薬剤師会

薬局薬剤師の声かけに有用性‐COMPASS研究が論文化

薬+読 編集部からのコメント

「Pharmacology & Pharmacy」誌のオンライン版に薬局薬剤師が患者へ行うコーチングの有用性を示した論文が掲載されました。糖尿病患者に対し、薬局薬剤師が6ヵ月間にわたりコーチングで介入したところ、HbA1c値が8.7%から8.0%と大幅に下がっていたとのことです。

3分間のコーチングでHbA1c値が低下

 

生活習慣の改善に向けた支援を行う薬局薬剤師の3分間のコーチングによって、糖尿病患者のヘモグロビンA1c(HbA1c)値が低下することを示した論文が、「Pharmacology & Pharmacy」誌のオンライン版に掲載された。日本で実施された臨床研究「COMPASS」プロジェクトの成果をまとめたもの。糖尿病患者に対する薬局薬剤師の介入効果を検証した臨床研究は欧米でいくつか実施されているが、日本ではごくわずかしか存在しない。論文化により、薬局薬剤師の有用性を示した貴重なエビデンスとして活用できそうだ。


 

岡田浩氏(国立病院機構京都医療センター臨床研究センター予防医学研究室研究員)、恩田光子氏(大阪薬科大学薬学部准教授)らの研究グループが、日本調剤、クオール、サエラ薬局の協力を得て実施した。血糖コントロールの改善は糖尿病の合併症抑制につながるが、研究グループは、来局時の3分間の対話でも効果的な声かけや資料提供によって糖尿病患者の行動を変えられることや、薬局薬剤師はその役割を担えることを客観的な指標で明らかにした。

 

臨床研究は、無作為化対照試験として研究に参加した薬局を、糖尿病患者の来局時に薬剤師がHbA1c値を聞くだけの通常群と、薬局薬剤師がいくつかの介入を行う支援群に無作為に割り付けて実施された。

 

支援群の薬剤師は、事前に約6時間の講習を受けて習得した動機づけ面接の方法を活用して、糖尿病患者に関わった。

 

まず、運動の実施や節酒など生活習慣の改善目標の設定を支援した。その上で、それぞれの生活習慣の改善について分かりやすく解説した14種類の資料を、必要に応じて個々の患者に提供。運動習慣の定着につながる歩数計も配布した。

 

2回目以降の来局時には、約3分間の面談で目標の達成状況を聞き、褒めたり励ましたり、必要な情報を提供したりして、生活習慣の改善を支援した。約6カ月間、患者の来局時にこのような支援を実施した。

 

研究に参加した薬局のうち50薬局、132人の2型糖尿病患者を解析対象とし、HbA1c値の変化を比較したところ、支援群(26薬局90人)では介入前の8.7%から6カ月後には8.0%と大幅に下がっていた。一方、通常群(24薬局42人)のHbA1c値は、8.7%から8.4%に低下しただけだった。

 

また、服用する糖尿病治療薬の数を比較したところ、支援群では介入前の2.3剤から6カ月後には2.0剤に減少していたのに対し、通常群では介入前の平均2.3剤から6カ月後には2.5剤に増加していた。

 

睡眠、食事、喫煙、飲酒、運動に関する七つの健康的な生活習慣の実行率も、支援群では高まる傾向が認められた。

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出典:薬事日報

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