日本薬系学会連合が発足へ~社会に薬領域の情報発信
薬に関係する複数の学会が集まって社会への情報発信や意見表明を行う「日本薬系学会連合」が7月に発足する。日本薬学会と日本医療薬学会が中心になって約2年前から設立に向けた検討を重ねてきたもの。1日にオンラインで開いた設立委員会で事業内容、会費算出方法等を提示し、各学会に参画を呼びかけた。6月9日までに参画の可否を各学会の理事会等で決定するよう求めている。既に医学や歯学、看護学では同種の連合体が形成されており、薬学も足並みを揃える。
7月に東京で設立総会
日本薬系学会連合は、薬に関係する各種学会の連合体として社会に役立つ情報や声明を発信するプラットフォームの役割を担う。ニュースレター発行、ウェブサイトでの情報提供、シンポジウムやフォーラムの開催等を通じて、社会に薬領域の理解を深めてもらうほか、各学会の意見を集約した声明を発出して社会に訴える。薬領域の関連学会が連合となることで、社会への発信力が高まる。
内部では、会員数の減少など各学会が抱える課題を共有。委員会活動の一つとして、課題解決策を学会の枠を超えて話し合う場を設ける。
参画を決定した学会が集結し、7月3日に東京渋谷の長井記念館で設立総会を開催する。当初は任意団体で立ち上げ、早期に一般社団法人に切り替える計画である。
総会では会則や事業、予算などを審議する。日本薬学会、日本医療薬学会、他の学会から十数人の理事を推薦してもらう予定。会長候補者には、日本薬学会元会頭で顧問の高倉喜信氏(写真=京都大学副学長・白眉センター長)の名前が挙がっており、副会長には2人が就任する見通し。
基礎系各分野の学会や、薬剤師の会員が多い臨床系の各学会など、多数の学会に参画を呼びかけている。薬学研究者が会員の中に存在し、学術活動を行う学会であれば、今回の検討に加わっていない学会でも幅広く連合に参画してほしい考えだ。日本薬剤師会などの職能団体は会員の対象外となっているが、連携を期待している。
どれだけの学会が参画するかについては、各学会の理事会決議に委ねられるため明確ではないが、一部の学会は前向きな姿勢を示している。
発足のきっかけとなったのは、2020年12月の共同声明。日本医学会連合、日本歯科医学会連合、日本薬学会、日本看護系学会協議会が連名で、日本学術会議の新規会員任命に介入した政府を批判した声明を発出した。この声明を機に医学、歯学、看護学の3領域に比べ、薬学だけ連合体がないことが課題として浮かび上がった。
当時、日本薬学会の会頭を務めていた高倉氏の発案で、薬学領域の連合体形成に向けた検討を開始し、2年以上かけて丁寧に議論を重ねてきた。
まず、臨床の薬学研究を主導する日本医療薬学会に打診。2学会で2回のワーキンググループを開き原案を作成し、検討に加わる学会を増やして2回の会合を開き、内容を深めた。
さらに、多数の会員候補学会に打診し、22年9月と10月、23年3月と検討を重ね、1日の会合で最終案を提示した。参画の可否について6月9日までの返答を求めている。
高倉氏は「専門分野が細分化し発展しているが、その一方で、薬学全体で横串を指して社会に意見を言う場がない」と指摘。「全体で解決すべき課題もあるため、薬に関係する学術団体が広く連携するプラットフォームを立ち上げたいと考えた」と話している。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
7月に「日本薬系学会連合」が発足します。これは薬に関係する複数の学会が集まり社会への情報発信や意見表明を行い、社会に役立つ情報や声明を発信するプラットフォームの役割を担うものです。約2年前から日本薬学会と日本医療薬学会が中心になって設立に向けた検討を重ねてきました。5月1日の設立委員会(※オンライン開催)で事業内容、会費算出方法等が提示され、各学会に参画を呼びかけました。