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【病院薬剤師が自施設研究】組み合わせ10%に配合変化~緩和医療汎用薬と麻薬で

薬+読 編集部からのコメント

緩和医療領域の汎用薬64剤と医療用麻薬4剤を対象に、2剤の注射薬配合変化試験を行った日本医科大学多摩永山病院薬剤部の研究グループが、256通りの組み合わせのうち約10%に配合変化が認められたことを明らかにしました。

日本医科大学多摩永山病院薬剤部の近藤匡慶氏(写真左)らの研究グループは、緩和医療領域の汎用薬64剤と医療用麻薬4剤を対象に2剤の注射薬配合変化試験を行い、256通りの組み合わせのうち約10%に配合変化が認められたことを明らかにした。2剤を配合し、4時間後までの濁度や外観変化の有無を評価した。医療用麻薬は単独投与が基本だが、やむを得ず他の薬剤と混合することもある。今後、14日後までの配合変化を調べた結果も公表予定。これらの情報を臨床現場の判断に役立ててもらいたい考えだ。

配合変化の情報は、製薬企業がインタビューフォームで公開しているが、その情報量は少なく、臨床現場のニーズには十分応えられていない。特に医療用麻薬の配合変化情報は乏しく、薬剤師らはアルカリ性と酸性の薬剤を混合すると配合変化が生じやすいなどの一般的な知識をもとに、配合可否を判断する場面も少なくない。不安を抱えながら他の医療従事者に情報提供する機会も多く、実際に配合変化の有無を調べた情報が必要とされていた。

 

近藤氏は、日本緩和医療薬学会の緩和薬物療法認定薬剤師を対象にアンケート調査し、配合変化の情報が必要な薬剤の組み合わせを聞いた。同院薬剤部には、全国的にも稀な配合変化試験を行える設備がある。調査で把握した要望をもとに同院で試験を実施した。

 

試験管内で対象薬と医療用麻薬を混合した溶液と、対象薬と生理食塩液を混合した基準溶液をそれぞれ作成し、pHや濁度、外観の変化を比較。点滴ルート内の配合変化を想定して配合直後、配合1時間後、4時間後の変化を評価した。

 

試験対象の医療用麻薬はフェンタニル、モルヒネ、オキシコドン、ヒドロモルフォンの4種類。緩和医療領域で汎用される64薬剤との配合変化の有無を調べた結果、256通りのうち配合変化は26の組み合わせに認められた。

 

配合変化は、モルヒネで12薬剤、オキシコドンで11薬剤、ヒドロモルフォンで3薬剤との組み合わせで生じた。緩和医療領域の汎用薬のうち、医療用麻薬3剤と配合変化を起こしたのはオメプラゾール、ランソプラゾール、カンレノ酸カリウムで、2剤と配合変化を起こしたのはガンシクロビル、アシクロビル、フロセミド、アミノフィリン、レテルモビルだった。

 

一般的に医療用麻薬は酸性で、塩基性薬剤と配合変化を起こす場合が多い。今回の試験でもその傾向が強かった。一方、酸性と塩基性ではない組み合わせのオキシコドンとポサコナゾール、モルヒネとミカファンギンで配合変化が認められた。近藤氏は、例外的な組み合わせが分かったことで「試験は有意義だった」と語る。

 

この試験で配合変化を起こした組み合わせは、臨床現場での配合を避けるべきと考えられる。一方、配合変化を起こさなかった組み合わせは、臨床現場で使える可能性がある。

 

共同で研究に取り組んできた高瀬久光氏(写真右=順天堂大学医学部附属浦安病院薬剤科長)は「これまでは情報がないために、薬剤師は別ルートでの投与を提案していたかもしれないが、配合変化を起こさないという情報があれば同じルートで投与でき、医療従事者や患者の負担が軽減される。特に緩和領域では投与ルートが限られているケースも少なくなく、研究の意義は大きい」と話す。

 

近藤氏らは現在、医療用麻薬4剤と汎用薬23成分・27剤を対象に、2剤を配合し最長14日間の配合変化を評価する試験も実施中。在宅医療で医療用麻薬を投与する機会は増えているが、点滴ルートを1本しか確保できなかったり、医療従事者が2週間に1回しか訪問できなかったりするなど、医療環境には制限がある。こうした環境下での点滴ボトル内の配合変化を想定した試験で、結果を年内に公表する計画だ。

 

そのほかにも、医療用麻薬と輸液・ビタミン剤10剤の24時間配合変化試験も実施している。近藤氏らは、配合変化試験の実施に加え、安全な注射薬の投与ルート設計に役立つフローチャートも作成中。早期に公開し、現場で活用してほしい考えだ。

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出典:薬事日報

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