医療

薬剤師介入の睡眠改善検証~和医大薬学部・岡田教授ら、ランダム化比較試験実施へ

薬+読 編集部からのコメント

薬局薬剤師が短時間に関わり、不眠原因となる生活習慣や認知の適正化を支援することが睡眠改善につながるかどうかを評価する試みが実施されます。その世界でも例のない薬局薬剤師の睡眠衛生指導による睡眠改善効果を検証するランダム化比較試験「COMPASSインソムニア」では、睡眠導入薬を処方された患者60人を対象に、介入群30人と対照群30人に分けて比較します。

薬局薬剤師の睡眠衛生指導による睡眠改善効果を検証するランダム化比較試験「COMPASSインソムニア」を岡田浩氏(写真㊧=和歌山県立医科大学薬学部社会・薬局薬学研究室教授)らの研究グループが計画している。薬局薬剤師の短時間の関わりで、不眠の原因となる生活習慣や認知の適正化を支援することが睡眠改善につながるかどうかを評価する。世界でもこうした研究は他にない。5月末頃の倫理審査で承認されれば実施に移し、来年に結果を報告する計画だ。

睡眠導入薬を処方された患者60人を対象に、介入群30人と対照群30人に分けて比較する。薬剤師は月に1回、処方箋持参時などに患者に面談し、介入群では患者との短時間の対話の中で、チェックリストを用いて不眠の原因となる生活習慣や考え方を聴き取る。不眠につながる原因や対策を解説した約10種類の資材の中から、患者に応じた資材を渡して説明し、改善につなげてもらう。一方、対照群では通常の服薬指導を行う。

 

両群の睡眠状態の評価には、パラマウントベッド製の睡眠センサー「眠りSCAN」を用いる。ベッドのマットレスの下に敷いておくと脈拍や体温、体動などを測定し、睡眠の時間や質を評価できるもの。介入群の患者には、来局時に眠りSCANの睡眠評価レポートを提供した上で、「寝つくまでの時間が長いので、眠くなってから床についた方が良い」などの具体的な生活習慣のアドバイスを送る。対照群では評価レポートを提供するだけにとどめる。

 

3カ月間の介入で睡眠効率や睡眠時間がどれだけ改善したかを両群で比較し、薬剤師の介入効果を検証する。質問表を用いた患者の主観的な睡眠状態の評価も行い、比較する予定。

 

薬剤師の介入は、不眠への効果が認められている認知行動療法の手法を応用したもの。眠気がないのに眠ろうとしてベッドに入ったり、寝つきを良くしようと寝酒をしたりする行動は、かえって不眠を助長したり、睡眠の質を悪化させたりする。

 

必ず8時間は眠らなくてはならないなどと身構えることも不眠を促す。生活習慣や睡眠に対する考え方を改めてもらうと、睡眠の改善につながる場合がある。

 

5月末頃に倫理審査を受け、承認されれば6月から薬局薬剤師の募集や患者登録を開始する。研究に参加する薬局薬剤師には複数回の教育機会を設け、短時間で実施可能な睡眠衛生指導の手法を学んでもらう。年内に患者への介入を終えて、来年1月以降にデータ解析を行い、来春以降に結果を発表する計画だ。研究意義が認められて3年間の科学研究費を取得しており、今年度が2年目になる。

 

岡田氏は、「薬局薬剤師として働いていた時に患者さんから『睡眠薬を飲んでいるが眠れない』『睡眠薬を減らしたい』などの相談をよく受けた。話を聞くと不眠を助長する生活習慣や認知があり、その改善を提案したところ、アウトカムが良くなる事例を多く経験した」と振り返る。

 

これまで一連のCOMPASS研究で、糖尿病や高血圧患者を対象とし、薬局薬剤師の介入効果を示すことに取り組んできた。今回の研究でも、薬局薬剤師の潜在的な力を目に見える形で明らかにしたい考え。

 

同研究室助教の鈴木渉太氏(写真㊨)は「技術の発達で、睡眠状態を容易に評価できるなど、薬局薬剤師の介入研究を行いやすい時代になった。今後、ウェアラブルデバイスの拡大も見込まれる」と語る。

 

岡田氏は「どんな疾患でもそうだが、患者さんは疾患の改善に向けて、自分ができることは何かを知りたがっている。薬剤師はそのニーズに合った知識やスキルを意識して身に付けてほしい。研究にはそのような薬剤師を育成する狙いもある」と話している。

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出典:薬事日報

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