第32回 長谷川聰 先生
4人に1人が65歳以上という超高齢社会を迎え、日本は2035年には3人に1人が高齢者になると推計されています。こうした社会背景を受け、問題となっているのが高齢者を受け入れる医療施設不足。これを解消するために今後ますます在宅医療の必要性が増してくると考えられます。
そこで今回は、湘南の地で栄養サポートチーム(NST)専門薬剤師として在宅医療チームに参加し、薬と栄養の面から在宅患者さんをサポートしている長谷川聰先生にお話をうかがいました。全5回のシリーズです。
具体例があれば、教えてください。
具体例があれば、教えてください。
現在、タカノ薬局湘南秋谷では50人の在宅患者さんをフォローアップしています。そのなかで、担当医をはじめとする在宅医療チームのメンバーが、服薬を含めた生活全般のサポートに頭を悩ませていたのが、一軒家に一人で暮らす患者のAさんでした。ペースメーカを使用しており、抗凝血および抗不整脈、認知症の治療が必要な患者さんです。
当薬局がAさん宅に訪問するようになったのは今から1年半前。
私がAさん宅を訪問するまでにほかの薬剤師が介入したことはなく、初めて訪れたときには服薬忘れのために余り続けた薬が山のように積まれていました。
残薬の量やAさんは一人暮らしで認知症があるという背景を鑑みると、1日3回の処方ではコンプライアンスを保つことが難しそうです。そのため、医師に服用方法の変更について提案し、ご本人が「絶対に飲み忘れない」と言う1日1回朝食後のみの薬に変更してもらいました。
さらに、Aさん宅には、介護ヘルパー、医師、薬剤師などの在宅医療チームの誰かしらが毎日訪問することになっているので、その際に飲み忘れが一目でわかるよう、一包化した薬をお薬カレンダーにセットするようにしました。
飲み忘れてカレンダーに薬が残っていたら、そのときにすぐに服用してもらうことで服薬をカバーするようにしたのです。そのおかげで現在、Aさんは良好な服薬コンプライアンスを保っているばかりではなく、大きな問題もなく自宅での療養を続けられています。
水分と食事の摂取状況、排泄状態の確認は栄養面で患者さんをサポートするために欠かせません。
先日、気温30℃を超える昼過ぎにAさん宅を訪れると、エアコンがついているにも関わらず室温が29℃近くありました。その際は熱中症の危険性を考慮し、冷房効率を上げるためにAさんに断ってカーテンを半分引きました。
さらに水分摂取状況を確認すると、Aさんはその日、最後にいつ水分をとったか覚えておらず、喉の渇きは感じないと言います。
そこで、脱水症状予防のために常備してもらっているスポーツドリンクをコップ1杯分その場で注ぎ、少しずつでも飲み切っていただけるように指導しました。
在宅医療チームにおいて薬剤師が求められていることの第一は、患者さんが服薬しやすいよう服用方法を考えて提案・実行していくことです。そのうえで、今回のケースのように水分摂取や室温の確認など患者さんの健康維持・改善に役立つフォローアップもできるようになると、チームのメンバーから信頼を寄せてもらえるようになるでしょう。
次回は、患者さんの栄養指導についてもう少し踏み込んでお話をしていきます。
現在、タカノ薬局湘南秋谷では50人の在宅患者さんをフォローアップしています。そのなかで、担当医をはじめとする在宅医療チームのメンバーが、服薬を含めた生活全般のサポートに頭を悩ませていたのが、一軒家に一人で暮らす患者のAさんでした。ペースメーカを使用しており、抗凝血および抗不整脈、認知症の治療が必要な患者さんです。
当薬局がAさん宅に訪問するようになったのは今から1年半前。
私がAさん宅を訪問するまでにほかの薬剤師が介入したことはなく、初めて訪れたときには服薬忘れのために余り続けた薬が山のように積まれていました。
残薬の量やAさんは一人暮らしで認知症があるという背景を鑑みると、1日3回の処方ではコンプライアンスを保つことが難しそうです。そのため、医師に服用方法の変更について提案し、ご本人が「絶対に飲み忘れない」と言う1日1回朝食後のみの薬に変更してもらいました。
さらに、Aさん宅には、介護ヘルパー、医師、薬剤師などの在宅医療チームの誰かしらが毎日訪問することになっているので、その際に飲み忘れが一目でわかるよう、一包化した薬をお薬カレンダーにセットするようにしました。
飲み忘れてカレンダーに薬が残っていたら、そのときにすぐに服用してもらうことで服薬をカバーするようにしたのです。そのおかげで現在、Aさんは良好な服薬コンプライアンスを保っているばかりではなく、大きな問題もなく自宅での療養を続けられています。
水分と食事の摂取状況、排泄状態の確認は栄養面で患者さんをサポートするために欠かせません。
先日、気温30℃を超える昼過ぎにAさん宅を訪れると、エアコンがついているにも関わらず室温が29℃近くありました。その際は熱中症の危険性を考慮し、冷房効率を上げるためにAさんに断ってカーテンを半分引きました。
さらに水分摂取状況を確認すると、Aさんはその日、最後にいつ水分をとったか覚えておらず、喉の渇きは感じないと言います。
そこで、脱水症状予防のために常備してもらっているスポーツドリンクをコップ1杯分その場で注ぎ、少しずつでも飲み切っていただけるように指導しました。
在宅医療チームにおいて薬剤師が求められていることの第一は、患者さんが服薬しやすいよう服用方法を考えて提案・実行していくことです。そのうえで、今回のケースのように水分摂取や室温の確認など患者さんの健康維持・改善に役立つフォローアップもできるようになると、チームのメンバーから信頼を寄せてもらえるようになるでしょう。
次回は、患者さんの栄養指導についてもう少し踏み込んでお話をしていきます。