重複投薬の検知8000件超に~電子処方箋モデル事業
厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会が12日に開かれ、電子処方箋のモデル事業開始後2カ月半で重複投薬等の検知件数が8000件を超えたことに対して件数の多さを指摘する声が上がった。運用開始後に患者とのトラブルを避けるため、重複投薬をチェックすることを丁寧に説明する必要性を強調する意見なども出た。
厚生労働省はこの日の部会で、電子処方箋の運用状況を報告。昨年10月末から全国4地域の薬局・医療機関で始まったモデル事業について、今月6日時点で薬局31施設、医療機関7施設の計38施設が参加していると説明した。処方箋登録件数は6万5184件、調剤結果登録件数は2万5057件の計9万0241件に上った。
そのうち、重複投薬等のチェック実施件数は、医療機関では10万4105件実施し、3812件の重複投薬等を検知。薬局では5万1707件実施し、4337件の重複投薬等を検知した。
これに対し、花井十伍委員(ネットワーク医療と人権理事)は「モデル事業でこの数字なら、日本全体ではどうなってしまうのか。中央社会保険医療協議会の支払側が見たらひっくり返るものだ」と指摘。茂松茂人委員(日本医師会副会長)も、「重複投薬がこれだけあるので検証をしっかりと実施し、どのようなことが行われているのか報告してほしい」と求めた。
医薬・生活衛生局総務課の伊藤建電子処方箋サービス推進室長は、「重複投薬の中身についてはまだ限定的な施設、期間が対象なので詳細を精査したい」と応じた。
山口育子委員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)は、26日予定の運用開始後に重複投薬のチェックに同意しない患者が現れることを想定し、「同意していないのになぜ重複が分かるのかと医療機関などでトラブルになると思う。特に初期段階では各施設で丁寧な説明が必要になる」とした。
また、森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、有事に対応できる相談窓口を設置して運用改善につなげることを求めたほか、「電子処方箋に対応できるレセコンの準備ができているベンダーはほぼない。現場が本稼働を迎えられるようベンダーに早急な環境整備を働きかけてほしい」と訴えた。
厚労省の関係部局間の連携が十分でないとして、伊藤由希子委員(津田塾大学総合政策学部教授)は「それぞれが他の動きを知らない状態だ。結果的に患者の処方が改善されるような質的な効果が重要だが、現状ではその部分が見えづらい」と指摘した。
山口氏も、医政局が所管し、医療機関等の機能を都道府県のホームページで案内する医療機能情報提供制度の報告項目の候補に電子処方箋が含まれていないとして、「医政局と医薬・生活衛生局の連携が取れていないと思うので、項目に入れてほしい」と求めた。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
電子処方箋のモデル事業開始後、2ヶ月半で重複投薬の検知件数が8000件を超えたことが明らかになりました。1月12日の厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会において件数の多さを指摘する声が上がっており、運用開始後に患者さんとのトラブルを避けるため、重複投薬をチェックすることを丁寧に説明する必要性を強調する意見も出ました。