伊藤室長「重複投薬削減効果を検証」~電子処方箋のモデル事業【厚生労働省】
厚生労働省医薬・生活衛生局総務課の伊藤建電子処方箋サービス推進室長は本紙の取材に、全国4地域で10月末から始まる電子処方箋のモデル事業について、電子処方箋の導入により処方・調剤段階での重複投薬を回避し、薬剤費削減効果を創出したい考えを示した。来年1月の運用開始前にモデル事業で抽出した課題等を公表し、薬局・医療機関で速やかな電子処方箋の導入につなげる方針だ。
来年1月に運用開始予定の電子処方箋では、リフィル処方箋、トレーシングレポート、院内処方等は取り扱いの対象外となっている。来年度予算概算要求では「電子処方箋の環境整備」に約14億円を計上。10月末から1年間かけて実施するモデル事業では、山形・酒田地区など4地域を選定した。
伊藤氏は、選定理由について「門前だけで実施してもあまり意味がなく、電子処方箋サービスでもある程度地理的な広がりをもってしっかりと成立していることを見せるのが大事だ。チェーン薬局や個人経営の薬局、大病院、診療所が散在し、面的な取り組みができる地域を探した」と話す。
まずモデル事業でシステムに問題がないかを最終確認し、患者ごとのアプローチや薬局における好事例などを収集して課題を整理した上で、運用開始前までに対外的に公表する考え。
紙の処方箋で一定程度発生する重複投薬については、電子処方箋導入により件数削減効果を検証する。重複投薬のチェックについては、同一成分同一経路である医薬品との重複がないかを確認する仕組みとなっている。
伊藤氏は、「処方前と調剤の段階に重複投薬のチェックとして鳴るアラート機能が処方行動にどう影響を与えたかを定量的に示せれば」と語る。本格運用開始と同時に電子処方箋サービスの導入を促していきたい考えだ。
来年度予算ではモデル事業のほか、電子処方箋の機能拡充にも重点配分する。伊藤氏は、「リフィル処方箋、処方箋をクラウド上で保存するサービス、民間の電子署名などに対応する予算なので、機能拡充を順次進めたい」との考えを示す。
電子処方箋と電子お薬手帳アプリが連携した機能拡充についてもモデル事業で先行的に検討する方針である。年度内にお薬手帳のガイドラインを作成する予定で、電子処方箋の運用開始と同時に連動して使用できるようにする。
そのほか、予算には薬剤師等の資格を証明するHPKIカードの費用負担、システムの改修費用など薬局等に対する支援も含まれるとして、オンライン資格確認の導入タイミングが未定の薬局に対して可能な限り早期に導入するよう求めていく。オン資も「導入率3割弱の現状を何とか引き上げたい」と話す。
電子処方箋の電子署名方式にも言及した。現在、HPKIカード、クラウド型電子署名など民間の電子署名サービス、マイナンバーカードの3種類の方法がガイドラインで示されているが、伊藤氏は「今利用できるのはHPKIカードのみだ。民間の電子署名サービスは今秋をメドにサービスの申請を受け付けるが、薬剤師等の資格を署名に紐付ける必要があり、どう紐付けるかは外部機関の評価が必要」と話している。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
厚生労働省は、全国4地域で10月末から始まる電子処方箋のモデル事業について、電子処方箋の導入により処方・調剤段階での重複投薬を回避し、薬剤費削減効果を創出したい考えを示しました。来年1月の運用開始前に、10月末から1年間かけて実施するモデル事業で抽出した課題等を公表し、薬局・医療機関で速やかな電子処方箋の導入につなげる方針です。