災害時の薬供給体制強化~調整役担う薬剤師養成へ
全国で予算化広がる
各都道府県は来年度から、薬剤師を対象とした災害薬事コーディネーターの養成など災害時における医薬品供給体制の強化に乗り出す。埼玉県や岐阜県などは2025年度予算で「災害薬事コーディネーター養成事業」を新設し、被災地に医薬品の供給や薬剤師の手配などを行える薬剤師の育成を図る。災害時における医療救護活動や医薬品提供が円滑に行えるよう石川県、東京都、大阪府、福島県は、災害対策医薬品供給車両であるモバイルファーマシーの導入を支援する計画だ。

災害薬事コーディネーターは、災害時に都道府県が設置する保健医療福祉調整本部などで被災地の医薬品等や薬剤師、薬事・衛生面に関する情報の把握やマッチング等を行うことを目的に都道府県で任命された薬剤師が担うとされている。
厚生労働省の調べによると、昨年3月時点で19府県で776人が任命されている。今月10日には、厚労省から災害薬事コーディネーターの運用、活動内容等の基本的な事項について定めた「災害薬事コーディネーター活動要領」が示された。
各府県は来年度から、災害時に活動できる薬剤師の養成を図る。埼玉県は約261万円を充て、県災害時医療救護基本計画に規定された災害時の医療救護活動に必要な医薬品等の供給体制を強化するため、埼玉県災害対策本部や医薬品等の集積場所などで活動できる「薬剤師災害リーダー」「地域薬剤師災害リーダー」を養成する。
薬剤師災害リーダーは、県災害対策本部(保健医療調整本部)に配置し、被災地からの医薬品供給要請に基づき、医薬品等の供給調整や薬剤師チームの派遣調整等にかかる助言・支援を行う。
地域薬剤師災害リーダーは、薬剤師災害リーダーからの指示を受け、保健所と情報共有しながら防災基地などで医薬品の仕分けや保管管理を行い、医療救護所などの被災地に医薬品を供給する。
災害時の医療救護活動に関する協定を締結している埼玉県薬剤師会と協力しながら、地域薬剤師災害リーダーを育成するための研修会を開催する。また、災害時に薬剤師災害リーダーが円滑に活動できるようフォローアップのための講習会を開催する。
そのほか、災害薬事コーディネーター養成研修としては大阪府が約533万円、岐阜県が約123万円、岡山県も約100万円を計上している。富山県も薬局や病院等の薬剤師を対象に災害時の薬事対応研修会を開催する。
一方、災害対応を強化するため、モバイルファーマシーを導入する都府県もある。現在、モバイルファーマシーは県薬剤師会や薬科大学など、全国でおよそ20台が導入されている。昨年1月の能登半島地震で全国のモバイルファーマシーが出動し、被災地支援に貢献した。
東京都は、災害時医療物資供給体制の強化として2000万円を計上。災害時の医療物資供給や薬局機能維持に関する体制強化に加え、医療機関や薬局が少ないへき地等で迅速な医薬品供給を行うためモバイルファーマシーを導入する。
能登半島地震の被災県でもある石川県は、歯科診療車やモバイルファーマシー導入支援として6400万円の予算を計上。馳浩知事は、2月に開催された北陸信越薬剤師学術大会でモバイルファーマシー1台を購入するための予算規模が約1900万円になることを明らかにした。
福島県も災害対策医薬品供給車両整備事業に1200万円を計上。災害時の医療救護活動に関する協定を締結している福島県薬剤師会に対し、災害対策医薬品供給車両を整備するための費用の一部を支援する。
一方、大阪府は「無菌調剤設備付きコンテナファーマシー整備補助」に1320万円を計画。災害時に使用可能な無菌調剤設備を備えたコンテナを導入し、平時は無菌調製技術研修に活用して高度な調剤技術を習得した薬剤師を養成するとしている。
🔽 災害時における薬剤師の役割について解説した記事はこちら
出典:株式会社薬事日報社
薬+読 編集部からのコメント
2025年度より、各都道府県が薬剤師を対象とした災害薬事コーディネーターの養成、モバイルファーマシーの導入など、災害時における医薬品供給体制の強化に乗り出します。