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薬学生の「社会人基礎力」診断~長期に活躍する人材養成

薬+読 編集部からのコメント

マイナビが職場等で社会人に必要な基礎的スキル「社会人基礎力」を診断するサービス「適性診断MATCHplus(マッチプラス)」において、2022年5月より薬学生向けに解説内容をアップデートしたものを提供しています。薬剤師の就職で対人能力が重視される傾向が強まる中、すでに薬学部のある大学十数校ほどが導入を予定しており、各大学の社会人基礎養成講座などで活用してもらい、就職後も長く現場で活躍できる人材の育成に役立てたい考えです。

薬剤師の就職で対人能力が重視される傾向が強まる中、大手人材サービス会社のマイナビは、職場等で社会人に必要となる基礎的なスキルとなる「社会人基礎力」を診断するサービス「適性診断MATCHplus(マッチプラス)」について、薬学生向けに解説内容をアップデートして昨年5月から提供している。診断結果から「主体性」や「課題発見力」など仕事をする上で重要になる能力要素を確認でき、能力開発に向けて何に取り組むべきか助言する。既に薬学部のある大学十数校ほどが導入を予定しており、各大学の社会人基礎養成講座などで活用してもらい、就職後も長く現場で活躍できる人材の育成に役立てたい考えだ。

 

社会人基礎力は、就職後に身につけておくべき能力水準について、企業側と学生側の認識の違いを埋めるため、経済産業省が2006年から提唱しているもの。「職場や地域社会で多様な人々と仕事をする上で必要とする基礎的な力」と定義し、「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」の三つの能力で構成され、各能力のもとには主体性、課題発見力、発信力など12の能力要素を置いている。

 

マイナビは薬学生向けに就職支援サービスを展開してきたが、就職後も長く活躍できる人材育成を支援するため、社会人基礎力の診断を含め自己分析が可能な適性診断ツール「マッチプラス」を提供し、薬学生向けにも実習や実務に落とし込んで解説している。

 

学生は診断項目に回答することで、自身のパーソナリティの特徴を掴めるほか、社会人基礎力項目については主体性や課題発見力など12の能力要素をどの程度満たしているか確認できるのが特徴だ。12の能力要素を身につけるために必要な取り組み例、実務実習で心がけること、薬剤師業務の事例を一覧表で示しており、診断結果と照らし合わせることで、能力開発のために何をすべきかを明確にした。薬学生の就職に特化した適性診断サービスの提供は業界でも珍しい。

 

例えば、「主体性」の能力開発のために望ましい実務実習の態度では、「習得していない業務・知識を理解し、指導薬剤師に指導をお願いする」と例示した。一方、主体性の能力開発のために日頃から意識することとして「時代の流れに応じて必要となる知識や技術を自発的に取り込む」との行動を求めている。

 

同社がサービス提供を開始した背景には、薬学生の就職活動が売り手市場ではなくなっているのが大きい。企業、病院等の採用ニーズは依然として高いが、採用側が個人の資質に注目する傾向が強まっており、従来であれば採用されていたタイプの学生が不採用となる事例も見られるようになっている。

 

また、大学では面接時の対応や書類選考を通過しやすいエントリーシートの書き方といった就職活動に特化した対策は充実しているものの、学生が社会人としてどんなキャリアを描きたいかに着目した指導は比較的手薄な現状にある。加えて、薬学教育モデル・コア・カリキュラムが示す「薬剤師として求められる基本的な資質・能力」に照らし合わせてみても、社会人基礎力の向上は必要としている。

 

メディカル事業本部HRソリューション統括本部企画広報統括部の末吉夢大統括部長は、「薬剤師資格があれば良いという時代から、採用後に活躍できる人材の要件が徐々に設定されている印象だ。学生は、従来の対策ではこれまでのように望み通りの就職ができない傾向が続くのでは」とした上で、採用側が学生側に求める能力は社会人基礎力と関連するものが多いと分析する。

 

同社は、診断結果を各大学の社会人基礎養成講座や個別面談などで活用し、学内での活動や課外活動、実務実習や就職活動を通じて薬学生の行動や態度がどのように変化したかを確認するために用いることなどを提案している。

 

既に昨年5月から1校で導入され、今後導入予定の大学も十数校に上る。導入済みの大学では、薬局・病院の実務実習に入る5年生を対象としているが、3年生や4年生など低学年からの活用を検討している大学もあるという。末吉氏も、「就職に対する意識づけはもちろん、人生100年時代におけるキャリアデザインを目的としているので、低学年のタイミングで取り入れても良い。学生生活においても何を頑張れば良いかのヒントとなれば」と同サービスの意図を語る。

 

今後の展望として、導入済みの大学から診断後の学生の変化などをフィードバックしてもらい、サービス内容の改善につなげたい考えだ。

 

近年、平均寿命が延伸している状況や社会情勢の変化を踏まえ、「ライフステージの各段階で活躍し続けられるために求められる力」と社会人基礎力が再定義された。一方で、新卒薬剤師の1割程度が就職後1年以内に離職している現実もある。

 

末吉氏は、「従来の就職マッチングを超え、就職後も活躍できる人材を育成する観点でサービス提供に取り組んでいきたい。離職の理由は様々だが、在学時に自身のキャリアをしっかりと見据えた上での就職先選びであったかどうかの影響は大きいので、後ろ向きの理由による離職が少なくなれば」としている。

 

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出典:薬事日報

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