医療に欠かせない職種でありながら、どこか影が薄いと言われてしまうこともある、薬剤師という哀しき存在……。「あるある話」を通して、もっと知ってください。私たち薬剤師のこと!
若手薬剤師が認定資格を取ろうとすると…【薬剤師のあるあるシーン #2】
「持っていてもこの職場では役に立たない」と言って成長の芽を摘んでしまう先輩
薬剤師は、取得まで最低6年かかる国家資格です。それだけ重要な役割を担う存在だということで、みんなプライドを持って働いています。一方で、病院の薬局でも調剤薬局でもチームの輪(和)が大切です。それを乱す薬剤師は当然ながら好かれません。
薬剤師がスキルアップやキャリアアップを視野に取得する「認定薬剤師」の資格も、今では30種類近くになりました。資格についてはいろいろな考え方がありますが、「どれかは持っていたい」というのが多くの薬剤師の本音ではないでしょうか。どれだけ興味なさげに振る舞っていても、心の奥底では関心があるものです。
かなり昔、私がまだ若手薬剤師と言ってもよかった頃の話――。お茶の時間にふと認定薬剤師のことが話題に上ったとき、先輩薬剤師は「そんなの持っていてもこの職場では役に立たないよ」と言い放ちました。薬局長は「うんうん」という感じで同意のご様子。認定薬剤師の資格を取得する気満々だった私は、正直「えー」という感じでした。成長の芽が摘まれようとした瞬間です。とはいえ、上に逆らって輪(和)を乱すのも怖かった。
それで数年は我慢しましたが、結局は勤務先には内緒で、すべて自費で認定薬剤師の資格を取得しました。「私は先輩たちより長く働くし、転職するかもしれないし……」などと、いろいろ考えてのことです。
やがてあの先輩薬剤師は定年退職し、調剤薬局に再就職していきました。そして、かかりつけ薬剤師になるために認定薬剤師の資格を取得したと聞きました。当時の「あの発言」は本心だったのか、あるいはほんの軽口のつもりだったのか……。真実は当の本人にしか分かりませんね。
東北大学薬学部卒業後、ドラッグストアや精神科病院、一般病院に勤務。現在はライターとして医療系編集プロダクション・ナレッジリングのメンバー。専門知識を一般の方に分かりやすく伝える、薬剤師をはじめ働く人を支えることを念頭に、医療関連のコラムや解説記事、取材記事の制作に携わっている。
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