【薬事検討会が初会合】企業判断で小児薬開発計画~成人用開発時に策定促す
厚生労働省の「創薬力の強化・安定供給の確保等のための薬事規制のあり方に関する検討会」は10日に初会合を開き、小児用医薬品の開発促進に向けた仕組みとして、成人用の開発時に企業判断で小児用の開発計画を策定し、医薬品医療機器総合機構(PMDA)が確認する厚労省案を大筋で合意した。日本製薬工業協会の構成員から「企業に小児用医薬品の開発計画策定を促すインセンティブが明確にならないと提案に賛成できない」との意見が出たため、小児用医薬品開発のインセンティブに対する考え方については今後の検討会で示す方向だ。
同検討会は、「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」の取りまとめで指摘されたドラッグロス問題の解消や、安定供給の確保、小児用医薬品開発の促進等を図るため、薬事規制のあり方を検討していく。月に1回のペースで開催し、12月から年度内に取りまとめるが、予算に関連せずに運用を開始できる検討課題は取りまとめを待たず実施する方針だ。
この日の初会合では、小児用医薬品の開発を促進する仕組みについて欧米同様に小児用の開発を義務付けすべきとの意見も指摘される中、厚労省は「成人用医薬品の開発が滞る可能性がある」と指摘。新有効成分、新効能の医薬品については、成人用の開発時に企業判断で小児用の開発計画を策定し、PMDAが確認する仕組みを設けることを提案した。確認された計画については必要な準備を進めた上で、治験届を提出することとした。
厚労省の提案は大筋で了承されたものの、企業の開発計画を促すインセンティブを別枠で検討する方向性に対しては、柏谷祐司構成員(日本製薬工業協会薬事委員会委員長)が「再審査期間延長や治験環境の改善などのインセンティブを明確にしてもらわないと、企業として何をどこまでできるかはっきりしない。今回の検討に先立ってどのようなインセンティブを考えているのか示していただきたい」と主張した。
眞島喜幸構成員(日本希少がん患者会ネットワーク理事長)も、「小児用医薬品の開発を義務化ではなく任意とするのであれば、様々なインセンティブについて検討していただいて、それを俎上に上げて議論してもらえるとありがたい」と同調した。
これに対し厚労省は、「インセンティブには様々な可能性があり、例えば薬価は中央社会保険医療協議会のように別の会議体が必要になるので現段階で回答が難しい」と明言を避けた。インセンティブに対する考え方を整理し、後日の検討会で提示する方針だ。
既承認医薬品については、特定用途医薬品指定制度を引き続き活用しつつ、さらなる活用に向けた制度のあり方を検討することとした。構成員からは「特定用途医薬品の適用事例が1件しかないため、もっと活用しやすくすることが必要」との意見が相次ぎ、制度の見直しを求める声も出た。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
7月10日に厚労省の「創薬力の強化・安定供給の確保等のための薬事規制のあり方に関する検討会」が初会合を開催。小児用医薬品の開発促進に向けた仕組みとして、成人用開発時に企業判断で小児用の開発計画を策定し、医薬品医療機器総合機構が確認する厚労省案を大筋で合意しました。小児用医薬品開発のインセンティブに対する考え方については今後の検討会で示される方向です。