“かかりつけ”お薬手帳、着実に進展‐立地から「人的対応」へシフト
RAD-ARが一般市民の意識調査
くすりの適正使用協議会(RAD-AR)は、2015年度の「一般市民の医薬品および医療に関する意識の定点調査」の速報を公表した。5年前より「かかりつけ薬局」や「お薬手帳」の啓発・活用が着実に進んでいることや、かかりつけ薬局の選択理由として、これまでの立地重視から薬局での人的対応を重視する方向にシフトしているなど、一般の人たちの意識が少しずつ変化し始めていることがうかがえる傾向が見られた。
同調査は、医薬品・医療に関する一般市民の意識変化を把握するために、2000年から5年ごとに行っている。今回の調査は、15年12月15~16日にかけ、20~69歳の成人男女1500人を対象に実施した。
処方箋を出す薬局、薬のことを相談する・健康のことを相談する薬局を決めているなど、「かかりつけ薬局」を決めている人は40.7%と、5年前より7ポイント増加し、医薬品の適正使用に関する意識が、少しずつ一般の人たちに浸透していることが分かった。また、“かかりつけ”となる決め手は「スタッフの対応がよい」「GE薬を取り揃えている」「いろいろ相談できる薬剤師がいる」など、人的対応面を重視する割合が5年前より多くなった。「病院からの距離が近い」「家・職場からの距離が近い」といった立地を重視する人は減少傾向にある。
また、処方箋をきちんと指示通りに使う人は5年前より6ポイント増の42.3%だった。指示通りに使わなかった人では、余った処方薬を保存して同じ症状の時に使ったり、家族や友人に分けるなど使い回す人が38.0%と多く、特に慢性疾患で通院中の人は使い回す傾向が強かった。処方薬が余ったことを医師や薬剤師に伝えるべきと思っている人は22.5%にとどまっている。
「お薬手帳」は2人に1人が利用し、この5年間で20ポイント以上増加する一方、手帳をもらったことがない人は10ポイント減少し、着実に普及していることが分かった。媒体としては「冊子」が98.2%とほとんどを占め、スマートフォンなどの電子版お薬手帳の普及はこれからだった。
医療機関で薬の説明が書かれた印刷物を必要としている人は62.2%いた。2割近くあった「内容を改良した印刷物をもらいたい」人の6割が「家に帰ってから確認できる詳しい内容のもの」を望んでいた。
処方薬の副作用を気にしている人は39.9%で、副作用と思われる経験が「ある」人は25.7%だった。副作用発生時の相談相手としては「医師」が63.9%と多く、「薬剤師」は22.3%で、年を追うごとに薬剤師に相談する人が増加する傾向が見られた。副作用発生時に薬を飲むのを止める人は19.2%に減少していた。
医薬品副作用被害救済制度の認知度は17.2%と、5年前より3ポイント増加した。中学校で医薬品の教育が行われていることを知っている人は5年前より5ポイント増加したものの、まだ8.7%と低い状態が続いていた。
こうした結果を受けRAD-ARは、「医薬品適正使用のさらなる啓発や、“くすりのしおり”などの資材充実が必要」としている。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
くすりの適正使用協議会(RAD-AR)が2015年度の「一般市民の医薬品および医療に関する意識の定点調査」の速報を公表しました。5年ごとのこの調査、前回の調査よりも「かかりつけ薬局」「お薬手帳」の啓発・活用のポイントが上昇し、医薬品の適正使用に関する意識が一般市民へも少しずつ浸透していることがわかる結果となりました。