薬剤師のスキルアップ 更新日:2021.08.04公開日:2015.09.21 薬剤師のスキルアップ

第36回 長谷川聰 先生

4人に1人が65歳以上という超高齢社会を迎え、日本は2035年には3人に1人が高齢者になると推計されています。こうした社会背景を受け、問題となっているのが高齢者を受け入れる医療施設不足。これを解消するために今後ますます在宅医療の必要性が増してくると考えられます。
そこで今回は、湘南の地で栄養サポートチーム(NST)専門薬剤師として在宅医療チームに参加し、薬と栄養の面から在宅患者さんをサポートしている長谷川聰先生にお話をうかがいました。

Q
患者さんの服薬コンプライアンスを向上させるため、患者さんの感じている「飲みづらさ」を発見できるようになりたいです。しかし、調剤薬局では患者さんの「食べる」「飲む」ということについての情報の入手が難しいように感じます。何か、いい方法はないでしょうか。
患者さんの服薬コンプライアンスを向上させるため、患者さんの感じている「飲みづらさ」を発見できるようになりたいです。しかし、調剤薬局では患者さんの「食べる」「飲む」ということについての情報の入手が難しいように感じます。何か、いい方法はないでしょうか。
すぐに飲んでも差し支えない薬は、その場で飲んでもらって様子をみる

 

待合室で飲み方を確認して、患者さんの薬の飲みやすさをアセスメント

 
患者さんの生活の場へ足を運ぶ在宅医療では、確かに患者さんの食生活や服薬状況に関する情報を多く得ることができます。しかし薬局の中にいても、こうした情報はちょっとした工夫で引き出すことができるんですよ。
 
たとえば、冬場にインフルエンザの患者さんが来局したとき。ラニナミビル(商品名:イナビル吸入粉末剤20mg)の吸入をその場でしてもらうことがありますよね。
それと同じように、その場で服薬が可能な薬があれば「ここで飲んでいきますか」と一声かけ、目の前で薬を飲んでもらうようにするのです。
 
ときどき、上向きで薬を飲む患者さんがいますが、これは本来とても飲みづらい姿勢のはずです。うがいをする姿勢で水を飲むのは難しいですよね。なぜなら、顎が上がった体勢は息が通るようにするための体位だからです。通常、人はものを食べたり飲んだりするときは正面を向くか俯き加減なので、上を向いたまま薬を飲むのは、そうしないと薬をうまく飲み込めない理由……麻痺や舌の運びが悪いなど、何らかの原因が潜んでいるのではないかと推察することができます。
 
このように薬局で一度だけでも薬を飲んでもらうことで、その方の薬の飲みづらさを発見できることがあります。
 

口渇の確認も忘れずに

 
確認を忘れがちかもしれませんが、薬の副作用による「口渇」だけではなく、加齢が原因の唾液分泌量の低下による「口渇」についても留意しましょう。
折に触れて確認していくと患者さんの適切な服薬に結びつくことがあります。
 
高齢の患者さんから「カプセル剤は口やのどにくっついて飲みづらい」という訴えを耳にすることは、意外と多いのではないでしょうか。その際、唾液の量が減少している可能性に触れ、多めの水で服用するように指導することも大切ですが、場合によっては剤形変更を提案することも必要かと思います。
 
また、口渇がある患者さんの服薬に注意が必要な薬として、口腔崩壊(OD)錠があります。
我々薬剤師は、錠剤の服用が困難な患者さんにOD錠をすすめがちですが、OD錠が文字通り口腔で崩壊するのは、唾液分泌が保たれている場合です。
口渇がある・唾液分泌が少ない患者さんでは口腔内で崩壊せず、歯頸部や口腔内に張りつき粘膜障害を来す場合があり、実際に症例報告も挙がってきています。
 
ですから、口の中でうまく溶けない場合には水で飲み下す必要がある旨を伝えて、飲みづらさを感じていないか、フォローアップしていくことが大切です。
口渇の有無は服薬指導中でも時間をかけずに確認できる項目なので、患者さんの「服薬のしづらさ」発見のための第一歩として、すぐに実践できるのではないでしょうか。
このように、薬局における投薬中でも、患者さんの「食べる力」「飲む力」を確認し、そこから普段の食事の「食べづらさ」「飲みづらさ」、薬の「飲みづらさ」を見つけるきっかけは意外と多くあります。
患者さんが普段好む食事の内容、固さの確認や、BMIの聞き取りなど、患者さんの栄養と服薬のサポートのために、実践できそうなものから普段の服薬指導に取り入れてみませんか。
 

すぐに飲んでも差し支えない薬は、その場で飲んでもらって様子をみる

 
 

待合室で飲み方を確認して、患者さんの薬の飲みやすさをアセスメント

 
患者さんの生活の場へ足を運ぶ在宅医療では、確かに患者さんの食生活や服薬状況に関する情報を多く得ることができます。しかし薬局の中にいても、こうした情報はちょっとした工夫で引き出すことができるんですよ。
 
たとえば、冬場にインフルエンザの患者さんが来局したとき。ラニナミビル(商品名:イナビル吸入粉末剤20mg)の吸入をその場でしてもらうことがありますよね。
それと同じように、その場で服薬が可能な薬があれば「ここで飲んでいきますか」と一声かけ、目の前で薬を飲んでもらうようにするのです。
 
ときどき、上向きで薬を飲む患者さんがいますが、これは本来とても飲みづらい姿勢のはずです。うがいをする姿勢で水を飲むのは難しいですよね。なぜなら、顎が上がった体勢は息が通るようにするための体位だからです。通常、人はものを食べたり飲んだりするときは正面を向くか俯き加減なので、上を向いたまま薬を飲むのは、そうしないと薬をうまく飲み込めない理由……麻痺や舌の運びが悪いなど、何らかの原因が潜んでいるのではないかと推察することができます。
 
このように薬局で一度だけでも薬を飲んでもらうことで、その方の薬の飲みづらさを発見できることがあります。
 

口渇の確認も忘れずに

 
確認を忘れがちかもしれませんが、薬の副作用による「口渇」だけではなく、加齢が原因の唾液分泌量の低下による「口渇」についても留意しましょう。
折に触れて確認していくと患者さんの適切な服薬に結びつくことがあります。
 
高齢の患者さんから「カプセル剤は口やのどにくっついて飲みづらい」という訴えを耳にすることは、意外と多いのではないでしょうか。その際、唾液の量が減少している可能性に触れ、多めの水で服用するように指導することも大切ですが、場合によっては剤形変更を提案することも必要かと思います。
 
また、口渇がある患者さんの服薬に注意が必要な薬として、口腔崩壊(OD)錠があります。
我々薬剤師は、錠剤の服用が困難な患者さんにOD錠をすすめがちですが、OD錠が文字通り口腔で崩壊するのは、唾液分泌が保たれている場合です。
口渇がある・唾液分泌が少ない患者さんでは口腔内で崩壊せず、歯頸部や口腔内に張りつき粘膜障害を来す場合があり、実際に症例報告も挙がってきています。
 
ですから、口の中でうまく溶けない場合には水で飲み下す必要がある旨を伝えて、飲みづらさを感じていないか、フォローアップしていくことが大切です。
口渇の有無は服薬指導中でも時間をかけずに確認できる項目なので、患者さんの「服薬のしづらさ」発見のための第一歩として、すぐに実践できるのではないでしょうか。
このように、薬局における投薬中でも、患者さんの「食べる力」「飲む力」を確認し、そこから普段の食事の「食べづらさ」「飲みづらさ」、薬の「飲みづらさ」を見つけるきっかけは意外と多くあります。
患者さんが普段好む食事の内容、固さの確認や、BMIの聞き取りなど、患者さんの栄養と服薬のサポートのために、実践できそうなものから普段の服薬指導に取り入れてみませんか。
 

長谷川聰先生プロフィール
長谷川聰先生プロフィール
タカノ薬局湘南秋谷管理薬剤師。栄養サポートチーム(NST)専門薬剤師。湘南の地にて、地域に根ざした医療を提供。栄養サポートの知識を活かして、在宅療養中の患者さんたちの日常を見守っている。