本記事は株式会社ネクスウェイが提供する「医療情報おまとめ便サービス」特集2020年2月号P5-6「地域で選ばれる薬局への道 01クオール株式会社」を再構成したものです。
近隣の小児科の協力がきっかけで「子育て大学」がスタート
はじまりは、社内の女性活躍推進会議(L.A.D.Y.S会議、L:Lady 女性、A:activity 行動的、D:drive 行動する、Y:yell 応援する、S:shine 輝く)の中で、子育て世代に貢献できる薬局の役割を考えたいという声が挙がったことでした。そこで門前薬局として日頃から交流のあった年中無休の小児科クリニックの小児科・内科の医師に相談したところ、共同でセミナーを開催することに。
クオール株式会社 取締役副社長 柄澤 忍さん
春夏秋冬、季節に応じたテーマで1年間を通じて取り組もうと始めたのが「子育て大学」のきっかけでした。「大学」と称したのは、勉強会へ向かうモチベーションを想起させたかったから。高齢者向けの市民大学講座である「シニア大学」をヒントにしました。
江戸川区の西葛西店からスタートし、現在は4エリア8店舗で開催。当初は、講師の選定、会場の確保、企画の立案……分からないことだらけ。特に雪の日に参加者が1組だけだった時は、講師の方々へのご迷惑も含め認知促進による集客の重要性を痛感しました。
地域の方々との交流を通じ薬剤師自身の学びや自信に
実績を重ねるうちに、8店舗間でノウハウを共有できるようになってきました。時には、薬剤師同士がお互いの店舗を行き来し、刺激し合う姿勢も見られるように。今では、子育て経験のある薬剤師や管理薬剤師だけでなく、若い薬剤師も積極的に参加しています。薬剤師は本来、人の役に立ちたいという想いを強く持っているのだとつくづく感じますね。
参加されたお母さんたちのアンケートを見ると、日頃から勉強熱心で向上心のある方が多いのが分かりますが、彼女たちからの質問や相談を受けることで、薬剤師も服薬指導の仕方などを考え直したりするようです。常に説明を尽くしているつもりでも、交流を通じて足りないところが見えてくるのだとか。
そう考えると、実は現場の薬剤師こそ学ばせていただいているのだと実感しますね。同時に、地域に根付いた貢献活動を行い、実践的な知見を蓄えることで薬剤師としての自信も垣間見えるようになりました。
地域の健康窓口となることが選ばれる薬局になるポイント
今後も実施店舗を増やしていくため、社内報などで「子育て大学」の実態や思いを社員に伝えるとともに、Webサイトの構築や、先日行われた「リトルママフェスタ」のような子育て支援イベントへの参加など、社外への積極的な情報発信にも努めています。
私の親は薬局を経営する薬剤師で、私は日頃から街の健康相談所のようにご近所の方々が店を訪れる光景を見てきました。「子育て大学」を通じ、こうした薬局の役割を取り戻さなければいけないと強く感じています。
薬局への相談事なら無料ですし、セルフメディケーションで解決することもたくさんあると思います。「この症状は何科にかかれば良いですか?」といった相談も含め、地域の一次窓口として機能していくきっかけにしていきたいですね。それが、選ばれる薬局のポイントになるはずです。
時代とともに地域や病気は変化しても、職能の質を磨きつづけるという私たちの思いは変わらないよう、日々心がけていきたいと思います。
<港北教室での取り組み例>
さまざまな角度から子育てを支援し薬局への来局促進につなげていく
現在クオール薬局では、横浜市や江戸川区、柏市など4つのエリア、計8店舗で「子育て大学」を開催しています。2016年の開始以来、これまで65種類以上のプログラムを実施してきました。
クオール薬局港北店「子育て大学」担当の薬剤師梅田聡子さん(左)と柴田葵さん(右)
特に当薬局周辺は、子育てファミリーが多いエリア。ここに暮らす方々が安心して子育てに取り組めて、お子さんたちの健やかな成長やお母さん同士の交流につながるよう地域でサポートしていくのが「子育て大学」の大きなテーマです。
行政ですと相談内容ごとに窓口がわかれてしまいますが、私たちはできるかぎり全方位的にお悩みの解消につながるようなカリキュラムをご提供。医師や看護師、薬剤師、栄養士などの協力のもと、さまざまな取引企業のご担当者様にも参加いただいています。社会貢献だけではなく、参加する意義や安心感のあるイベントとして根付いていくことで、薬局に対するハードルを下げるきっかけになればと考えています。
月に1度の企画実施によりお母さん同士のつながりにも発展
2年程前から私たちが「子育て大学」の企画・運営担当になりました。月に1度の頻度で開催するため、2人で年間スケジュールを立てると同時に具体的なプログラムの企画、講師の依頼や会場の確保、許認可の調整などを行っています。
赤ちゃんに多い誤飲・誤食の対策をはじめ、月齢ごとに分けたプログラムや災害時対応など、実施してきた企画は多岐にわたります。私たち自身が2人の子どもを育てる母親でもあるため、お互いの経験を生かしつつお母さんたちの気持ちに寄り添えるような視点も大切にしています。
イベントの最後にアンケートを回収していますが、「この話が良かった」「役に立った」などの声を聞けたときは本当にうれしいですし、次の企画のヒントにもつながっています。何より、薬局を起点にお母さん同士がつながり、癒され、子育てのモチベーションとなっていく様子を見られることに医療人として大きな意義を感じます。
自治体などの活動支援もあり薬局に対する意識が少しずつ変化
近隣のグループ店舗をはじめ、病院の小児科や子ども支援センター、都筑区役所など、各所にチラシ・ポスターを配布させていただき、お陰様でPR活動も順調です。特に区役所では都筑区主催のイベントの度に「子育て大学」を告知していただき、地域の生活情報サイトにも掲出していただくなど、協力体制が整ってきているのも大きな支えです。
また、「子育て大学」ではOTCに関する講演も行っていることから、少しずつですがOTCの販売促進にも成果が出てきていると感じます。
これまでは薬に対する質問がほとんどでしたが、最近では健康や日常生活におけるご相談も増えてきました。今後はさらに患者さんのお悩みを総合的にヒアリングし、アドバイスや受診勧奨につなげるなど、薬局を相談の窓口にしていただけるよう努めていきたいですね。
神奈川県横浜市都筑区茅ケ崎中央36-6
出典:株式会社ネクスウェイ「医療情報おまとめ便サービス」特集2020年2月号