく表情や態度でも申し訳ない気持ちをあらわすと、「本当に申し訳ない」と心から思っていることが伝わりやすくなります。
 
最後のポイントは、代替案を伝えること。薬を紛失したり飲み違いで足りなくなったりした患者さんには、再診を提案しましょう。その際も「それはお困りですね」「薬がないと不安ですよね」などと共感を伝えた上で、「お薬は販売できませんが、足りなくなったお薬を処方してもらうことは可能です」などと分かりやすく伝えます。紛失や飲み違いが続いている患者さんには、薬の保管方法や服用方法をアドバイスして、一緒に改善方法を考えることも大切です。

 

 
次にまた困ったことがあったとき、「あの薬剤師さんに相談しよう」と思ってもらえるように、時間も手間もかかりますが、患者さんが納得するまで根気強く説明してほしいと思います。
 
なお、2022年度の調剤報酬改定でリフィル処方せんの導入が決まりました。「薬だけ売ってほしい」と言われた際の対応にも影響するかもしれません。制度の最新情報を確認して、患者さんに気持ちよく利用してもらえるような案内を心がけましょう。

断りを伝えるときは言い回しをやさしくする工夫をして、代替案も伝えましょう
断りを伝えるときは言い回しをやさしくする工夫をして、代替案も伝えましょう
■こんなときどうする?コミュニケーションの記事をもっと読む

村尾 孝子
村尾 孝子(むらお たかこ)
薬剤師、医療接遇コミュニケーションコンサルタント。
株式会社スマイル・ガーデン代表取締役。
薬剤師として総合病院薬剤部、漢方調剤薬局、調剤薬局で20年以上にわたり調剤、患者応対を経験。管理薬剤師として社員の人材育成に注力する。
現在は医療現場経験を活かし、医療接遇コミュニケーションコンサルタントとして活躍中。
マイナビ薬剤師・連載コラムが書籍化された、
「患者さん対応のプロをめざす! 『選ばれる薬剤師』の接遇・マナー」が
2017年7月19日 同文舘出版より発売。
株式会社スマイル・ガーデン : https://smile-garden.jp/
ブログ「いつもワクワク Always Smiling!」: https://smilegrdn.exblog.jp/
薬剤師さんからの質問大募集!村尾孝子先生が、あなたの質問にお答えします
薬剤師さんからの質問大募集!村尾孝子先生が、あなたの質問にお答えします
今さら人に聞けない接遇・マナー、クレームへの対処方法など、薬剤師さんからの質問を募集しています。カルテ情報(お名前、薬剤師歴、年齢、性別、勤務先種別)を記入の上、こちらからご応募ください。皆さんの質問に、村尾孝子先生がわかりやすくお答えします。

※投稿者の特定を避けるため、一部内容を変更して掲載しております。