小児科学会がOTC化反対~ツロブテロールの咳止め 厚生労働省検討会議
厚生労働省の医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議が26日に開かれ、アドレナリンβ2受容体刺激薬ツロブテロール(販売名:ホクナリンテープ)など4候補成分のスイッチOTC化を議論した。ツロブテロールは日本小児科学会が薬剤特性、対象疾患、適正販売・スイッチ化した際の社会への影響のいずれの観点から見ても「スイッチ化の妥当性は低い」とし、気管支喘息治療薬である同剤を咳止めとしてOTC化することに強く反対した。一方、尋常性ざ瘡(にきび)を効能・効果とするアダパレンとアレルギー症状の緩和に用いるデキサメタゾンシペシル酸エステルの点鼻粉末は一定条件をクリアすればOTC化は妥当との見解が示された。
ツロブテロールについては、小児科学会がOTCとすることの妥当性について「非常に懸念がある」と表明した。効能・効果で「『せき』と書かれているが、この薬剤が鎮咳剤と誤解される可能性が高い」と主張。分科会のメンバー全員がOTCに反対し、「喘息の人に使うのであればまだ分かるが、咳止めではないのに咳止めとして使うのか」と問題視した。
添付文書には用法・用量を超えて使用した場合には不整脈や心停止を起こす恐れがあることなどの注意書きが記載され、医師による処方でも危険な使用が行われているなどの実態から、OTCとして適正使用の順守は「極めて困難」とした。
多くの構成員がOTC化に慎重な意見を示す一方、磯部総一郎構成員(日本OTC医薬品協会理事長)は、「この薬は26年使われそれなりの評価をされており、安全に使えている。咳という問題について、小児での医療上のニーズは非常に高いのではないか」との考えを示した。
その上で、「小児の医療提供体制を守るために短期使用が前提となるが、なかなか夜間の診療を受けにくい人のためにOTCとして提供することをぜひ考えてほしい」と要望した。
これに対し、宮川政昭構成員(日本医師会常任理事)は「夜間救急体制の全般について、この薬に当てはめるのは詭弁」と反論。磯部氏は、宮川氏の意見に理解を示しつつも、「症状が重い時は救急でないといけないが、子供が寝苦しい時に少し使ってもらうだけのニーズはあると思う」と再度訴えた。構成員からの意見を踏まえ、厚労省が検討結果案をまとめる。
一方、アダパレンのOTC化をめぐって、日本皮膚科学会は妊婦・妊娠している可能性のある女性に対する使用が禁忌であるなど、薬剤特性の観点から「妥当ではない」とした一方、日本臨床皮膚科医会は「一定の条件が解決すれば妥当と判断する」との見解を示した。
構成員からは、妊娠の可能性がある女性には販売時にチェックシートを活用し、薬剤師による説明と副作用の状況に応じて皮膚科への受診勧奨を行うなどの対応があれば「OTC化は可能ではないか」との意見が多く出た。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
厚生労働省の「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」で、アドレナリンβ2受容体刺激薬ツロブテロール(販売名:ホクナリンテープ)など4候補成分のスイッチOTC化が議論されました。ツロブテロールについては、日本小児科学会がOTCとすることの妥当性について「非常に懸念がある」と表明しました。