ベトナムで日本型国試導入~標準薬学教育課程を整備へ
3年後に約30大学メド
ベトナムは、日本が実施している薬剤師国家試験の導入を目指す。医学アカデミーのグループ会社「薬ゼミ情報教育センター」がベトナム保健省、ハノイ薬科大学から国家試験開発の協力要請を受け、各大学でバラツキがある薬学教育カリキュラムの統一化を図り、国試のひな形となる共通卒業試験の仕組みを構築する。日本の薬剤師国試を導入するのは、アジアでキルギスに続き2カ国目となる。ベトナム国内の2大学を皮切りに、3年後をメドに約30大学で標準薬学教育カリキュラムの整備を目指す。
厚生労働省とベトナム保健省は昨年、ヘルスケア・健康分野で協力覚書を調印し、医療人材の開発などで連携を開始した。カリキュラム整備事業は、国立国際医療研究センター(NCGM)が主体となって実施する厚労省から委託された2020年度医療技術等国際展開推進事業の一環で、7月から来年2月にかけて実施される。NCGMから最大3年間にわたって助成金を受け、薬ゼミ情報教育センターが事業を進める。
ベトナムでは、医療従事者の国家試験制度が存在していない。大学薬学部は1年制、3年制、5年制と様々なコースが用意され、5年制の卒業生だけが薬剤師になれる仕組みとなる。
ただ、市中の薬局では、医師が処方箋によって管理するリスクの高い薬剤を入手できるものの、薬剤師のスキル不足や服薬指導が行われないために、薬物による重篤な副作用や抗菌薬の不適切な投与による薬剤耐性菌の出現など、健康被害が多発している。
ベトナム政府はこうした状況を問題視。医師や看護師国家試験を導入するための制度整備に加え、薬剤師国試や継続教育の質向上に向けた議論を進めている。
国際協力機構のプロジェクトに参画し、中央アジアのキルギスで薬剤師国試創設の支援を行う薬ゼミ情報教育センターがハノイ薬科大学とベトナム保健省に薬剤師国試制度のサポートを提案。各国の企業や組織から協力を持ちかけられる中、ベトナム保健省は日本で実施されている薬剤師国試の出題内容や客観的臨床能力試験(OSCE)、客観試験(CBT)などに賛同し、日本型の薬剤師国試を採択した。
今後、ベトナムで標準的な薬学教育カリキュラムを整備していく。現在は大学間の教育カリキュラムが統一されていないため、ハノイ薬科大学とホーチミン医科薬科大学と共同し、両大学の5年生約1100人を対象としたE-ラーニングの教育カリキュラムを作り上げる。
薬ゼミは、薬剤師国試予備校として積み上げた教育ノウハウや約3万問にも及ぶ試験問題などを提供。国家試験のベースとなる共通出題範囲表を作成し、2大学の教育内容で共通出題範囲表から不足する範囲は、E-ラーニングによる相互補講を行い、来年5月をメドに国家試験のパイロットとなる初の共通卒業試験を実施する。来年には5大学、22年は10大学、23年には全ての大学に拡大し、薬剤師国試の創設に向けた準備を進める。
一方、現役薬剤師に対する継続教育も支援し、医療教育の地域間格差を是正する。ベトナムでは3年間で20時間の生涯学習講座の受講が義務づけられているが、薬剤耐性菌や糖尿病をテーマに病態・薬物療法に関するE-ラーニングやウェブを活用したテストを実施し、薬剤師の継続教育でE-ラーニングの有効性を検証していきたい考え。
糖尿病領域ではNCGMの助成を受け、ベトナムで医薬品の適正使用推進活動に取り組む日本製薬工業協会の国際委員会と連携し、薬剤師の質向上を支える。
薬ゼミ情報教育センター事業戦略室国際事業部の鈴木良風氏は、「国家試験の設計図づくりに関与し、ベトナム政府が公示から試験実施まで自立的に行える体制をサポートしていきたい」と話している。
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出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
ベトナムでは、日本式の薬剤師国家試験の導入を目指します。ベトナムでは現在、医療従事者の国家試験制度が存在しません。大学薬学部は1年制、3年制、5年制と様々なコースが用意され、5年制の卒業生だけが薬剤師になれる仕組みとなっています。医学アカデミーのグループ会社「薬ゼミ情報教育センター」がベトナム保健省、ハノイ薬科大学から国家試験開発の協力要請を受け、各大学でバラツキがある薬学教育カリキュラムの統一化を図り、国試のひな形となる共通卒業試験の仕組みを構築する計画です。日本式の薬剤師国試を導入するのは、アジア圏内ではキルギスに続き2カ国目となります。