日本発の二重特異性抗体が登場‐23日付承認の新医薬品
帯状疱疹ワクチンも承認
厚生労働省が23日に承認した新医薬品では、中外製薬が創製したバイスペシフィック抗体(二重特異性抗体)で血友病A治療薬「ヘムライブラ皮下注」、生化学工業が開発した新規腰椎椎間板ヘルニア治療薬「ヘルニコア椎間板注用」など新規作用機序品が登場した。さらにワクチンでは、ジャパンワクチンの帯状疱疹ワクチン「シングリックス筋注用」が承認されている。
ヘムライブラ皮下注‐中外製薬
「ヘムライブラ皮下注30mg・同60mg・同90mg・同105mg・同150mg」(一般名:エミシズマブ)は、中外独自の抗体改変技術を用いたバイスペシフィック抗体の血友病A治療薬で、活性型第IX因子とX因子に結合し、血友病Aで欠損または機能異常となっている第VIII因子の補因子機能を代替する。
効能・効果は、血液凝固第VIII因子に対するインヒビターを保有する先天性血液凝固第VIII因子欠乏患者における出血傾向の抑制。重症型血友病Aの25~30%で、血液凝固第VIII因子に対するインヒビターの発現が認められており、第VIII因子製剤では治療が困難となっていた患者に対し、新たな治療選択肢を提供する。
ガラフォルドカプセル‐アミカス・セラピューティクス
「ガラフォルドカプセル123mg」(一般名:ミガーラスタット塩酸塩)は、ファブリー病に対する初の経口治療剤。ファブリー病は、先天的な遺伝子異常によりα-ガラクトシダーゼ(Gal)という酵素の働きが十分でないために、様々な症状が起こる疾患で、同剤はα-Galの構造の安定性を増し、標的細胞内の輸送を正常化することにより、本来の酵素の働きを活性化するよう作用する薬理学的シャペロンとなっている。
ヘルニコア椎間板注用‐生化学工業
「ヘルニコア椎間板注用1.25単位」(一般名:コンドリアーゼ)は、国内初となる椎間板内に直接注射する新規の腰椎椎間板ヘルニア治療薬。コンドロイチン硫酸、コンドロイチン・ヒアルロン酸の分解作用を示し、椎間板髄核中にあるグリコサミングリカンを分解して髄核の保水能を低下させ、椎間板内圧を低下させることでヘルニアの臨床症状を改善する。
全身麻酔の必要がなく、手術療法と比較して身体的侵襲が少ないという特徴を有する。効能・効果は、保存療法で十分な効果が得られない後縦靱帯下脱出型の腰椎椎間板ヘルニアとなっている。
オゼンピック皮下注‐ノボノルディスクファーマ
「オゼンピック皮下注2mg」(一般名:セマグルチド)は、週1回投与のヒトグルカゴン様ペプチド(GLP)-1アナログで、2型糖尿病の適応で承認を取得している。
シングリックス筋注用‐ジャパンワクチン
帯状疱疹ワクチン「シングリックス筋注用」は、ジャパンワクチンとグラクソ・スミスクライン(GSK)が帯状疱疹の予防を目的に開発した、従来の生ワクチンとは異なる世界初の免疫獲得に必要な抗原のみを含むサブユニットワクチン。世界18カ国の3万7000人を超える被験者が参加した第III相試験では、帯状疱疹に高い有効性が示され、4年間の試験期間で有効性が持続した。通常、50歳以上の成人に0.5mLを2カ月間隔で2回、筋肉内に接種する。
オルケディア錠‐協和発酵キリン
「オルケディア錠1mg、同2mg」(一般名:エボカルセト)は、維持透析下の二次性副甲状腺機能亢進症を適応とした経口カルシウム受容体作動薬。既存薬のレグパラ錠(一般名:シナカルセト塩酸塩)と同様、副甲状腺細胞表面のカルシウム受容体に作用することにより、副甲状腺ホルモンの分泌を抑制する。
レグパラ錠と同等の有効性を示す一方、上部消化管に関する副作用の発現頻度の減少や、他の薬剤との併用リスク軽減を実現した。
プレバイミス錠、同点滴静注‐MSD
「プレバイミス錠240mg、同点滴静注240mg」(一般名:レテルモビル)は、「同種造血幹細胞移植患者におけるサイトメガロウイルス感染症の発症抑制」の効能・効果を取得した世界初のCMVターミナーゼ阻害剤。ヒトには存在しないCMVのDNAターミナーゼを阻害することで、ウイルスの増殖を抑制する。
従来は同種造血幹細胞移植でCMV感染が確認された時点で抗ウイルス薬の投与を開始していたが、プレバイミスは感染が確認される前に予防的投与が可能になる。
ラパリムスゲル‐ノーベルファーマ
「ラパリムスゲル0.2%」(一般名:シロリムス)は、結節性硬化症に伴う皮膚病変を効能・効果としたmTOR阻害剤で、先駆け審査指定制度の対象品目。結節性硬化症は、発達障害や脳、皮膚、腎など全身の種々の臓器に腫瘍性病変を生ずる遺伝性の希少疾患で、特に顔面の血管線維腫などの皮膚病変が高頻度に出現する。現行治療法は外科手術やレーザー治療など侵襲性の高い療法であり、小児などでは施行が困難で、重篤になるまで治療とされないケースが多かった。
アジレクト錠‐武田薬品
「アジレクト錠1mg、同0.5mg」(一般名:ラサギリンメシル酸塩)は、パーキンソン病を適応とする非可逆的特異的モノアミン酸化酵素B(MAO-B)阻害薬。MAO-Bと非可逆的に結合することで、脳内のドーパミンの分解を抑制し、シナプス間隙中のドーパミン濃度を高めることにより、パーキンソン病の症状に有益な効果を創出する。世界58カ国で承認され、国内では武田が開発を行った。
タフィンラーカプセル、メキニスト錠‐ノバルティスファーマ
「タフィンラーカプセル50mg、同75mg」(一般名:ダブラフェニブメシル酸塩)、「メキニスト錠0.5mg、2mg」(一般名:トラメチニブ・ジメチルスルホキシド付加物)は、BRAF遺伝子変異を有する非小細胞肺癌治療薬の併用療法として、製造販売承認事項一部変更承認を取得した。メラノーマに続く適応症となる。NSCLC治療薬ではALKやEGFR遺伝子を分子標的とした薬剤が承認されているが、BRAFやその下流に位置するMEKを標的とする薬剤は初めて。
シグニフォーLAR筋注用‐ノバルティスファーマ
「シグニフォーLAR筋注用キット10mg、同20mg、同30mg、同40mg、同60mg」(一般名:パシレオチドパモ酸塩)は、クッシング病の適応に対する医薬品製造販売承認事項一部変更承認を取得した。先端巨大症・下垂体性巨大症に続く適応症となる。従来の用量規格に加え、10mgと30mgの2用量規格を追加した。
スージャヌ配合錠‐MSD
「スージャヌ配合錠」は、DPP-4阻害剤のシタグリプチンリン酸塩水和物(製品名:ジャヌビア錠)と、SGLT2阻害剤のイプラグリフロジンL-プロリン(製品名:スーグラ錠)を配合した1日1回1錠の2型糖尿病治療薬。アステラス製薬とMSDが開発を行った。
レンビマカプセル‐エーザイ
「レンビマカプセル4mg」(一般名:レンバチニブメシル酸塩)は、甲状腺癌や腎細胞癌に続き、「切除不能な肝細胞癌」の効能・効果で追加承認を取得した。肝細胞癌の全身化学療法の一次治療薬としては約10年ぶりの承認になる。全身化学療法歴のない切除不能な肝細胞癌を対象に標準治療薬のソラフェニブと比較した第III相試験では、無増悪生存期間について、レンビマ群が13.6カ月、ソラフェニブ群が12.3カ月と非劣性を達成している。
トレムフィア皮下注シリンジ‐ヤンセンファーマ
「トレムフィア皮下注100mgシリンジ」(一般名:グセルクマブ)は、既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症を適応症とする国内初のヒト型抗ヒトインターロイキン(IL)-23p19抗体。乾癬の病態にかかわるヘルパーT細胞17(Th17)の分化・増殖・維持に関与する、IL-23のサブユニット蛋白質「p19」を特異的に阻害し、IL-23の下流にあるTh17へのシグナル伝達を抑制する。
シベクトロ錠、同点滴静注用‐バイエル薬品
「シベクトロ錠200mg、同点滴静注用200mg」(一般名:テジゾリドリン酸エステル)は、多くの抗生物質に対して薬剤耐性を獲得した「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌」(MRSA)を適応菌種とし、深在性皮膚感染症、慢性膿皮症、外傷・熱傷・手術創等の二次感染、びらん、潰瘍の二次感染を適応症とするオキサゾリジノン系合成抗菌剤。1日1回投与の新規抗MRSA薬となっている。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
3月23日承認の医薬品の発表です。
「ヘルニコア椎間板注用」(生化学工業)、「シングリックス筋注用」(ジャパンワクチン)のほか、バイスペシフィック抗体(二重特異性抗体)で血友病A治療薬「ヘムライブラ皮下注」(中外製薬)などが承認されました。