薬剤師のスキルアップ 更新日:2024.01.16公開日:2018.07.26 薬剤師のスキルアップ

期待のフィブラート系新薬パルモディア。トライコアとの違いを知っておこう

文:加藤鉄也(研修認定薬剤師、JPALSレベル6)

新薬「パルモディア」と既存薬「トライコア」。特徴を比較します

フィブラート系新薬パルモディア(一般名:ペマフィブラート)は脂質異常症を改善し、動脈硬化の予防が期待できる薬です。リポクリン錠(クリノフィブラート)、ベザトールSR錠(ベザフィブラート)、トライコア錠・リピディル錠(フェノフィブラート)などに次ぐ薬剤として販売されました。薬剤師として、今後の監査や服薬指導に生かすためにはパルモディアの特徴を理解しておく必要があります。以前から使用されているトライコアと比較しながら、情報を整理してみましょう。

そもそもフィブラート系薬剤とは

フィブラート系薬剤は、核内受容体のひとつであるペルオキシソーム増殖剤活性化受容体α(PPARα)を活性化することで効果を発揮するタイプのものです。PPARαは肝臓や脂肪で強く働き、活性化することで脂質コントロールに関わる遺伝子を調整します。結果的に脂肪酸を分解する細胞内小器官のペルオキシソームを増やし、血液中の中性脂肪の量を減らすというわけです。

 

また、細かい作用機序は明確ではないものの、HDL-Choの構成タンパク質であるアポA‒ⅠとアポA‒Ⅱの産生を促すことで、血液中のHDL-Choの量を増やすこともわかっています。ちなみに「ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体α」という名称は、フィブラート系薬剤(ペルオキシソーム増殖剤)により活性化された受容体であることに由来して名付けられました。

脂質異常症の治療における位置づけ

動脈硬化に関わる脂質には、主にLDL-Cho、HDL-Cho、中性脂肪の3種類があります。通常、LDL-Choが高い患者さんにはHMG-CoA 還元酵素阻害薬(スタチン)が用いられるケースがほとんどです。スタチンはLDL-Choを急激に下げますが、中性脂肪が高い場合やHDL-Choが低いときには十分に改善できない可能性があるため、経過を確認しなければいけません。その点、パルモディアやトライコアは中性脂肪を減らしHDL-Choを増やすことで、スタチンだけでは改善できないリスクを減らせるというメリットがあります。

スタチンとの併用による違い

フィブラート系薬剤は、効果としてスタチンとの相性が良い薬です。しかし一方では、併用によって横紋筋融解症のリスクが急激に増加してしまうため、使用が控えられているという現状があります。
特に腎臓機能が低下している患者さんが併用してしまうと、副作用が強く出る可能性が高くなるため、注意が必要です。トライコアとパルモディアのどちらの添付文書でも、腎機能低下の患者に原則併用禁忌となっていることを覚えておきましょう。

 

なかでも、トライコアはスタチンと併用した場合の情報が少なく、安全性に対する懸念が残っています。添付文書においても、腎機能の状態に関係なくスタチンとの併用は慎重投与と明記されています。

 

一方、パルモディアは相互作用の試験において、スタチンとの併用が調査されており、6種類のスタチンの内、パルモディアの量が20%以上変化したのはシンバスタチンのみであったことが報告されています。(パルモディアの血漿中濃度が、20%以上減少)他の薬剤では大きな変化はなく、併用での効果増が期待できる場合があるでしょう。

 

また、ピタバスタチンに併用すると中性脂肪が追加で約50%低下することがわかっており、副作用発現率もプラセボ15%に対して19%という結果です。そのため、安全性リスクもあまり増えないため、併用しても大きな問題はないかもしれません。患者さんを慎重に選択する必要はありますが、パルモディアはスタチンとの併用が可能となりえる薬剤と言えるでしょう。

効果と副作用に違いはあるのか?

では単独の薬剤として効果と副作用はどう違うのでしょうか?
パルモディアとトライコアを直接比較した試験の結果をみてみましょう。中性脂肪を下げる効果に関して、パルモディアを1日0.2mg(通常量)を服用した場合には-46.2%、トライコアを1日106.6mg(通常量)服用とする場合では-39.7%という結果が出ています。つまり、効果の点では、パルモディアのほうが有利と言えるでしょう。統計上、パルモディア錠(0.2mg/日)のトライコア錠106.6mg(1日1回)に対する非劣性と優越性が認められており、新薬としての期待が高まります。ただし、HDL-Choについては、どちらの薬も約20%増加させることがわかっているものの、効果の差は認められていません。

 

副作用を比較した場合、添付文書上、トライコアを飲んだ患者さんは肝機能検査値異常(25.32%)、CK(CPK)上昇(8.48%)が発生したという報告があります。一方、パルモディアでは肝機能検査値異常0.3~1%未満と低く、トライコアのほうがより重点的に肝機能を確認する必要があるでしょう。

処方監査で覚えておきたいパルディモアとトライコアの共通点と違い

それでは、実際に、パルモディアやトライコアが処方されたときのチェック項目について見てみましょう。まずはもちろん、用法の違いを確認しなければいけません。トライコアは1日1回の服用に対してパルモディアは1日2回服用です。

 

どちらの薬剤も、肝機能障害のある患者さんには注意が必要です。特にトライコアは肝障害のある患者には禁忌となり、肝機能検査値において異常がある場合は低用量である53.3mgから服用を開始しなければいけません。一方で、パルモディアは、軽度の肝機能障害であれば使用できますが、減量を検討し、慎重に投与する必要があります。また肝機能検査値異常での制限はありません。

 

加えて、どちらの薬剤も腎機能障害がある患者さんについては、単独で服用した場合でも横紋筋融解症があらわれる危険性があります。腎機能関連検査項目となる血清クレアチニン値が2.5mg/dL以上の場合には投与を中止し、1.5mg/dL~2.5mg/dL未満の場合は低用量から服用を開始するか、投与間隔を延長しなければいけません。

 

併用薬に関してどちらの薬剤もスタチンとは原則併用禁忌です。
その他についてはトライコアに禁忌となる薬剤はなく、パルモディアはシクロスポリン、リファンピシンが禁忌とされています。シクロスポリンと一緒に服用するとパルモディアのAUCが約14倍、リファンピシンでは約11倍になってしまい、副作用の危険性が高くなります。

それぞれの特徴を理解した処方監査と服薬指導

パルモディアは優れた中性脂肪低下作用とHDL-Cho上昇作用を持っている期待の薬です。スタチン併用や肝機能異常のある患者さんに対してトライコアよりも使いやすい薬と言えるでしょう。一方で、シクロスポリン、リファンピシンとの併用は禁忌であり、用法は1日2回とトライコアよりも増えるので、薬剤師としてはコンプライアンスが低下しないようにしっかりと管理したいところ。安全性を十分に配慮しながら、薬の有効性を引き出せるように処方監査や服薬指導を行っていきましょう。

執筆/加藤鉄也
薬剤師。研修認定薬剤師。JPALSレベル6。2児の父。
大学院卒業後、製薬会社の海外臨床開発業務に従事。その後、調剤薬局薬剤師として働き、現在は株式会社オーエスで薬剤師として勤務。小児、循環器、糖尿病、がんなどの幅広い領域の薬物治療に携わる。医療や薬など薬剤師として気になるトピックについて記事を執筆。趣味は子育てとペットのポメラニアン、ハムスターと遊ぶこと。