「一時離職薬剤師」の研修を~中小病院への再就職支援に
日本病院薬剤師会中国四国ブロック会長会議が8日に高松市内で開かれ、各県病薬の会長などが中小病院における薬剤師の人員不足対策を議論した。結婚や出産を機に女性薬剤師が病院を退職し、育児が一段落した後は薬局に再就職するケースが多いことを問題視。病院に再就職を希望しているものの、ブランクが原因となって躊躇する薬剤師を支援し、中小病院での再就職を促すために「大学病院や基幹病院が研修を行うシステムを各地で整備する必要がある」との声が上がった。
岡山県病院薬剤師会の千堂年昭会長(岡山大学病院薬剤部)は「中央社会保険医療協議会で示された資料を見ると、30歳以上から医療機関の女性薬剤師が急激に減少する。これは結婚や出産が要因だと思う。一方、40歳以上からは薬局での勤務が増加する。子育てなどが落ち着いて再就職する際に、薬局を選択していると推察できる」と言及。「病院勤務を経験した貴重な人材を失っていることになる」と問題提起した。
千堂氏は「病院で再び働きたいが、ブランクが空いているため難しいと考えている薬剤師は少なくないのではないか」と指摘。各地域の大学病院や基幹病院がブランクを埋める研修を実施し、中小病院での再就職を後押しする役割を発揮すべきと提案した。
実際、岡山大病院薬剤部は、女性医師の復職を支援する取り組みを参考に、研修の試行を開始した。千堂氏は「大学病院であれば、研修プログラムは既存の内容を流用できる。研修期間や研修内容は、希望者の経験を考慮し個別に対応すればいいのではないか」と述べ、今後県内全体での研修のシステム化を働きかける考えを明らかにした。
ブランクのほか、フルタイム勤務も病院への再就職を阻む壁になり得るが、近年は病院の勤務形態も柔軟になり、時短やパートでの勤務も増えているという。島根県病院薬剤師会の直良浩司会長(島根大学病院薬剤部)は、島根県病薬が実施した昨年度の実態調査で「島根県の約40施設のうち約2割の施設でパートの薬剤師が存在していた」と報告。柔軟な勤務が可能になっていることを示した。
日本病院薬剤師会の木平健治会長は、各地で研修会を開催する費用には「地域医療介護総合確保基金を活用できる可能性がある」と指摘。病院薬剤師の偏在について「各地域や病院でそれぞれ事情が異なるため、日病薬として画一的なことはやりづらい」とし、「診療報酬で解決の糸口を見つけたい」と語った。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
結婚や出産を機に病院を退職した女性薬剤師が、育児が段落した後に、病院ではなく薬局へと再就職してしまう件について、日本病院薬剤師会中国四国ブロック会長会議(11月8日・高松市内)における人員不足対策の議論で問題視されました。再就職を希望しているものの、ブランクが原因となり躊躇してしまうケース、フルタイム勤務が病院への再就職の壁となるケースなど、さまざまな要因が考えられますが、「各地域の大学病院や基幹病院がブランクを埋めるための研修を実施するべき」など、前向きな意見も出されました。