初回からオンライン診療~規制改革推進会議で解禁へ攻勢
医療機関で新型コロナウイルスが感染拡大する事態を避けるため、オンライン診療で対応できる範囲について検討する規制改革推進会議の特命タスクフォースが2日に議論を開始し、現在は認められていない初診患者に対する診療実施などを厚生労働省に求めた。ただ、厚労省が実施に難色を示したため、TFは再検討を要請。同日に開かれたオンライン診療の見直しに関する検討会では、医師構成員を中心に初診患者への実施に反対する意見が相次いだことを踏まえ、厚労省は「実施するにしても、かなり限定的な状況でしか使えない」との見方を示した。この結果に対して、TFは「現在の危機を踏まえたものとは全く思えない」とさらなる見直しを求めた。
3月31日の経済財政諮問会議で加藤勝信厚労相は、医療機関での感染拡大を防ぐため、初診患者も含めてオンライン診療で対応できる範囲について検討する考えを示し、規制改革推進会議に特命TFが設置された。2日の初会合でTFは、現在は認められていない急性疾患患者や受診履歴のない患者も診療できるようにし、診療報酬を対面診療と同等に扱うことなどを厚労省に求めた。
しかし、会合後に記者会見した小林喜光議長(三菱ケミカルホールディングス取締役会長、写真)は、これら要望に対する厚労省の回答について「非常に距離のあるものだった。厚労省が考える見直しでは、国民の遠隔医療を求める声に応えられないと危惧する」と不満を述べ、再検討を求めたことを明らかにした。
同日夜に開かれた検討会で厚労省は、▽慢性疾患で定期的に受診している▽過去に受診履歴がある▽受診履歴はないが、かかりつけ医から情報提供を受けている――のいずれかに当たる患者が新たな疾患にかかった場合に、オンライン診療の実施期間を限定して認めるかどうかを課題に提示。これら患者にオンライン診療を行うことに構成員から反対の声は出なかった。
ただ、過去に受診履歴がない初診患者の診療について、今村聡構成員(日本医師会副会長)は「全く診断したことがない患者に初診で投薬することは非常にリスクが大きい。最初から診療するのではなく、適切に判断する上での受診勧奨という形でやれば良い」と、オンライン診療の実施に反対する考えを示した。
島田潔構成員(板橋区役所前診療所院長)も「全く受診履歴がない人の受診は明確に反対する。オンライン診療は急性疾患の検査を含めた診察、判断、その後の治療に非常に弱い部分があり、重篤な状態を防ぐことを考えたときに大きな問題がある」と同調した。
一方で、金丸恭文構成員(フューチャー代表取締役会長兼社長)は「受診勧奨ではなく、若い人や軽症者が病院に行かない確率を上げれば医療者の負荷が減る。初診からあまり条件をつけないで診療できるようにしてほしい」と訴えるなど、複数の構成員から初診からの実施に肯定的な声も上がった。
これら意見を踏まえ、初診患者へのオンライン診療実施について厚労省は、「疾患の見逃しや重症化が多発するリスクが高いという意見が多数と受け止めた。実施するにしても、かなり限定的な状況でしか使えない」との見方を示した。
翌日のTFで同検討会の結果報告を受けた小林氏は「現在の危機を踏まえたものとは全く思えない。初会合で伝えたこちらの思いがまだ正確に伝わっていない」と厳しく指摘し、厚労省に早急に検討し直すよう求めた。
<この記事を読んだ方におすすめ>
異業種への転職をめざす薬剤師が知るべきことと、おすすめの職種
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
医療者の負荷が限界へと近づき、医療機関での新型コロナウイルス感染拡大する事態を避けるという見地で、オンライン診療で対応できる範囲について検討する規制改革推進会議の特命タスクフォース(TF)が4月2日に議論をスタート。現在は認められていない初診患者さんに対する診療実施などを厚労省に求めました。しかし、厚労省側が難色を示したためTFでは再検討を要請。仮にゴーサインが出たとしても「かなり限定的な状況でしか使えない」とする厚労省側の見方に対して、TF側ではさらなる見直しを求めるなど、緊迫する事態の中、丁々発止の状態が続いています。