創薬・臨床試験

来年のGPSP省令改正‐岐路に立つ「ポストマネット」

薬+読 編集部からのコメント

来年4月に予定される、「製造販売後調査及び試験の基準に関する省令」(GPSP省令)。
PMSに必要な資料の収集や作成に国の医療情報データベース(MID-NET)を活用できるようになったため、現在、製造販売後調査向けシステムで先頭を走る「ポストマネット」がどのような対応をとるのか注目されています。

“MID-NETとの共存”へ

 

富士通エフ・アイ・ピーが提供する製薬企業の製造販売後調査(PMS)向けEDCシステムでトップシェアを走る「ポストマネット」は、来年4月に予定される「製造販売後調査及び試験の基準に関する省令」(GPSP省令)の改正をどう乗り越えるか――。PMSに必要な資料の収集や作成に国の医療情報データベース(MID-NET)を活用できるようになり、ポストマネットのビジネスにも大きな影響を及ぼす可能性もある。同製品が進むべき方向性、それは“MID-NETとの共存”という打開策だ。


同社は、製薬企業向けソリューションとしてポストマネットのほか、安全性情報管理ソリューション「パーシヴ」や、PMSの進捗管理システム「ポストマウォッチ」、データセンター事業などを展開している。医薬品の製造販売後における安全性基準(GVP)、GPSPに準拠した症例対応を行う唯一のベンダーだ。主力のポストマネットは、PMS-EDC市場で約7割のシェアを占有し、ユーザー数55社、326調査での提供実績がある。PMSでEDCが普及されるようになり、実績を拡大してきた。

 

ただ、PMSを取り巻く環境は急速に変化している。かつてポストマネットが得意としてきた数万症例を対象とする生活習慣病などの大規模調査は減少し、EDC化が難しかった癌などの数百症例規模の小規模調査が増えてきた。ポストマネットの収益源がじわじわと小さくなっているのだ。

 

さらにほぼ寡占状態だったPMS-EDC市場で強力な競争相手が現れた。治験のEDC市場で大きなシェアを握る海外ベンダーの存在だ。ポストマネットは国内では標準的システムだが、海外対応は取っていない。国際共同治験の増加を背景に、“グローバル・ワン・データベース”のニーズが高まる中、日本特有のPMS市場にも参入し、攻勢を強めている。

 

対応策を発表している。その一つが創薬から育薬で存在感を強めるCROとのパートナーシップ。製薬企業からCROへの外部委託が進む中、同社はエイツーヘルスケア、イーピーエス、シミック、ACメディカル、シミックPMSの5社とポストマネットに関する提携を行った。

 

CRO経由で小規模調査に関するポストマネットの契約につながっており、これまで受注を獲得できなかった外資系製薬企業からの利用も進み始めるなど一定の成果を挙げている。システムも低コストで利用しやすくするようエンハンス化している。

 

しかし、一難去ってまた一難。来年4月にGPSP省令の改正という最大の難局を迎える。PMS-EDCでトップシェアを握るポストマネットにとっては大きな収益減につながる。

 

PMSをめぐっては、医療機関への謝礼やデータマネジメント費用、MRと内部スタッフの人件費など多額な費用がかかることが問題視され、日本の製薬企業がPMSに投じる費用が年間約1000億円に達するとの独自の試算もある。そこにMID-NETを活用していくという方向性は、ポストマネットとの衝突が避けられないという状況に直面する。

 

この危機に対し、同社はMID-NETを用いたデータベース研究とポストマネットを用いた調査は共存するべきとの方向性を打ち出す。MID-NETが市販後の再審査資料を作成するに当たって全ての有効性・安全性データを収集するのに課題があると見ている。

 

MID-NETの仕様が非公開の中で、同社がこれまで調べた範囲では、ポストマネットで調査している項目と、MID-NETのSS-MIX2標準ストレージで収集できる調査項目を比較した場合に、適合率は30~60%にとどまるという。

 

患者背景や投与情報、臨床検査値に関する情報については、どちらのシステムでも取得可能だが、医師の所見や有害事象など医師の判定を期待する項目については、テキストデータで情報を収集する項目が多く、現段階ではMID-NETによって詳細な情報を取得するのが難しいと見ている。今後、科学的根拠に基づく市販後エビデンスを収集していく必要性が高まる中、ポストマネットが支援できる領域を検討していく方針だ。

 

富士通グループの多彩な機能も生かす。大病院で約4割のシェアを握る電子カルテと、PMS-EDCを提供する企業として、電子カルテとポストマネットの連携や、治験データとの一貫性を意識したPMS-EDCデータのCDISC対応にも乗り出す。将来的には、人工知能を組み合わせ、今後も訪れる環境変化を乗り越えていく構えだ。

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出典:薬事日報

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