武田、エーザイが営業増益~国内製薬大手21年3月期中間決算
グローバル主力品に力強さ
国内大手製薬企業4社の2021年3月期中間決算(連結)が出揃った(表参照)。武田薬品は、シャイアー買収に伴う事業売却や関連費用の減少により大幅増益。エーザイも主力品の伸長やロイヤルティ収入が寄与し、営業増益を確保した。一方、アステラス製薬は、製品の独占販売期間終了や開発中止に伴う減損損失が響き、大幅減益。第一三共も、研究開発費の増加などで二桁減益となった。各社とも主力のグローバル製品が二桁の伸びを示す力強さを見せたが、アステラスと第一三共は減損損失や研究開発費が重荷となった格好だ。
■国内製薬大手4社の2021年3月期中間決算(単位:百万円、▲はマイナス)
売上高を見ると、武田は、消化器疾患領域で主力品の潰瘍性大腸炎治療薬「エンティビオ」が22.9%増の2070億円と大幅に伸び、酸関連疾患治療薬「タケキャブ」も日本での新規処方の拡大を背景に、14.2%増と二桁成長を示したが、希少疾患領域が9.9%減、癌領域が2.2%減、ニューロサイエンス領域も2.8%減と振るわず、さらに事業売却や円高の影響もあり、全体で4.2%の減収となった。
アステラスは、主力品の前立腺癌治療薬「イクスタンジ」が米国で成長し、15.6%増の2255億円と続伸。新製品の急性骨髄性白血病治療薬「ゾスパタ」が約2倍増と拡大し、昨年12月に米国で新発売した尿路上皮癌治療薬「パドセブ」の共同販促収入も寄与したが、過活動膀胱治療薬「ベシケア」の欧州での独占販売期間の終了に加え、日本で高血圧治療薬「ミカルディス」の販売契約が終了したことなどが響き、5.4%の減収となった。
第一三共は、グローバル主力品の抗癌剤「エンハーツ」が約3.6倍増と大きく成長し、抗凝固薬「エドキサバン」(一般名)も7.3%増と好調に推移。ワクチンを含めた国内事業が認知症治療薬「メマリー」が薬価改定などの影響で42.2%減と大幅に落ち込み、ワクチン販売提携の終了も影響して4.2%減となったものの、全体で0.1%増とわずかに増収を確保した。
エーザイも、主力品の抗癌剤「レンビマ」が全世界で成長し、35.6%増の685億円と大幅に伸長。抗てんかん薬「フィコンパ」も10・7%増と二桁成長を達成したほか、抗癌剤「タゼメトスタット」(一般名)の権利譲渡によるロイヤルティ収入も寄与し、全体で5.9%増と増収を確保した。
21年3月期中間期は、4社共に主力のグローバル製品が大きく成長し、力強さを見せたものの、武田は事業売却、アステラスは販売契約の終了といった要因が売上減に影響。第一三共は国内事業の落ち込みなどが響き、前年同期並みにとどまった。
利益面では、武田はシャイアー買収関連費用が前年同期に比べて減少し、営業利益は約2倍増を確保。エーザイも「レンビマ」の成長で売上総利益の増加が寄与し、営業利益は6.4%の増益となった。
一方、アステラスは、「イクスタンジ」の共同販促費用などが膨らんだほか、抗TIGIT抗体「ASP8374」の開発中止に伴う減損損失を計上したことが響き、営業利益は46.4%減と大幅減益となった。
第一三共も、「エンハーツ」に関する販管費が増加したほか、抗体薬物複合体(ADC)の研究開発費など費用が膨らんだ結果、営業利益は32.1%減と二桁の減益となった。
通期は、売上高でエーザイを除く3社は減収予想。武田が円高の傾向を踏まえて前提とする為替レートを変更した影響で売上高を下方修正。アステラスと第一三共も減収を見込む。
利益面では、営業利益で武田を除く3社は減益を予想。武田は買収関連費用の減少などにより大幅な増益を予想する一方、アステラスは第2四半期に計上した減損損失が影響して二桁減益、第一三共とエーザイも研究開発費の増加などにより二桁減益を見込む。
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出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
武田薬品、エーザイ、アステラス製薬、第一三共と国内大手製薬企業4社の2021年3月期中間決算(連結)が出揃いました。武田薬品は、シャイアー買収に伴う事業売却や関連費用の減少により大幅な増益。エーザイも主力品の伸長やロイヤルティ収入が寄与し、営業増益を確保しています。一方、アステラスと第一三共は減損損失や研究開発費が重荷となった格好。アステラスは製品の独占販売期間終了や開発中止に伴う減損損失で大幅減益。第一三共も、研究開発費の増加などで二桁減益となりました。