医療

【薬価調査速報値】乖離率は5.2%と過去最小~流通改善指針が圧縮に寄与 厚生労働省

薬+読 編集部からのコメント

医療用医薬品の現行薬価と市場取引価格の開きを示す平均乖離率が、2024年9月取引分で過去最小となる約5.2%だったとの薬価調査の速報値を、厚生労働省が中央社会保険医療協議会薬価専門部会に報告しました。

厚生労働省は4日、医療用医薬品の現行薬価と市場取引価格の開きを示す平均乖離率が9月取引分で過去最小となる約5.2%だったとの薬価調査の速報値を、中央社会保険医療協議会薬価専門部会に報告した。昨年度調査より0.8ポイント縮小し、流通改善ガイドライン改訂の寄与により安定確保医薬品などの乖離率も1ポイント以上縮小した。2023年度改定と同様に「平均乖離率の0.625倍超」を対象とした場合、乖離率3.25%超の品目に対象が広がるだけに“価格乖離の大きな品目”の範囲をめぐり委員から縮小を求める意見も出た。

今回の調査は、9月取引分を対象に販売サイドから11月1日までに報告があったものを集計。平均乖離率は、21年度7.6%、22年度7.0%、23年度6.0%で推移しており、4年連続の乖離率縮小となった。この4年間で見ると2.8ポイント縮小した。

 

分野別の乖離率では流通改善ガイドラインの改訂によって「別枠」で交渉を行ったことで、基礎的医薬品は1.6%、安定確保医薬品Aは3.5%、不採算品再算定品は2.1%とそれぞれ0.2ポイント、2.3ポイント、1.2ポイント縮小した。一方、後発品のない先発品が3.8%の乖離率だったのに対し、長期収載品は9.5%、後発品は9.4%と高かった。

 

また、今年度も全ての投与形態で前年度から乖離率が縮小し、主要薬効群別で見ても乖離率10%を超えたのは2薬効群と前年度から半減した。

 

市場規模の大きい主な薬効群別の乖離率を取引金額上位で見ると、内用薬は「血圧降下剤」が11.7%で最大の乖離率となり、「高脂血症用剤」の10.9%、「消化性潰瘍用剤」の9.2%が続いた。内用薬全体では6.4%と前年度から0.6ポイント縮小した。

 

注射薬では、「その他のホルモン剤」5.3%、「他に分類されない代謝性医薬品」5.1%、「その他の腫瘍用薬」3.0%の順で、注射薬全体では前年度より0.9ポイント縮小した。

 

外用薬は「眼科用剤」8.2%、「鎮痛、鎮痒、収斂、消炎剤」7.8%、「その他呼吸器官用剤」6.7%で、外用薬全体では0.4ポイント縮小した。

 

乖離率縮小の背景について、厚労省は「物価高騰等の影響で原材料調達コストが上がり、製薬企業から医薬品卸への仕切価が上昇し、卸から医療機関・薬局への卸売価格も上がっていることが想定される。3月に改訂した流通改善ガイドラインで、基礎的医薬品や不採算品など別枠でカテゴリーを設けて単品単価交渉を求めたことなども複合的に影響している」と分析している。

 

後発品の数量シェアは約85.0%で、前年度の80.2%から上昇。金額ベースの後発品シェアも約62.1%と、前年度の56.7%から上昇した。

 

過去の中間年改定では平均乖離率の0.625倍超の品目が改定対象となってきたが、今回調査結果を踏まえ、診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は「21年度の中間年改定時の平均乖離率は約8%で、改定対象は0.625倍である約5%だった。今回の平均乖離率は過去の対象範囲である約5%と同等に達しており、同じ改定対象範囲で実施することは範囲をさらに拡大することと同義」と指摘。対象範囲をより限定するよう求めた。

 

一方、支払側の鳥潟美夏子委員(全国健康保険協会理事)は「前回調査よりやや低い水準だが、極端な数値ではない。通常通りの改定が可能とのデータが示されたと思うので、通常ルールに基づいて25年度改定に向けた議論を進めるべき」とした。

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出典:薬事日報

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