21年度薬価改定の骨子案を次回提示へ~薬価専門部会で厚労省
厚生労働省は12月14日の中央社会保険医療協議会薬価専門部会で、次回の部会に2021年度薬価改定の骨子案を提示する考えを明らかにした。部会は12月9日からこの日まで、関係業界のヒアリングも含め3回にわたって検討を重ねてきたが、医療機関経営への影響を懸念して限定的な改定にとどめるよう求める診療側と、国民負担軽減の観点から幅広い品目を対象に薬価改定を行うよう求める支払側の意見の隔たりは依然として大きい。
9日の部会では、厚労省が改定品目の対象範囲と医療費への財政影響について4つのケースで試算した資料を提出した。それによると、①市場実勢価格と薬価の乖離率が平均乖離率の2倍以上の品目が対象の場合/対象品目数3200品目(全品目の約2割)/うち新薬品目数2品目(全新薬の0.1%)/医療費への影響額-1200億円、②平均乖離率の1.5倍以上/5300品目(約3割)/39品目(2%)/-2100億円、③平均乖離率の1.2倍以上/7100品目(約4割)/196品目(9%)/-3000億円、④平均乖離率の1倍超/8700品目(約5割)/476品目(21%)/-3600億円、となっている。
■業界と診療側は医業経営への影響が最小となる改定で意見が一致
11日は関係業界からのヒアリングを実施。この中で日本製薬団体連合会、米国研究製薬工業協会、欧州製薬団体連合会の3団体は、21年度の中間年薬価改定について、▶薬価改定の対象範囲は乖離率が全ての既収載品目の平均乖離率よりも著しく大きい品目に限定する、▶薬価改定時のルールの適用は実勢価改定に連動するルールと、実勢価改定に連動してその影響を補正するルールのみとする、の2点を要望した。
こうした業界の要望を診療側は支持。14日の議論で松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は、改定対象品目について、「新型コロナウイルス感染症に対応する医療機関などへの影響を最小限にするためにも、医療費への影響の総額を勘案して、平均乖離率の2倍以上の品目に限定すべきだ」とし、薬価改定の適用ルールに関しても、実勢価改定に連動したルールに限るべきだとの認識を改めて示した。
■平均乖離率の1倍未満の品目も改定対象に追加を-支払側
一方、支払側は厚労省の4つの財政試算のいずれも、国民負担の軽減の観点からは不十分とし、平均乖離率の1倍未満の品目まで対象に含めるべきだとの主張を展開している。幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、「薬価制度の抜本改革の骨子(17年12月)では、(改定対象品目を)できる限り広くするのが適当としているにもかかわらず、平均乖離率の1倍超の場合でも対象品目は全品目の半分にすぎない。1倍未満の品目を対象にすることも検討するべきだ」と訴えた。吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)は、踏み込んだ議論が行えないまま時間切れとなったことに不満感を示し、「これから決定していく中間年のルールはあくまで今回限りの特例であり、次回の中間年改定のあり方についてはゼロベースでしっかり議論することを約束していただきたい」と要請した。
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出典:Web医事新報
薬+読 編集部からのコメント
12月14日の中央社会保険医療協議会薬価専門部会にて、次回の部会で2021年度薬価改定の骨子案が提示される旨が厚労省より明らかにされました。今月は関係業界のヒアリングを含め3回の検討がされましたが、医療機関の経営への影響を懸念して限定的な改定にとどめようとする診療側と、国民負担軽減の視点から幅広い品目を対象に薬価改定を行うよう求める支払い側の意見の差が改めて浮き彫りとなりました。コロナ禍で医療機関の経営が厳しくなるなか、どのような薬価改定案が提示されるのか、動向が注目されます。