薬局が大腸癌検査の窓口に~11月から医師会と共同事業 鹿児島市薬剤師会
鹿児島市薬剤師会は、今年度から鹿児島市医師会と共同で大腸癌検査支援モデル事業に取り組んでいる。薬局薬剤師が同検査の窓口となって、地域住民への便潜血検査のキット提供や受け取り、検査機関への依頼、検査結果の通知等を担当。陽性者には精密検査の受診を勧める。11月から市内の68薬局で申込受付を開始した。薬局での啓発やアクセスの良さによって、同検査を受けていない若い世代の掘り起こしにつながると期待は高い。
同事業に参加する薬局薬剤師は、薬局内にポスターを貼り、「年に1回大腸癌検査を受けていますか」などと声をかけて啓発。興味を示した来局者に大腸癌検査の重要性を説き、行政の集団検診や医療機関で検診を受けられるほか、希望する場合には薬局でも対応していると説明する。
薬局を介した検査を希望した申込者には便潜血検査キットを提供。その使い方や、2日に分けて採便する方法を説明する。
その後、受検者から採便後4日以内の検体を薬局で受け取り、鹿児島市医師会検査センター等の検査機関に回収や検査を依頼する。同機関から数日以内に検査結果が薬局に届くと受検者に連絡。薬局まで来てもらい対面で結果を伝える。
検査が陽性だった場合、地域で大腸内視鏡検査を受けられる医療機関一覧表をもとに精密検査の受診を勧める。受検者の希望を確認し、各医療機関の検査可能日時、女性医師対応の有無などの情報をもとに、受診しやすい医療機関の選定を支援し精密検査の受診率を高める。陽性者には検査結果等を記載した医療情報提供書を渡し、受診時に提出するよう伝える。
薬局が検査申込者から受け取る費用は1件1200円。その範囲内で検査機関に検査費用を支払い、薬局には半分弱の利益が残る。補助金に頼らず、長期的な視野で自立して運営を続けられる仕組みを構築した。
同事業には、鹿児島市薬会員薬局の約2割に当たる68薬局が参加した。高い資質や自己研鑽意欲を持つ薬剤師に取り組んでほしいとして、指定研修会の受講や1年以上の実務経験などを要件とした。
国民生活基礎調査によると、2022年の鹿児島県の大腸癌検診の受診率は41.9%で、全国平均よりやや低い。中小企業の事業主検診では大腸癌検査はオプション扱いとなり、受けない人が多い。通院の機会がないため多忙な若い世代の受診率は低く、その引き上げが課題だった。
同事業の企画に関わった鹿児島市薬常務理事・産業保健委員会担当の陳尾祐介氏(写真=もみじ薬局)は「身近な薬局が情報提供することで理解を促すほか、受検者の好きなタイミングで検体を受け取れるようにすることで、利便性を高められる」と強調する。
便潜血検査で陽性となっても精密検査を受診しない人がいることも課題だ。薬局薬剤師は、集団検診や医療機関の検査で陽性となった人も対象に精密検査の受診を勧奨し、大腸癌の早期発見に貢献したい考え。
陳尾氏は「薬局薬剤師は薬のことだけでなく、地域で検診や健康相談の窓口になれるようにしたい」と思いを語る。
昨年度に陳尾氏ら薬局薬剤師と鹿児島大学の共同研究で同様の取り組みを実施し、40代の受診率が高まるなど成果が出たことから、今回のモデル事業に踏み切った。
来年度以降も参加薬局をさらに増やして事業を継続する計画で、大腸癌の早期発見や早期治療への薬局の貢献度を明らかにしたい考えだ。
出典:薬事日報
薬+読 編集部からのコメント
鹿児島市薬剤師会は、2024年度から鹿児島市医師会と共同で大腸癌検査支援モデル事業に取り組んでいます。薬局薬剤師が窓口となり、地域住民への便潜血検査のキット提供や受け取り、検査機関への依頼、検査結果の通知等を担当しています。