【石川県薬など】能登北部で薬局の被害大~医薬品供給体制確保急ぐ
能登半島地震を受け、石川県能登北部地域の薬局を中心に建物の全壊など大きな被害が生じているようだ。厚生労働省が5日時点で公表した報告書によると、薬局関係では石川県52件を含む63件の被害が報告され、そのうち26件が営業できない被害であったことが判明。道路の寸断で卸からの医薬品も薬局に届かず、薬局に備蓄している医薬品で凌がなければならない厳しい状況にある。石川県薬剤師会は、日本薬剤師会に対してモバイルファーマシーの出動と薬剤師ボランティアの派遣を要請し、行政とも連携しながら医薬品提供体制の確保を急ぐ考えだ。
5日午前7時時点の被害状況は、薬局の被害件数が新潟県2件、石川県52件、富山県9件の計63件。営業できていない薬局は新潟県新潟市1件、石川県輪島市や七尾市などで25件の計26件が報告されている。
日本保険薬局協会(NPhA)がまとめた5日時点での会員被害状況報告を見ると、被害は5県に拡大していることが分かった。被害を受けた薬局数は石川県70薬局、新潟県29薬局、富山県27薬局、福井県2薬局、三重県1薬局と129薬局に上り、開局できていない薬局は13薬局で見られた。人的被害では薬剤師1人の重傷者が報告されている。
医薬品提供体制については、厚労省から発出された2日の事務連絡で、被災地の薬局では医師の処方箋がなくても薬の提供が可能とする取り扱いを認めた。石川県内では民間事業者の協力のもと、能登北部・中部地区の公立6病院の院外処方箋を金沢市の薬局で調剤し、各病院に配送する取り組みを開始した。
ただ、石川県薬の中森慶滋会長によると、「道路が寸断され、金沢市から能登地域までの医薬品の配送に時間がかかる」と厳しい現状にある。
2日に災害対策委員会を立ち上げた石川県薬は、県内薬局の開局状況を県民向けに情報提供するため、「開局リスト」を作成。薬局やボランティア薬剤師への対応、渉外、記録など各担当を決めた。さらに4日には、中森氏など県薬役員が能登北部地域を視察し、現地の状況を把握。日薬にモバイルファーマシーの出動、ボランティア薬剤師派遣を要請した。
被災した薬局が備蓄している医薬品は「せいぜい2~3日分」(中森氏)としており、卸からの医薬品供給がなければ厳しい状況が予測され、中でも能登地域は全国的にも薬剤師不足が深刻だ。中森氏は、「薬剤師会とボランティア薬剤師で医薬品の供給ラインを作る必要がある」と訴えた。
一方、日薬は5日に災害対策本部会議を開き、被災した県に対する薬剤師チームによる支援やモバイルファーマシー派遣の必要性などを検討した。災害担当の荻野構一常務理事は、「(5日時点では)現地の状況を把握できていないし、救出作業が最優先の段階にある。医療も提供できていない。モバイルファーマシーがどの地域で必要とされているのか情報収集した上で派遣するのが良い」と述べ、日薬と被災県で現地の状況を情報収集し対応していく考えを示した。
また、日本病院薬剤師会も2日、武田泰生会長を本部長とする災害医療支援本部を立ち上げた。被災地の被害状況などの情報収集に努めており、今後具体的な対応策を検討していく。会員には、被災地の医療機関の情報収集が困難な状況を踏まえ、可能な範囲で情報提供を行うよう要請した。
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出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
2024年1月1日に発生した能登半島地震の被災地では、薬局にも建物の全壊などの大きな被害が生じています。厚労省の報告書によると、薬局関係では石川県を中心に63件の被害が報告され、そのうち26件が営業できない被害であったことが分かりました。