SNSで副作用兆候検出~24品目対象に試行調査開始
医薬品医療機器総合機構(PMDA)は今年度、発売直後の新薬などを対象に、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を安全対策の一環として活用するための試行調査を開始する。SNS上の副作用情報データを効率的に抽出し、副作用の兆候となる安全性シグナルとして早期に検出できるかSNSの活用可能性を模索したい考え。現在、調査委託業者を入札している段階にあり、6月には事業者が選定される予定。24品目程度を対象に6月から12月まで調査を行い、有用性を評価する。
PMDAは、2018年度から患者副作用報告制度をスタート。患者を安全対策に組み入れた取り組みに着手したが、20年度の医薬品副作用報告を見ると、製薬企業からの報告が82%と多くの割合を占め、患者副作用報告は0.2%にとどまっている。
患者が手間をかけて副作用を報告しても、役に立った実感が得にくい労力対効果の問題や、情報量や医学的正確性など報告内容に限界があることなどが挙げられている。
そこで、従来とは異なる安全性シグナルソースとしてSNSに着目した。新型コロナウイルス感染症の影響で製薬企業からの迅速な情報収集が困難となっている一方、患者や医療関係者により医薬品副作用情報がSNSに発信される行動が拡大しつつある。
SNSは情報量が限られ、内容に限界があるものの、報告に至らなかった患者・医薬関係者の訴えが含まれ、投稿数や投稿内容の大きな変化や副作用発生状況を早期に捉えられる可能性もあることから、SNSの活用可能性を調査することを決めた。
現在、SNS分析サービスを提供する事業者を対象に調査委託業者の入札をかけている段階にある。事業者選定後、PMDAから事業者に試行調査の対象品目となる24品目を提示し、それぞれの薬剤で安全性に関連した情報を抽出してもらい、安全性シグナル検出ツールとしての有用性を評価する。期間は6月から12月までの半年間。年内には調査結果の報告を行う計画である。
対象となる24品目について、医薬品安全対策第1部長の堀内直哉氏は「使用者数が急激に増え、安全性シグナルが出やすい発売後早期の医薬品を対象に安全対策を高度化させたい。SNSの活用にも得手不得手があり、患者自身が副作用を自覚しやすい安全性所見が取れる薬剤が中心になる」との考えを明らかにした。
SNSを活用した市販後安全性監視をめぐっては、国際的に議論が進められており、ICH-E2D(R1)のステップ1段階にある。国内製薬企業の一部でも上市後の安全性監視ツールとして試行的に導入する動きもある。
SNSから得られた副作用情報の信頼性が不明確であるのも事実で、堀内氏も「SNSが安全対策のツールとしてどこまで有用であるかはまだ分からない」と話す。
しかし、患者の訴えを医療関係者が聞き、製薬企業が報告を行う手法は情報の伝達に時間がかかるのに対し、SNSはリアルタイムに情報を拾い出すことができるため、「より速く安全対策措置を講じることができ、情報としてもプラスアルファすることで質の面でも期待できるのではないか」と語る。
今回の試行調査結果を踏まえ、次年度の事業計画を検討する考えだ。試行調査では人がスクリーニングを行うが、将来的にはロボット技術のRPAや人工知能(AI)の技術を用い、大量のつぶやきから安全性シグナルと関連性が高いキーワードを自動抽出し、継続的に一定のコストで安全性シグナルを検出できるかを検証していく構想もある。
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出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
今年度、PMDA(医薬品医療機器総合機構)は発売直後の新薬などを対象に、SNSを安全対策の一環として活用するための試行調査をスタートします。現在、調査委託業者を入札している段階にあり、6月には事業者が選定される予定。24品目程度を対象に6~12月まで調査を実施したうえで有用性を評価します。SNS上の副作用情報データを効率的に抽出し、副作用の兆候となる安全性シグナルとして早期検出できるかSNSの活用可能性を模索したい考えです。