[メディカル版]ゾフルーザの早いウイルス減少効果‐家庭内インフルエンザ感染率を減少
インフルエンザは、12月から流行が始まり、高熱や全身倦怠感など罹患者に辛い症状を呈し、子供や老人では重症化する可能性がある。また、一旦解熱しても体内からはウイルス排出が続いており、集団感染防止のために学校や会社を一定期間休まねばならないケースもあり、看病者を含め社会経済活動に大きな影響を与えている。こうした中、長年インフルエンザの研究に携わってきた廣津伸夫氏(廣津医院院長)は、今年3月に発売された新しいインフルエンザ治療薬「ゾフルーザ」について「早いウイルス減少効果による感染率低下、単回投与の利便性、高い有効性・安全性により、インフルエンザの第一選択薬になる可能性がある」との考えを示した(塩野義製薬メディアセミナーより)
インフルエンザは、人から人へ伝播して、大小の差はあるが毎年流行し、家族内感染、学校内感染を惹起する。インフルエンザウイルスは、抗原変異により毎年少しずつ性質を変化させて流行するため、一生の間に何度も罹患したり、同じウイルスに5回感染する人もいる。インフルエンザワクチンを毎年接種しなければならない理由は、そのシーズンに流行するウイルスが毎年抗原変異を起こし、専門家がそれを予測して適応するワクチンを作成しているためである。
反復感染については、インフルエンザA(H3N2)の罹患率は、乳児は社会と接触が少ないので低い。だが、幼児期以降、集団での接触が増えるため年齢と共に上昇していく。その間、再感染も頻繁に生じているので、ウイルスは不断の変異を繰り返していると考えられる。
罹患率は、10歳を過ぎる頃から減少する。その理由は、いかにウイルスの変異が生じていても、感染の繰り返しとワクチンで免疫が誘導されるからである。だが、変異の少ない新型A/H1N1pdmインフルエンザは、学童の罹患率が低く、反復感染が少ない。
2016年には、初めて従来のワクチン(A/California)の効果の低下、家庭内感染の増加、H1N1pdmの反復感染が見られたことから、抗原性の変化が推測された。この時、スペイン風邪と同じようなHAの頭頂部に糖鎖が形成されたため、H1N1pdmはH3N2と同様に、抗原変異を繰り返しながら進化していくものと予想される。
廣津氏らは、インフルエンザA(H1N1pdmおよびH3N2)1146人、B型661人の合計1807人をindex患者とし、2次感染者を含め合計3400人の家庭内感染に及ぼすノイラミニダーゼ阻害薬4剤(ラピアクタ、タミフル、リレンザ、イナビル)の影響を観察した。
その結果、ウイルス減少効果の高い薬剤は、家庭内の1日当たりの感染率、および家族における続発感染率、感染家族の発生率を減少させる効果を示した。
一方、「先駆け審査指定制度」に認定された薬剤の中で発売第1号となったゾフルーザは、mRNA合成の開始に関わるキャップ依存性エンドヌクレアーゼを選択的に阻害してウイルスの増殖を抑制する。
従来のノイラミニダーゼ阻害薬は、既に増殖したウイルスの成熟・放出過程を抑制するのに対して、ゾフルーザはウイルスの増殖自体を抑制するのが大きな特徴だ。
ゾフルーザに関しては、インフルエンザ症状の罹病期間、ウイルスの排出停止までの時間の短縮、高い安全性などを示した成人及び青少年患者を対象とした国際共同PIII試験(T0831試験)結果が得られている。
また、小児を対象にゾフルーザの単回投与時の安全性、忍容性及び有効性を多施設共同、非盲検、非対照試験により評価した国内PIII試験(T0822)でも、インフルエンザ罹患期間の短縮効果や高い安全性が確認されている。
廣津氏は、「インフルエンザ患者の初診時には効果、安全性、利便性を考慮した薬剤の選択が重要になる」と強調。その上で、「ゾフルーザは、従来のノイラミニダーゼ阻害薬4剤に加わった新薬で、インフルエンザ治療に新たな選択肢が増えたが、早いウイルス減少効果による感染率の低下、単回投与の利便性、高い有効性・安全性により、従来の治療薬にとって代わる薬剤になる」との考えを示した。
さらに、「変異ウイルスに関しては、十分な観察、注意が必要となる」と指摘し、「動物実験段階ではあるが、H5N1やH7N9といった鳥インフルエンザのウイルスや、従来の治療薬に耐性を持ったウイルスへの効果も認められている」と紹介した。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
今年もインフルエンザ流行シーズンに突入しました。
長年インフルエンザの研究に携わってきた廣津伸夫氏(廣津医院院長)は、新たなインフルエンザ治療薬「ゾフルーザ」について「早いウイルス減少効果による感染率低下、高い有効性、安全性」など、その効果についての考えを示しています。