薬剤師のスキルアップ 公開日:2024.12.04 薬剤師のスキルアップ

薬剤師のボーナスは平均いくら?1年目の支給額や手取りの計算方法を解説

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

薬剤師がもらえるボーナスの平均はいくらくらいなのか、気になる人もいることでしょう。本記事では、薬剤師全体のボーナスの平均支給額のほか、薬剤師1年目のボーナスの平均額や、平均年収について解説します。また、ボーナスの支給時期や、薬剤師がボーナスアップを目指す方法に加え、ボーナスがない職場はあるのか、契約社員や派遣社員・アルバイトでもボーナスをもらえるのか、手取り金額の計算方法といったよくある質問と回答もご紹介します。

1.ボーナス(賞与)とは?

ボーナス(賞与)とは、定期的に支給される給与とは別に支払われる金銭のことです。賞与、ボーナス、特別手当、夏季手当、期末手当、年末手当など、企業によって名目はさまざまです。
 
労働基準法の施行に関する通達(昭和22年9月13日発基第17号)において、賞与とは「定期または臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであって、その支給額があらかじめ確定されていないもの」と定義されています。
 
参照:労働基準法の施行に関する件(昭和22年9月13日発基第17号)|厚生労働省
 
また、国税庁のウェブサイトによると、「賞与とは、定期の給与とは別に支払われる給与等で、賞与、ボーナス、夏期手当、年末手当、期末手当等の名目で支給されるものその他これらに類するもの」であり、給与などが賞与の性質を有するかどうか明らかでない場合、以下のようなものは賞与に該当するとされています。
 

1.純益を基準として支給されるもの
2.あらかじめ支給額または支給基準の定めのないもの
3.あらかじめ支給期の定めのないもの(雇用契約そのものが臨時である場合のものを除く)
4.法人税法第34条第1項第2号「事前確定届出給与」に規定する給与(他に定期の給与を受けていない者に対して継続して毎年所定の時期に定額を支給する旨の定めに基づき支給されるものを除く)
5.法人税法第34条第1項第3号に規定する業績連動給与

参照:No.2523 賞与に対する源泉徴収|国税庁
 
なお、ボーナスは法律で支給が義務付けられているものではないため、必ず支払われるとは限りません。ただし、契約書や就業規則でボーナスの支給について定められている場合には、その定めに従って支給する義務があります。

 

1-1.ボーナスはいつもらえる?

ボーナスがもらえる時期は企業によって異なりますが、夏と冬の年2回支給されるのが一般的です。6月下旬から7月下旬に1回、12月上旬から中旬に1回支給されるケースが多いでしょう。
 
ボーナスをもらうためには、基本的に一定以上の勤務期間が必要です。多くの企業は、業績のほか、勤務態度や会社への貢献度、欠勤・遅刻などで評価を行い、ボーナスの支給額を決定しています。

2.薬剤師のボーナスは平均いくら?

厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、薬剤師のボーナス(年間賞与その他特別給与額)は平均76万8,700円でした。所定内給与額が平均38万8,700円であることから、平均約1.98カ月分のボーナスが支給されていることが分かります。
 
企業規模ごとの給与やボーナス、支給月数の平均は、以下のとおりです。

 

従業員数 年齢 所定内
給与額
ボーナス
支給額
ボーナス
支給月数
全体
(10人以上)
40.3歳 38万8,700円 76万8,700円 1.98カ月
1,000人以上 36.9歳 36万円 85万8,800円 2.39カ月
100~999人 39.4歳 37万4,100円 77万9,100円 2.08カ月
10~99人 47.8歳 46万5,400円 59万1,300円 1.27カ月

参照:賃金構造基本統計調査 令和5年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)|政府統計の総合窓口

 

企業の従業員数が多いほど平均年齢が若く、ボーナスの支給額も高くなっており、従業員が少ない企業は平均年齢が高く、ボーナスの支給額は少ないものの、所定内給与額が高い傾向にあります。

 

2-1.薬剤師1年目のボーナスは平均いくら?

「薬剤師1年目」に限定したデータではないものの、「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、経験年数1~4年の薬剤師のボーナスは平均74万2,300円でした。
 
企業規模ごとの平均は、以下のとおりです。

 

従業員数 所定内
給与額
ボーナス
支給額
全体
(10人以上)
34万6,900円 74万2,300円
1,000人以上 34万1,000円 86万400円
100~999人 32万3,100円 65万3,000円
10~99人 45万4,200円 45万5,600円

参照:賃金構造基本統計調査 令和5年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 10 職種(小分類)、年齢階級、経験年数階級別所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)|政府統計の総合窓口

 

なお、同調査によれば、「経験年数0年」の薬剤師のボーナスは平均5万5,400円となっています。
 
ただし、賃金構造基本統計調査では、調査前年の7月2日以降に雇用された労働者については「雇用の日から調査年の6月30日までの期間」におけるボーナスの金額を調査しているため、新卒1年目の薬剤師の場合、支給対象になっていないケースも多いでしょう。
 
参照:賃金構造基本統計調査 調査の概要|厚生労働省

 

2-2.薬剤師の平均年収はいくら?

「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、薬剤師の平均年収は577万8,700円でした。
 
企業規模ごとの薬剤師の平均年収は、以下のとおりです。

 

従業員数 年齢 勤続年数 年収
全体
(10人以上)
40.3歳 7.9年 577万8,700円
1,000人以上 36.9歳 7.6年 569万9,600円
100~999人 39.4歳 7.7年 554万9,100円
10~99人 47.8歳 8.7年 632万4,900円

参照:賃金構造基本統計調査 令和5年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)|政府統計の総合窓口
※年収は「きまって支給する現金給与額」×12カ月+「年間賞与その他特別給与額」で算出

 

企業規模別では、従業員数が10~99人の企業の平均年収が632万4,900円と最も高くなっています。これは、平均年齢が高く、平均勤務年数も長いことで、月収が高くなりやすいことが理由でしょう。
 
従業員数1,000人以上の企業は、ボーナスの平均支給額は多かったものの、平均年齢が低く、平均勤務年数が短いことから、平均年収は低くなっていることが考えられます。

 
🔽 薬剤師の平均年収について解説した記事はこちら

3.薬剤師のボーナスは多い?少ない?

薬剤師のボーナスは他職種より多いのか、少ないのかを比較してみましょう。
 
「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、医療関連職種のボーナス支給額(年間賞与その他特別給与額)は、以下のとおりでした。

 

職種 所定内
給与額
ボーナス
支給額
支給月数
医師 95万円 127万6,300円 1.34カ月
歯科医師 67万1,100円 89万3,400円 1.33カ月
獣医師 40万5,600円 95万5,500円 2.36カ月
薬剤師 38万8,700円 76万8,700円 1.98カ月
保健師 29万7,700円 75万5,700円 2.54カ月
助産師 35万3,800円 91万9,900円 2.60カ月
看護師 31万9,300円 85万6,500円 2.68カ月
准看護師 26万6,900円 62万9,500円 2.36カ月
診療放射線技師 33万6,200円 96万900円 2.86カ月
臨床検査技師 31万7,600円 86万8,100円 2.73カ月
理学療法士
作業療法士
言語聴覚士
視能訓練士
29万100円 71万4,400円 2.46カ月
歯科衛生士 28万1,000円 48万8,800円 1.74カ月
歯科技工士 32万6,000円 57万4,600円 1.76カ月
栄養士 25万6,300円 68万4,500円 2.67カ月

参照:賃金構造基本統計調査 令和5年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)|政府統計の総合窓口

 

薬剤師のボーナスの平均支給額は、医療関連職種の中で高額とはいえないものの、低い金額ではないことが分かります。支給月数も約2カ月と、平均的なものになっています。

4.薬剤師のボーナスに関するQ&A

ここでは、薬剤師のボーナスに関するQ&Aについて見てきましょう。

 

4-1.ボーナスがない職場もある?

前述したとおり、企業はボーナスを支給する法的な義務を負っていません。そのため、必ず支給されるものではないことを念頭に置いておきましょう。
 
厚生労働省の「毎月勤労統計調査 令和6年2月分結果速報等」によると、「医療・福祉」業に属する常用労働者5人以上の事業所のうち、2023年に年末賞与を支給した事業所の割合は75.0%で、約4分の1の職場がボーナスなしということになります。
 
薬剤師が働く業界では、ボーナスが支給されているケースが多いものの、業績が悪くボーナスを支給できなかったり、基本給を高くしてボーナスを支給していなかったりする企業もあるため、職場の経営状況や給与体系を確認することが大切です。

 

4-2.契約社員や派遣社員・アルバイトでもボーナスをもらえる?

契約社員や派遣社員、アルバイトにボーナスを支給する企業は少ないかもしれません。しかし、契約書や就業規則などにボーナスの支給が明示されている場合、ボーナスは支給されます
 
契約社員や派遣社員、アルバイトとして勤めながらボーナスの支給を希望する場合は、事前に確認しておきましょう。

 

4-3.ボーナスの手取り金額の計算方法は?

ボーナスの手取り金額は、ボーナス支給額から社会保険料と源泉徴収税額が差し引かれた額になります。
 
社会保険料は、「健康保険料」「厚生年金保険料」「雇用保険料」「介護保険料(40歳以上)」の合計額で、ボーナスの支給額に各保険料の料率を乗じて算出します。
 
源泉徴収税額(所得税および復興特別所得税)については、国税庁の「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」をもとに扶養人数などに応じた「賞与の金額に乗ずべき率」を求め、ボーナスの支給額から社会保険料を差し引いた金額に乗じて計算します。

5.薬剤師がボーナスアップを目指すには?

薬剤師がボーナスアップを目指すには、基本となる給与をアップする方法や、転職する方法などがあります。それぞれについて見ていきましょう。

 

5-1.勤続年数を積んで昇給を目指す

ボーナスの支給額は基本給が基準となるケースが多いため、勤続年数を積むことで、毎年コンスタントに昇給すれば、ボーナスアップにつながります。
 
また、勤務先に長く在籍していれば、昇進する機会もあるかもしれません。昇進によって昇給が望めるため、おのずとボーナスアップが目指せます。

 

5-2.管理職への昇進を目指す

管理職に就いて昇給を目指すことは、ボーナスアップの大きな一歩となります。管理薬剤師やエリアマネージャーなどになるためには、リーダーシップやマネジメントのスキルを身に付けることが求められます。
 
また、現場での経験を積み、上司や同僚から信頼を得ることも必要です。薬局内をまとめたり、職場の勉強会などへ積極的に参加したりする経験が評価につながるでしょう。

 

5-3.好条件の職場に転職する

好条件の職場に転職するのも、ボーナスアップには効果的です。ボーナスの支給額は業種によっても異なるため、ボーナスの高い業種へ転職するのもひとつの方法でしょう。
 
また、ボーナスは「給与×〇カ月」で支給されることが多いため、「給与」または「支給月数」が現職より多い職場へ転職するのも一案です。
 
ボーナスアップを目指して転職を考えている場合は、転職サイトやキャリアアドバイザーを利用するのがおすすめです。目的に合った求人を探してもらえるため、効率的に転職活動ができるでしょう。

6.薬剤師としてのキャリアアップがボーナスアップにつながる

薬剤師が現職でボーナスアップを目指すなら、キャリアを積みながら認定薬剤師や専門薬剤師などを取得し、昇給や昇進を目指しましょう。転職してボーナスアップをするなら、強みとなる経験や資格を棚卸することが大切です。いずれの方法も、キャリアアップがカギとなるため、ボーナスアップを目指すなら薬剤師としてのキャリアアップも同時に考えましょう。


執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。