宿泊療養者のコロナ死抑制~オンライン診療で一元管理【岡山大学病院】
岡山大学病院は昨年11月以降、宿泊療養施設の新型コロナウイルス感染者にオンライン診療を行う体制を構築し、重症化リスクを早期に把握して同院への入院につなげている。体制構築に関わった薬剤師の渡邉暁洋氏(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科災害医療マネジメント学講座)は、宿泊療養から入院までを一つの病院が一元管理することで、「宿泊療養施設での死者数を0人に抑えられている」としている。
岡山県は昨年7月から、新型コロナに感染した軽症者を受け入れる宿泊療養施設の運用を開始。当初は岡山県医師会がシフト制で療養者の電話相談を行っていたが、昨年11月以降は岡山大病院高度救命救急センターが担当。療養施設内のフロアに設けた診察室と同センターをビデオ会議システム「Zoom」でつなぎ、オンライン診療を行う仕組みを構築した。
どの宿泊療養者にオンライン診療を行うかは、健康観察シートに記録した情報をもとに話し合って決めている。まずは体温37度以上、酸素飽和度94%以下で有症状の療養者をリストアップ。その中からリスクの高い療養者を選別し、同センターの医師がオンライン診療を実施する。必要に応じて同院への入院へとつなげて重症化を抑えている。
オンライン診療時に投薬が必要な場合には、地域の薬局に処方箋をFAXや郵便で送信。薬局薬剤師は宿泊療養所に薬を配送し、オンラインで服薬指導を行う。
昨年11月から今年5月末までの宿泊療養者数は延べ1855人。768回のオンライン診療を行い、155人の療養者が入院での治療に移行した。他地域では宿泊療養施設で待機中に死亡する症例が報告されているが、岡山県では宿泊療養施設での死亡者数は0人で推移している。
一つの病院が宿泊療養から入院までを一元的に管理するのは全国的にもあまり例がない。
岡山県から患者搬送コーディネーターの委嘱を受け体制構築に関わった渡邉氏は、この体制によって「重症化の早期発見や不要不急の医療機関の受診回避につながった」とした上で、「コロナ死を回避し、有限である医療資源の適切な利用につながっている」としている。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
2020年11月以降、宿泊療養施設の新型コロナウイルス感染者にオンライン診療を行う体制を構築している岡山大学病院では重症化リスクを早期に把握して同院への入院につなげています。この体制構築に関わった薬剤師・渡邉暁洋氏(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科災害医療マネジメント学講座)は、宿泊療養から入院までを一つの病院が一元管理することで、「宿泊療養施設での死者数を0人に抑えられている」としています。一つの病院が宿泊療養から入院までを一元的に管理するのは全国的にもあまり例がありません。